集団生物学(小池教官)試験問題
平成14年度前期

平成14年9月20日実施、試験時間は50分。
もし大問2、3に歯が立たないようなら、大問1(解答欄はそれぞれ2行程度)の用語の説明を解答用紙の裏に詳しく書くように、とのこと。
解答用紙は問題用紙と同じでB4が1枚。

(1)次の用語を説明せよ。(各10点、50点、解答欄はそれぞれ2行程度ずつ)
転移(transition)と転換(transversion)
 DNAの4種類の塩基が相互に置き換わる現象を塩基置換という。塩基置換は大きく転位(transition)と転換(transversion)に分けられるが、転位は化学的に似通った分子の間(プリン(AとG)同士、ピリミジン(TとC)同士)の変化であり、転換はプリンとピリミジンの間の変化である。一般的に転位の方が転換より起こりやすく、特にヒトのミトコンドリアDNAでは、塩基置換の95パーセント以上が転位である。
 また、転位の中でも、G→A、C→Tの方が起こりやすいため、進化により、DNAのA、Tの割合が増えてゆく。

同義置換と非同義置換
 アミノ酸に変換される領域(コード領域、機能領域)における塩基の置換の中には、アミノ酸の置換を伴うものが存在する。アミノ酸変化を伴う置換を非同義置換といい、トリプレットコドンの2番目の塩基置換は全てこれである。一方、アミノ酸変化を伴わない置換は同義置換と呼ばれ、コドンの3番目の塩基置換は大部分がこれにあたる。
 同義置換は最も起こりやすい塩基置換で、非同義置換でも作られるタンパク質の構造的、機能的変化の小さい置換は比較的起こりやすい。置換の結果、タンパク質の構造、機能が変わってしまうような非同義置換は稀である。
 また、トリプレットコドンにおいて比較すると、置換の起こりやすさは3番目≫1番目≫2番目である。

レトロポゾン
 一度DNAからRNAに転写された配列が逆転写酵素の働きで相補的なDNA(cDNA)になり、それがゲノム中に再び組み込まれた配列の総称。
 レトロポゾンには「ウイルス性」と「非ウイルス性」といわれる2つのスーパーファミリーがある。ウイルス性スーパーファミリーはエイズウイルスに代表されるレトロウイルスのように、その配列中に逆転写酵素をコードしている。一方非ウイルス性スーパーファミリーには、哺乳類のゲノム中に多量に含まれる短い(200〜600塩基対)散在性の反復配列、SINEなどがある。

マイクロサテライト
 7塩基対以下(多くは1〜4塩基対)の繰り返し単位が10回以上続く配列を持つDNA領域。8塩基対以上の繰り返し配列領域であるミニサテライトと共に、置換速度がきわめて速い。そのため、個体差が顕著で、固体識別に用いられる。
 分析には、PCR法で増幅したマイクロサテライトの長さを解析する、フラグメント解析が行われる。

ハプロタイプ多様度
 非常に近接した対立遺伝子グループで、近接しているためその間での組み替え(交差)がほとんど起こらず、1単位として遺伝するグループをハプロタイプという。この多様性を0〜1の数値として示す値がハプロタイプ多様度で、0.8以上なら遺伝的多様性大。0.5以下では多様性が少なく、危険であるとされる。種内の多様性の指標としてよく用いられる。


(2)分子時計(molecular clock)について(25点)
(a)種内多型など小進化を調べるのに適する分析領域とその応用例。
 生体中のタンパク質分子を構成するアミノ酸が、動物の種類や環境に関わりなく、ほぼ一定の速度で変化する(アミノ酸の置き換わりが、あたかも時計の針が一定のペースで時を刻むのに似ているので、分子進化に関するこの性質を分子時計と呼ぶ。これは進化が一定のペースで起こることを意味している。)という考えから、アミノ酸の変化率を時間計測の道具とみなす概念。生物種間の類縁関係や分岐年代を調べるのに利用される。
 分子時計を種内多型のような小進化を調べるのに使用するためには、ある程度進化(変化)の速い領域を分析する必要がある。これには、ミトコンドリアDNA中のコントロール領域などが適している。
 応用例についてはわかりませんでした。すいません。

(b)科、目など大進化を調べるのに適する分析領域とその応用例を紹介せよ。
 大進化を調べるのに適する分析領域は進化の遅い領域といえる。
 これには、核DNA内の18sリボソームRNAコード領域、ミトコンドリアDNA内の12sリボソームRNAコード領域や、同じくミトコンドリアDNA内のチトクロームbコード領域などが適している。


(3)MHC(主要組織適合遺伝子複合体)について(25点)
(a)この遺伝子の機能は何か。
 糖タンパクのMHCをコードする遺伝子群で、免疫反応において重要な役割を担う。

(b)塩基置換上の特徴は何か。
 ここでは通常避けられるはずの非同義置換の頻度が同義置換のそれを上回っており、また、より機能性の高い特定の部位(αへリックスやβシート構造部位)において多く置換が起こっている。これはこうした置換によって生じる多型性が、新たな抗原に対する適合に有利だからと考えられる。積極的に多型性保持の方向に向かっているため、MHCでは生の淘汰が行われていると言える。

(c)保全遺伝学的応用例を紹介せよ。
 わかりませんでした。すいません。


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