神経 平成16年度卒業試験

2004年度 卒業試験(獲得)
(1)62歳男性。2年前より姿勢バランスが悪くなり、しばしば転ぶようになった。1年前より上下が見づらくなり、身体全体の動きも遅く、表清が硬く、そった姿勢をとるようになった。この症例について正しいのはどれか。
(a)すくみ足現象がしばしば見られる    (b)L-dopaが有効である
(c)静止時振戦がよく見られる       (d)抗コリンエステラーゼ剤が有効である
(e)中脳被蓋部の萎縮をきたす
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】3(2003年卒試1問目参照)
【解説】パーキンソン症状がみとめられ、パーキンソン病が疑われる。
(a)△ 一部の症例で認められる。 
(b)○ パーキンソン病は大脳基底核のドーパミン産生細胞の変性によりドーパミンが低下することで生じる。
(c)○ パーキンソン病の振戦は安静時に強く出る。
(d)× パーキンソン病では相対的にACh優位になっているので逆効果である。  (e)×


(2)50歳男性、半年前から左手の脱力に気付く。両手の母指球と小指球、骨間筋の萎縮と筋線維束性収縮を認め、四肢腱反射亢進、両側病的反射陽性であった。感覚障害はない。予想される異常は何か。
(a)針筋電図で四肢遠位筋での脱神経所見
(b)時に頭部MRIで錘体路(内包後脚)のT2高信号化
(c)髄液検査でのオリゴクローナルバンド検出
(d)眼球運動障害
(e)頭部MRIで小脳・脳幹部の萎縮
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】1
【解説】上肢では下位運動ニューロンの障害が、上下肢で上位運動ニューロンの障害が認められ、ALS(筋萎縮性側索硬化症)が疑われる。(2003年卒試2問目参照) 
(a) ○ 下位運動ニューロンの変性、脱落がみられる。 (b) ○ (c) × 髄液所見は正常。
(d) × ALSでは外眼筋麻痺はない。感覚障害、膀胱直腸障害、褥瘡もなく、陰性4徴候という。
(e) ×

(3)小脳性運動失調症で見られる所見はどれか。
(a)Romberg徴侯    (b)測定異常  (C)断綴性発語
(d)反復拮抗運動不能 (e)偽アテトーゼ
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】4 (2003年卒試3問目参照)
(a)× (b)○ (c)○ (d)○ (e)× Romberg徴候、偽アテトーゼは脊髄性運動失調でみられる。


(4)正しい組合せはどれか
(a)甲状腺機能低下症→痴呆 (b)ピック病→人格の崩壊
(c)血管性痴呆→慢性進行性の経過 (d)アルツハイマー病→まだら痴呆
(e)びまん性レビー小体病→幻覚
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】 2
【解説】 (a) ○ 甲状腺機能低下症では66%に記憶障害がみられる。
(b) ○ ピック病では初期より人格の崩壊が起こる。 (c)×
(d)× 血管性痴呆ではまだら痴呆で階段状に進行、アルツハイマー病では全般的痴呆で慢性進行性に経過する。 (e)○

(5)椎骨脳底動脈系の脳虚血発作でみられるものはどれか。
(a)数分間の失語 (b)一過性黒内障 (c)一過性全健忘 
(d)運動失調   (e)一過性の四肢脱力
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e )3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】5
【解説】椎骨脳底動脈の梗塞では、脳幹と小脳の虚血が起こる。
(a)× 優位半球の中大脳動脈(内頚動脈)閉塞で起こる。 (b)× 内頚動脈系のTIAで起こる。
(c)○ 椎骨脳底動脈系の脳虚血発作で起こると言われている。
(d)○ 小脳の虚血で起こる。 (e)○ 錘体路の虚血で起こる。

(6)60歳女性、2年前よりふらつき歩行および構音障害(ろれつが回らない)などが出現し、徐々に増悪した。神経学的には、注観方向性眼振、失調性構音障害、四肢の協調運動障害および体幹失調が見られたが、痴呆や筋強剛、自律神経障害などは見られない。頭部MRI矢状断T1強調像を図に示す(p16)。必要な検査はどれか
(a)甲状腺機能 (b)血中ビタミンB12 (c)髄液検査 (d)遺伝子診断 (e)全身の癌検索
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】3
【解説】小脳性の運動失調がみられ、MRI画像では小脳の萎縮が認められており、脊髄小脳変性疾患が考えられる。
(a) ○ 甲状腺機能低下によって小脳が萎縮することがある。 (b) ×  (c)×
(d)○ 脊髄小脳変性疾患には遺伝性のものが多い。SCAやMachado-Joseph病やDRPLA等。
(e)○ 癌の存在により、小脳の細胞に対する抗体が産生され(?)、小脳の萎縮が起きることがある。

