細菌学 平成14年度本試験

戸田新細菌学のページ数は第32版より

1. グラム陽性菌・陰性菌の細胞壁構造を、特にLPS、ペプチドグリカン、細胞内膜を明示して図示せよ 戸田新p35〜


細胞壁はペプチドグリカン(peptidoglycan)という特殊なポリマーから成る網目様の袋で、細胞原形質の浸透圧により細胞が膨張破壊してしまわないように、強靱な構造材として膜を支え、細胞の外形を決定する役割を果たしている。グラム陰性菌では、ペプチドグリカン層が薄く、その代わり更にその外側に外膜と呼ばれるもう一つの細胞膜類似膜を有する。外膜も、ある種の物質に対する透過障壁となっている為、両膜に挟まれたペリプラズム(periplasm)と呼ばれる領域は、細胞原形質と外界との中間的な環境になっている。


2. 大腸菌の好気・嫌気呼吸のグルコース代謝の相違について書け 戸田新p75〜
グルコース代謝には解糖と呼吸という2つの大きな経路がある。解糖系は呼吸と比べると極めて効率の悪い単純なエネルギー生産機構で、解糖・発酵系は酸素を必要としない嫌気的反応である。
 大腸菌では酸素があると好気的呼吸鎖が働くから、TCA回路も連動して作動する。酸素が得られない場合、それ以外の条件によって大腸菌のATP合成法が異なる。酸素に変わる電子受容体がある場合、それぞれに対応する別の呼吸鎖が作られ、それにTCA回路が連動する(嫌気的呼吸)。このような電子受容体がない場合は、糖が利用できればEM経路によりATPを生成する。最終産物として有機酸ができるので(乳酸を含む)このような代謝様式を混合有機酸発酵と呼ぶ。

3. 次の語句を説明せよ
1.テンペレートファージ 戸田新p108
菌に感染しても必ずしも増殖がおこらず、ファージゲノムが菌の染色体に組み込まれ、あるいはプラスミド状態になって、菌と行動を共にし、菌は増殖をしつづけるというファージのこと。

2.トランスポゾン 戸田新p122
細菌の染色体やプラスミドにはしばしば転位因子と呼ばれる数百から数千ヌクレオチドの長さを持つDNAの領域がある。トランスポゾンとはこの転位因子の一つであり、その領域の中に種々の遺伝子(アンピシリン耐性やカナマイシン耐性などの薬剤耐性遺伝子が多い)を有する。トランスポゾンが伝達能を有するプラスミドに組み込まれると、接合によって他の菌に移れるようになる。

4. バンコマイシンの作用機序と耐性獲得機序について説明せよ 戸田新p150 p143

  バンコマイシンはグリコペプチド系抗生物質の一つであり、細胞壁構成阻害剤である。既存の細胞壁ペプチドグリカンの成長末端に作用し、その成長を阻害する。グラム陽性菌に有効である。バンコマイシン耐性は、腸球菌細胞壁のペプチドグリカンの構成成分であるN−アセチルムラミン酸につくペンタペプチド末端のジアラニンが別のジペプチドに変化して起きるもので、プラスミド依存性である。


5. 2002年7月の日向でのレジオネラ集団感染について細菌学的に考察せよ  03年5月12日の授業より

  日向サンパーク温泉施設「お舟出の湯」において7人が死亡したレジオネラ集団感染では、同温泉原水の加熱機の温度が開館前に55度に設定されていた。国の基準は加熱設定温度をレジオネラ菌が死滅する60度以上と定めているが、同温泉はそれに達しない状態で開館していたためにこの惨事が起こった。(レジオネラ菌は35度前後で活発に増殖し、45度以上で活動が弱まる。60度以上では死滅する。)
循環ろ過式かつ生物浄化を行っている温泉などでは、このような惨事の起こる可能性は否定できない。我々はできるだけ天然温泉を提供している場所に行く、噴水があるところでは風下に行かない、などの努力をすることが大切である。


6. 次の菌の感染源と病原因子について書け
(1) 腸炎ビブリオ 03年6月3日の授業より 戸田新p583

  しらす や 石巻き貝などの海産物、魚介類の中にいる好塩性の菌で、NaClがないと増殖できない。この菌の病原因子として、ヒトおよびウサギの血球を溶血する耐熱性溶血毒(TDH)がある。TDH産生株は、患者便からの検出率は非常に高いが、食品や海水から検出されることは希である。このTDHには溶血作用、細胞致死活性、心臓毒性、腸管毒性などの生物活性が確認されており、TDH産生株が本菌の腸管病原性に深く関与することが知られている。

(2) 腸管出血性大腸菌(EHEC) 戸田新p552

  1982年のアメリカでの原因食はマクドナルドのハンバーグであった。ウシの感染が多く、牛肉や便で汚染された野菜など(その他給食など)が感染源となる。ほとんどの牛牧場に生息し、先進国に多い菌だと考えられている。病原因子は志賀毒素と同じ作用をもつベロ毒素である。


7. ヒトに病原性のあるクラミジアを挙げ(学名でも和名でもよい)病原性を記述せよ 戸田新p723

Chlamydia trachomatis トラコーマクラミジア 慢性角結膜炎
Chlamydia psittaci オウム病クラミジア 急性全身的感染症であり、インフルエンザ様の症状がでる。ペットの流行とともに増加しており、動物園の動物から感染した例も報告されている。人畜共通感染症である。
Chlamydia pneumoniae 肺炎クラミジア 肺炎、上気道炎などの呼吸器系疾患。動脈硬化症の原因ではないかと疑われている。


8. Candida albicans について次の問いに答えよ 戸田新p865
(1) 生育場所を書け
生体の常在真菌であり、土壌中にも多い。

(2) 種々の形態を図示し名称を書け(最低4つ)

                                                    その他、気性菌糸も書けそうですね。
(2) ヒトに対する病原性を書け

  ヒトの常在菌であり内因感染を起こす。病原性は弱いが日和見感染を起こし重篤になる場合がある。この菌による疾患はカンジダ症の大部分を占め、その感染部位により表在性カンジダ症(口腔、外陰部、皮膚、爪、腋窩など湿潤になりやすい部位や擦れやすい部位に好発)と深在性カンジダ症(腸管、肺など)に分けられる。


9. 次の菌の顕微鏡下で観察できる図を描き、グラム陽性か陰性かを記載せよ
(1) ブドウ球菌 Gram+ 戸田新p471

(2) レンサ球菌 Gram+ 戸田新p480

(3) 炭疽菌 Gram+ 戸田新p589

(4) 淋菌 Gram- 戸田新p493

(5) ジフテリア菌 Gram+ 戸田新p636

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