ウイルス学 平成14年度本試験

1. 次の各文章の選択肢を指示に従って選べ
(1) ウイルス粒子の大きさ
直径・・・B型肝炎ウイルス42nm、EBVは他のヘルペスと共通で150-200nm、アデノウイルス80-90nm、ヒトパピローマウイルス55nm、HCV直径50-60nm。

(2) 癌原ウイルスとして適当でないもの
 (B型肝炎ウイルス、EBウイルス、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルス、C型肝炎ウイルス)
アデノウイルス・・他は特定の癌の原因になると考えられている。  

(3) アルボウイルスとして適当でないもの
 (黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、ラッサウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス)
ラッサウイルス・・・アレナウイルス科に属する。(参考) ウエストナイル熱(以下WN)ウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属に属する。WNウイルスは血清学的に日本脳炎(JE)ウイルス群に属し、この群には他に米国のセントルイス脳炎ウイルス、オーストラリアのクンジンウイルスおよびマレーバレー脳炎ウイルスが含まれる。

(4) ゲノム核酸のみで感染性をもつもの
 (2本鎖RNAウイルス、+鎖RNAウイルス、−鎖RNAウイルス、ambisense RNAウイルス、レトロウイルス)
+鎖RNAウイルス・・・ポリオウイルス(ピコルナウイルス科)など

(5) 遺伝子治療ベクターとして適当でないもの
 (Lentiウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40ウイルス、レトロウイルス)
SV40ウイルス
(6) 血液感染の経路となり得ないもの
 (輸血、性交渉、母子間、注射器、蚊)・・・・蚊

(7) 血液感染ウイルスでないもの
 (HIV、水痘ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス)・・・水痘ウイルス

(8) zoonosisでないもの
 (ハンタウイルス、天然痘ウイルス、ヘルペスBウイルス、ヘンドラウイルス、ラッサウイルス)
天然痘ウイルス

(9) 先天性感染ウイルスでないもの
 (風疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、ポリオウイルス)・・ポリオウイルス

(10) 持続性感染ウイルスでないもの
 (単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、JCウイルス、ムンプスウイルス、C型肝炎ウイルス)
ムンプスウイルス

2. 次の各文章の( )を埋めよ
(1) 最も構造の簡単なウイルスの粒子は( ウイルス核酸:ゲノム )とそれを保護している( タンパクの殻:capsid蛋白 )から構成されている。しかし、複雑なものには宿主細胞の(脂質二重膜 )に由来する( エンベロープ )で覆われていたり、ウイルス粒子内に(転写酵素)を持っていたりするものがある。また、ウイルスが細胞に感染してから一時的にウイルスが検出されなくなる時期を( 暗黒期 )という。

(2) カやダニのような節足動物によって媒介されるウイルスを( アルボウイルス )と呼び、媒介する動物を(vector)という。

(3) 感染性のあるウイルスを定量するには、倍数希釈したウイルス液を細胞にかけて感染させた後、アガロースのようなゲル状の液を加えて、ウイルスが最初に感染した細胞の周りでのみ増えて遠くへ広がらないようにし、数日間培養した後にできる( plaque )の数を数える方法がある。10の5乗倍に希釈したウイルス液を0.1ml、細胞に接種したところ、それが85個認められたとすると、ウイルスの感染価は(85×10^5×10=8.5×10^7(pfu/ml) )である。

(4) BSEの原因となる病原体として( プリオン )がある。これは核酸をもたない( タンパク質 )のみのPrPである。PrPは正常の脳にも存在し、プルキンエ細胞の維持などを果たしている。このPrPが( 高次構造 )の変化により異常PrPとなり脳に蓄積するとSSEを引き起こす。

(5) インフルエンザの流行には毎年起こる(Epidemic )と、1918年の(スペインかぜ )のような突然世界的に大流行する(Pandemic )がある。前者は( HA蛋白)をコードする遺伝子の(mutant )が起こり、中和抗体からの( escape)が起こることによる。後者は( ブタ)のような動物の中で、ヒトのウイルスと( トリ)のウイルスの( 遺伝的再集合 )が起こることによる。香港カゼではH1N1が( H3N2亜型 )に変異していた。

(6) アシクロビルは単純ヘルペス1型及び2型、( 水痘・帯状疱疹ウイルス )にきわめて有効な抗ウイルス剤であるが、(ヌクレオチド )アナログとして(核酸合成 )を阻害するためには、ウイルス遺伝子にコードされた( チミジンキキナーゼ )によって1リン酸化される必要がある。

3. 次の各ウイルスの構造を図示し、特徴・性質・起こす病気について書け
(1) インフルエンザウイルス:戸田新細菌学P786
(2) エボラウイルス:戸田新細菌学P818
(3) アデノウイルス:戸田新細菌学P756
をそれぞれ参照。

4. 次の各問いに答えよ
(1) ウイルスが感染することで感染細胞に起こす変化を何と言うか:CPE、細胞変性効果
(2) HIV感染細胞の一般的な変化を述べよ
感染当初は、HIVがCytolyticにCD4陽性T細胞(Th)に感染してHIVの数が増えるが、CD8陽性T細胞(CTL)による破壊を受けていったん症状は治まる。しかしHIVを駆逐することはできず持続感染に移行し、CTLによる感染細胞の破壊が続く。IL-2によるT細胞の爆発的な誘導と消耗によりThは漸減し、その数が1μLあたり200個を切るようになると、CTLを活性化させるIL-2の産生も減るためCTLの反応が鈍くなり、Thの激減とウイルスの急激な放出が始まる。ウイルス側ではこの間、エラー訂正機構を欠く逆転写酵素のために形質転換が起こり、抗体の中和を逃れるとともにトロピズムの変容が起こる。こうして免疫系が崩壊し、患者は日和見感染に侵され死に至る。
(3) レトロウイルスに特徴的な活性は何か:逆転写酵素活性
(4) その活性を調べる方法を挙げよ:?
(5) レトロウイルス以外に(3)の活性を持つウイルスを挙げよ:B型肝炎ウイルス
(6) HIVの細胞レセプターを挙げよ
HIVはT細胞とマクロファージの発現するCD4分子をレセプターとして使用し、アンチレセプターとしてgp120を用いる。しかしCD4だけでは感染には至らず、βケモカインレセプターグループ(CCR: T細胞ではCXCR4、マクロファージではCCR5など)が第二のレセプターとして働く。
(7) アクチノマイシンDの作用機序を述べよ:
HIVは逆転写酵素によってRNAからDNAを合成する。DNAは、脱殻後に核内に移行して、インテグラーゼの働きによって感染細胞ゲノムの任意の位置に組み込まれる。組み込まれたウイルスDNAをプロウイルスと呼び、これから宿主遺伝子の転写と同様の因子群の関与によって転写、続いて翻訳が起こる。転写によって生じたmRNAは同時にウイルスRNAであり、翻訳によってできた構造蛋白群とともにビリオンを形成し、出芽する。アクチノマイシンDは転写過程を選択的に阻害するため、ビリオン形成ができなくなる。
(8) HIVが感染した際の生体の免疫応答について述べよ
主としてCTLによる感染細胞(Th)傷害により感染拡大を阻止しようとする。詳細は上記(2)参照。
(9) HIVに対する抗ウイルス薬を挙げ、その作用を述べよ
ジドブジン:核酸系逆転写酵素阻害
エファビレンツ:非核酸系逆転写酵素阻害
インジナビル:プロテアーゼ阻害

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