細菌学 平成11年度本試験

戸田新細菌学のページ数は第32版より

1.テンペレントファージについて
(1) 形質導入の方法を2つに分類してそれぞれ説明せよ 戸田新p110
 普遍形質導入:特定の遺伝子を導入するとは限らず、菌のどの遺伝子でも導入できる
 特殊形質導入:特定の遺伝子ないしは遺伝子群のみを導入する

(2) 溶原変換について、何が導入されているのか因子を含めて説明せよ 戸田新p111
   特定のテンペレートファージによる溶原化によって特定の形質が菌に与えられる現象であり、その形質を支配する遺伝子がファージゲノムの一部としてはじめから存在する。ゆえに、このファージによる感染を受けた菌の100%にその形質が伝えられる。簡単に言えば、ファージそのもののDNAが入っていくということ。溶原変換の代表的な例は、ジフテリア菌におけるジフテリア毒素、コレラ毒素、O157など。 (この2問に限っては、今年2003年2月3日の授業で、水之江先生がテストに出すかも?って多分言ってました。)

2.化学療法剤について 戸田新p138
(1) 原核生物と真核生物の違いを書け
   原核生物(細菌など)は細胞壁があるのに対し、真核生物(ヒトなど)は細胞壁をもたない。(ちなみに真菌や原虫は真核生物です。)

(2) (1)に基づいて、薬の作用点と機序を書け
   細胞壁合成阻害剤(βラクタム系抗生物質など)は選択毒性が強く(ヒトは細胞壁を持たない。)、ペプチドグリカンの合成を阻害する。例えば、βラクタム系抗生物質は、細胞壁におけるペプチド相互間の架橋構造を(トランスペプチダーゼを阻害することにより)阻害する。  *リボゾームの差について述べてもいいかと思います。

3.生体防御反応と病原因子(因子が分からなければその機能)の関係について書き、進化について考えうることを書け

細菌やウィルスなどの病原体は、その巨大個体群、高増殖性、高突然変異率といった特徴ゆえに進化速度が大きい。従って、宿主の免疫防御機構を回避し得る突然変異を獲得した病原体は急速に選択され、集団中に広がる。一方で宿主側も多様性を持つため、病原体に抵抗可能な機構を獲得した個体は選択されてきた。抗体による多様性生成の機構は、いわば一個体内での進化の過程の再現であると言える。このように、種々の免疫防御機構とその回避機構は、進化学的には病原性と抵抗性との競争の産物である。
しかし、ヒトは病原体と比べて進化速度が圧倒的に小さい。従ってヒトの免疫機構は病原体によって打ち破られる確率が高い。ただし、宿主にたかる病原体は、宿主を食いつくしては自分も生きていけないし、全く搾取しないわけにもいかない「寄生のパラドクス」の状態におかれている。それゆえ医学や分子生物学の分野では「宿主に対して破壊的にふるまう病原体は出現したばかりの新参者であって、それらは次策に宿主に無害になり、さらに宿主と共生する方向へと進化する」と考えられている。  


(以下、別解です。参考まで:生体は病原菌の侵襲に対して、非特異的な防御システム(貪食細胞、補体系)や抗原特異的な防御システム(細胞性免疫、液性免疫)を発達させてきた。これに対し、貪食細胞からの発見を免れる多糖体の莢膜をまとったり(ブドウ球菌、肺炎球菌、炭疽菌)バイオフィルムを形成するもの(緑膿菌)、貪食細胞の抗菌システムに対抗して生き延び細胞増殖を果たすもの(レジオネラ・ブルセラ−リソソームの融合阻止、サルモネラ・結核菌−リソソーム酵素に抵抗、リステリア・赤痢菌−脱出)や、貪食細胞を逆に異常活性化して組織破壊を行うもの(炭疽菌)など、さまざまである。
 長期的視野では、病原菌に対する生体防御因子の獲得、それに対する病原菌側の耐性の獲得というサイクルを繰り返して両者はともに進化を遂げてきたといえる。あるいは、遺伝的な淘汰が働いてきたともいえる(ヨーロッパにおける14世紀のペスト流行でペストYersinia pestisに遺伝的に耐性のないヒトが死滅したので、その後大きな流行が起こっていない、との説がある)。生体防御反応の根拠は病原因子に、病原因子の根拠は生体防御反応にある、と言えそうですね。)

4.恙虫病の新旧について病原体、媒介するもの、流行地域、診断と治療、季節についてそれぞれ答えよ 戸田新p711
  病原体は新旧共にorientia tsutsugamushiであり、媒介するものは新型ツツガムシ病ではタテツツガムシ、フトゲツツガムシであるのに対し、旧型ツツガムシ病ではアカツツガムシである。流行地域は新型が群馬、富山、千葉、宮崎、鹿児島などであるのに対し、旧型は新潟、秋田などである。流行する季節は新型が冬、春であるのに対し旧型は夏である。
診断は新旧共に、全身に発疹、発熱、刺し口がある、などであり、治療としてはテトラサイクリン系の抗生物質を通常量経口投与させればよい。

5.ボツリヌス菌の人間への感染経路について3つ挙げよ 戸田新p617
   食餌性:毒素をヒトが食べることによって感染する。
   乳児性:これも経口的である。乳児が蜂蜜を食べたことが原因になった例が過去多くあった。
   創傷性:創傷部より菌が入ることにより感染するが、稀である。
    
6.文明病について例を挙げて説明せよ
 日向の温泉施設において7人が死亡したレジオネラ集団感染では、温泉原水を循環ろ過かつ生物浄化していたことが原因であった。レジオネラはこの他にもクーラーの冷却塔や、給水器、噴水などに潜んでおり、これらが感染源になる可能性は大いにある。
 またヘリコバクターピロリ菌が胃カメラによって感染されたことも報告されており、これらはすべて文明病と言える。

7.○×問題 以下の正誤を判定せよ 主に実習書を参考にしてください

(1) グラム染色でストレプトコッカスは赤色、大腸菌は紫色を示す。
(2) 口腔内スピロヘータを墨汁染色で観察すると、らせん状に黒く染まって見える。
(3) コンラジ棒を使って無菌操作をする時は、真っ赤になるまで熱した後よく冷やして使う。
(4) MR-VP反応はどちらとも、赤色を示すものを陽性といい、一種の菌でどちらも陽性になることはない。
(5) 消毒のために手を洗う時、手洗いが不十分だとかえって菌が増えることがある。
(6) 食細胞を染色する時、ライトギムザ染色液は揮発性なので、シャーレの中で操作し、すぐに蓋を閉める。
(7) 緑膿菌は、風呂場や台所のぬめりの中にいる。
(8) 血液寒天培地でコロニーの周りが透明になっているものをα溶血という。
(9) ディスク拡散法で、阻止円直径が1mm以上だと最大(+++)ということになる。
(10) 真菌を培養するためにシャーレの蓋を開けて放置すると、約1日でコロニーが形成される。

解答
(1) × 赤と紫が逆。
(2) × negative stainなので、白く見える。背景が黒なので、黒かったら見られない!
(3) × コンラジ棒ではなく白金耳。コンラジ棒はアルコールをとばすだけで、熱する必要はない。
(4) ○ 実習でやりました。
(5) ○? 曖昧な問題ですね。イマイチ分かりません。
(6) ○ 実習でやりました。
(7) ○ 実際いました。
(8) × 緑色がα溶血で、透明がβ溶血。ちなみにγ溶血性とは溶血をおこさないもののことです。
(9) × 3.5mm以上で最大という。こんな知識がいるのか不明ですね。
(10) ○ 

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