折り紙の数理

川崎教官。基本的には試験だが、高度な折り紙の作品をレポートと共に提出したり、授業内容についてのレポートを提出すれば採点し、場合によっては試験を免除する、とのこと。

以下のレポートは授業の最後で触れた「用紙のサイズ」についてのもの。評価は70点でした。

 「紙加工仕上寸法」という規格では、A列0番が841×1189mm、B列0番が1030×1456mmとされている。この数字を元にそれぞれの用紙の面積を計算すると、A列0番が999,949平方mm、B列0番が1,499,680平方mmとなる。平方メートルに換算すると、A0が約1.0平方メートル、B0が約1.5平方メートルである。またA0ではその横と縦の割合は1:1.41379…、B0では1:1.41359…となって、ほぼ1:√2であることも確認できる。

 以上が授業にも登場した内容であるが、ではこれらの用紙サイズの由来はどこにあるのであろうか。それを述べる前に、A列、B列の他にJIS規格によって定められている用紙サイズについて見ておきたい。以下の表がそれである。

判の名前 用紙の大きさ(単位はmm)
A0 841 × 1189
B0 1030 × 1456
四六判 788 × 1091
菊判 636 × 939
ハトロン判 900 × 1200

 四六判は、「美濃判」という紙の大きさが元になっている。美濃判は江戸時代に徳川御三家のみが使用を許されていた規格で、明治になってから一般に普及した。(書道で用いる「半紙」はこの美濃判の半分である。)明治以降次第に洋紙が使われるようになると、日本の印刷方式にあった用紙として美濃判の約8倍の大きさの紙(約8倍の大きさにちなんで「大八ツ判」と呼ばれた。)が出回るようになった。これは主としてイギリスから輸入されたクラウン四倍判という紙で、その大きさは、現在の新聞紙の大きさ(2ページ分)の原型となっている。このサイズの全紙を32面取りして裁ったものが四六判で(つまり美濃判から見ると4分の1)、寸法が4寸2分×6寸2分になるため、この名前がついた。

 また菊判は、1888(明治21)年頃に新聞紙用にアメリカから輸入された紙に端を発する。名前の由来については、「アメリカ本国での商標であるダリアの花が菊に似ていた。」とする説と、「新聞の『聞』の訓読み音に『菊』の字をあてた。」とする説とがある。以上の四六判、菊判は、明治時代以降広く用いられるようになった。

 最後のハトロン判はハトロン紙に由来している。ハトロン紙は強度が高く印刷適正にも優れ、以前は封筒、包装紙などとしてよく使われていたが、次第にクラフト紙に取って代わられ、製造されなくなった。ただ、ハトロン紙の大きさ(909×1212mm)にちなみ、900×1200mmの大きさをハトロン判と呼んでいる。「ハトロン」の由来については、「薬きょうを包む紙」という意味のドイツ語「Patronen Papie」からとったとする説と、英語の「Hard rolled paper」からきたとする説とがある。

 さて、A判、B判の由来であるが、1929(昭和4)年、日本工業規格(JIS)の前身である日本標準規格(JES)として、紙の大きさが正式にまとめられることになった。その際、普及していた菊判を参考としつつ、ドイツの規格を採用して整理されたのがA列(この規格は、現在の国際規格にもなっている。)、四六判を参考にしながら日本独自に定められたのがB列で、このとき初めてA、Bの規格が登場することになった。昭和4年に決められた規格は、現在の数値とは多少異なっていたが、1940(昭和15)年の改訂で現在の値となり、日本工業規格(JIS)に引き継がれて現在に至っている。

 さて、ここでA1判と菊判、B1判と四六判を比較してみたい。

判の名前 用紙の大きさ(単位はmm)
A1 595 × 841
菊判 636 × 939
B1 728 × 1030
四六判 788 × 1091

 以上に見るように、菊判・四六判の大きさはそれぞれA1・B1よりも多少大きくなっている。また、縦と横の比も菊判は1:1.4764…、四六判は1:1.3835…と1.4142…からはずれている。このことから、A、Bの規格を決める際、その面積においてメートル法を考慮に入れ、また、長い方の辺を半分にした際に元の四角形と相似な四角形があらわれる、1:1.4142…という比を意識して決めたのではないかと推測される。

 日本では長らく、B5判が多く用いられてきたが、最近では、国際規格のA4判を使うことで業務の効率化、文書量の削減、職場環境の改善につながるという取り決めから、1993年に「特別の事情のあるもの」を除き、行政文書はできるだけ速やかにA判に統一すべしという官庁間申し合わせが行われ、文書のA4化が始まった。その後ある企業では1993年度に約5割だったA4サイズの出荷比率が、1997年度には約7割になるなど、A4化が進んでいる。

 また、海外を見てみると、アメリカでは「81/2×11インチ」の紙が主流となっている。1インチ=2.54cmとして換算すると、215.9×279.4mmであり、A4サイズ(210×297mm)と比較すると、幅はほぼそのままで長さが少し短くなったものといえる。一方ヨーロッパでは、A4サイズが88%、A3サイズが8%と、A判が圧倒している。

 結論として、現在日本で主に使われているA判、B判というサイズは、明治時代以降日本で広く用いられるようになった用紙のサイズを元にして、他国の規格やメートル法を考慮に入れた上で作られたものであると考えられる。また、現在日本では用紙のA4化が次第に進んでいるが、アメリカでは必ずしもA判が主流でないということは意外なことであった。

参考資料 インターネット(紙の話紙の博物館

もどる

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送