細菌学 平成12年度本試験

戸田新細菌学のページ数は第32版より

1. 細菌の細胞壁について、下記のa、b、cの項目を考慮した図説を右に書け
a. グラム染色性と細胞壁の構造
b. 内毒素(endotoxin)・・・LPS
c. O抗原・・・LPSの多糖部分

2. 次の語句を説明せよ

1) プラスミド
小型の環状DNA。ゲノムとは別個に複製する。染色体以外の遺伝因子で複製によって子孫に受け継がれていく。生存のために必ずしも必要ではないが、菌にたいして薬剤耐性など、重要な性状を与える。DNAクローニングベクターとして広く用いられる。

2) 制限酵素
DNA分子の特異的な塩基配列部位で切断するエンドヌクレアーゼの一種。組換えDNA技術で広く使われる。

3) 修飾酵素 戸田新p131
制限酵素と同じ認識場所に配列する塩基の一部をメチル化し、制限酵素が作用しないようにする働きをもつメチル化酵素。

4) 形質転換
細菌や真核細胞の性質に生じた遺伝性の変化。菌体から抽出した高分子DNAが直接他の菌体に取り込まれて新しい形質の獲得につながる現象のこと。培養動物細胞の場合は、通常ウイルスや発癌物質の処理により、癌様の性質を獲得することをいう。

5) 条件致死遺伝子 戸田新p127
細菌に見られる変異現象で、ある一定の条件下では、分裂・増殖が可能であるが、異なる条件下では致死的になるという変異。温度感受性変異とサプレッサー感受性変異がある。

3. 次の食中毒原因菌の生育場所、細菌学的性状、食中毒の症状について知るところを記せ

1) 腸炎ビブリオ 戸田新p583
しらす や 石巻き貝などの海産物、魚介類の中に生息する。グラム陰性、好塩性の桿菌で、NaClがないと増殖できない。病原因子としては、ヒトおよびウサギの血球を溶血する耐熱性溶血毒(TDH)がある。食中毒は、汚染された魚介類を経口摂取することにより発症し、下痢・腹痛・嘔吐・発熱が主症状である。

2) 腸管出血性大腸菌 戸田新p552
ほとんどの牛牧場に生息し、先進国に多い菌だと考えられている。グラム陰性桿菌で、ウシの感染が多く、牛肉や便で汚染された野菜など(その他給食など)が食中毒の感染源となる。ベロ毒素を産生し、血便を主とする下痢を引き起こす。

3) 黄色ブドウ球菌 戸田新p471
自然界に広く分布しており、生体外では空気、土、酪農品などから分離される。ヒトや動物では皮膚、鼻咽腔粘膜、腸管内に常在している。グラム陽性球菌であり、菌の増殖により産生された腸管毒素により嘔吐を中心とした、腹痛、下痢などの症状を起こす。


4. 結核と結核菌について以下の問いに答えよ 戸田新p646

1) 結核菌を培養するために用いられる培地、培養日数、酸素の必要性について
小川培地やLowenstein-Jensen培地がよく用いられる。培養日数は3〜4週間(場合によっては8週間!)で、結核菌は好気性菌であるため酸素が必要である。

2) 感染源と感染経路について 戸田新p652
結核患者の咳などによって飛散する飛沫核に含まれる結核菌を吸い込むことによって感染するが、まれには経皮的に、あるいは消化管から感染することもある。

3) ガフキー号数とは何か
"ガフキー"は結核菌発見者ロベルト・コッホの共同研究者の名前である。ガフキー号数は、喀痰の塗抹標本を顕微鏡で見て、標本中の結核菌の多少を表現する数値で、見られない場合を0、見えた場合、少ない方から多い方に1から10までの整数を当てたものある。しかし、喀痰の採取具合、塗抹標本の作成技術、鏡検熟練度などで精度が左右されることや、このように細かく分類することの意義についても疑問視されている。

4) BCGとは何か 
パスツール研究所により13年、230代の累代を重ねて確立した病原性を示さない菌株のこと。この株を用いた経口投与、注射によりワクチンとしての有効性が確認された。

5) ツベルクリン反応とは何か
ツベルクリンは結核菌の培養ろ過液中に分泌されるタンパクを主成分したものである。ツベルクリン反応とは、精製ツベルクリンを皮内注射することによって生じるIV型(遅延型)アレルギー反応であり、感染防御免疫同様、細胞性免疫によって起こる。問題は、ツベルクリン反応が陽性ということと、結核に対する感染防御免疫ができているということが必ずしも一致しないことである。


5. 次の細菌属が一般細菌(例えばブドウ球菌属やシュードモナス属)と大きく異なる点を述べ、さらにヒトに対して病原性のある菌腫を一つずつ挙げてその病原性について説明せよ

1) リケッチア 戸田新p703
    通常の細菌より小さい、人工培地では培養できない、テトラサイクリン系抗生物質に感受性を示す、菌は節足動物の媒介による、などの特徴があげられる。
Orientia tsutsugamushiによって引き起こされる、ツツガムシ病が有名で、病原性は発熱、全身に発疹、刺し口が見られる、などである。

2) クラミジア 戸田新p715
通常の細菌より小さい、人工培地では培養できない、テトラサイクリン系抗生物質に感受性を示す、などの特徴があげられる。(リケッチアに似ている)
Chlamydia trachomatisによるトラコーマは、角膜の血管侵入(パンヌス)を主徴とし、失明をきたす。

3) マイコプラズマ 戸田新p693
細胞壁をもたない(したがって多形性)、DNAのGC含量が少ない、などの特徴があげられる。
Mycoplasma pneumoniaeによるマイコプラズマ肺炎は異型肺炎で、9歳以下の小児に好発する。発熱、咳が主訴である。細胞壁がないため、ペニシリンは効かないがエリスロマイシンが効く。(舞子さんのエリまきと覚えればいいらしいです!)


6.真菌について次の用語を説明せよ

1) 二形性 戸田新p308
真菌が特定の環境条件の下で、酵母形と菌糸形の間で形態変換を行うこと。(感染組織内では酵母形、培養では菌糸形となる。)

2) anamorphとtelemorph 戸田新p316
多くの菌類は、生活環の中で無性胞子と有性胞子を生じる。無性胞子を生じる時期を不完全世代、その形態をアナモルフといい、有性胞子を生じる時期を完全世代、その形態をテレオモルフという。


7.私たちの体には常在細菌がおり、また身近な生活の場にも多くの細菌が生息しているが、そこには少数ながら病原細菌も生息している。以下の部位または場所からこれらの病原菌を分類するために用いられる培地とその特性、培養される病原菌を書け

1) 鼻前庭
ブドウ球菌培地110番:黄色ブドウ球菌を検出する培地である。黄色ブドウ球菌の集落は典型的な発色をし、集落をかきとった後BTB溶液を滴下するとその部分が黄色になる。髄膜炎菌や、表皮ブドウ球菌などが培養される。

2) 咽頭
ヒツジ血液寒天培地:グラム陰性菌の発育を強く抑える。菌に溶血性がある場合、容易に観察できる。培養されるのは、S.mitis (口腔レンサ球菌)、Neisseria(ナイセリア)などである。

3) 台所の排水口 戸田新p926
NAC培地:グラム陽性菌と緑膿菌以外のほとんどのグラム陰性菌は発育が抑制される。培養されるのは緑膿菌である。

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