(7)パーキンソン病は
(a)前傾姿勢になりやすい (b)線条体の神経細胞の変性が見られる
(c)振戦は姿勢時振戦がもっとも多い (d)10万人に100人程痩の頻度である
(e)筋硬直は歯車様硬直がもっとも多い
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】3(2003年卒試8問目参照)
(a) ○ 姿勢反射障害により立位で前傾姿勢をとる。
(b) × 黒質緻密層の神経細胞の変性がみられる。 (c) × 安静時振戦が特徴である。
(d) ○ (e)○

(8)46歳男性。38℃の発熱があり、7日後よりぼーっとするようになった。その後、不穏状態となったため入院した。体温38.2℃,左動眼神経麻痺、項部硬直を認めた.血液検査では,白血球5600/o3, CRP2.4mg/dl, 血糖110mg/dl,髄液所見は,細胞数320/o3(単核球主体),蛋白122mg/dl, 糖31mg/dl, 塩素104mEq/L(正常120-130)であった。以下のうち最も可能性の高い診断はどれか。
1.細菌牲髄膜炎 2.真菌牲髄膜炎 3.結核性髄膜炎 4.ヘルペス脳炎 5.脳膿瘍

【解答】3
【解説】髄液所見より結核性髄膜炎が最も疑われる。髄液検査で、圧↑、リンパ球↑、蛋白↑、糖↓、Cl↓、ADA↓。


(9)55歳男性.発熱があり,翌日より意識レベルが低下し,四肢の強直間代発作を認めるようになったため入院した.体温38.2℃,混迷状態,項部硬直を認めた.血液険査ではCRP2.4mg/dl,髄液所見は,細胞数50/μl(単核球主体), 蛋白122mg/dlであった.頭部CTでは左の側頭葉に不規則に造影される低吸収域がみられ, 脳波で片側性に周期性のspkieを認めた. 以下のうち最も可能性の高い診断はどれか
1.細菌性髄膜炎       2.HlV脳症     3.進行性多巣性白質脳症 
4.単鈍ヘルペス脳炎     5.脳膿瘍

【解答】4
【解説】急性の発症で、感染性の髄膜炎、脳炎が疑われる。単純ヘルペス脳炎は、頭部CTで側頭葉に低吸収域が認められ、脳波にて周期性同期生高振幅徐派(PSD)がみられる。(2003年卒試9問目参照)

(10)62歳女牲.物が見えにくいと訴えた1週間後より歩行時にふらつくようになった.次第に口数が少なくなり,話のつじつまが合わなくなり意志疎通ができなくなった.1ヶ月後には寝たきりとなり,四肢が時々不随意にピクッと動くのが観察された.以下のうち,必要なものはどれか.
(a)頭部MRI検査 (b)脳波検査 (c)眼底検査 (d)筋電図検査 (e)髄液検査
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】2
【解説】高齢女性に亜急性に発症しており、進行もはやく、大脳症状(知能低下、行動異常)、小脳失調(?)、精神症状とミオクローヌスが認められる。CJD(Creutzfeldt-Jakob病)やSSPE(亜急性硬化性全脳炎)などが疑われる。
(a)○ CJDでは拡散強調画像で大脳皮質、基底核などの灰白質に異常を認める。SSPEでは大脳のびまん性変性と進行性萎縮がみられる。
(b)○ CJDとSSPEでは、脳波で周期性同期性高振幅徐派がみられる。
(c)× (d)× (e)○ 髄液所見はCJDでは正常、SSPEでは麻疹抗体価↑、IgG↑。


(11)以下の反射レベルで正しいものは
(a)下顎反射→橋 (b)上腕二頭筋反射→頚髄5,6 (c)Wartenberg反射→頚髄6,7
(d)膝蓋腱反射→胸髄12〜腰髄2 (e)アキレス腱反射→仙髄1,2
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】2(2003年卒試11問目参照)
【解説】(a)○ (b)○ (e)○ (c)× Wartenberg反射→頚髄7,8 (d) 膝蓋腱反射→腰髄2〜腰髄4


(12)50歳,男性.排尿障害とインポテンツで発症.数週間後,両足底に違和感を感じ,また歩行するときにフラフラ感を自覚するようになった.血清・髄液のTPHAが陽性であった.この疾患について,誤っているものはどれか
(a)アーガイル・ロバートソン瞳孔を認める (b)ロンベルグ徴侯が陰性である
(c)深部腱反射が亢進する (d)関節の変形(シャルコー関節)を認める
(e)ペニシリンGが有効である
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】2
【解説】症状と、血液・髄液でTPHAが陽性であることから神経梅毒が疑われる。排尿障害、インポテンツ、脊髄性失調歩行→脊髄後根、後索の障害。
(a)○ 神経梅毒で生じる。瞳孔は遠近調節には正常に反応するが光には反応しない。瞳孔は小さく左右差がある。
(b)× 後索障害があるのでRomberg徴候は陽性となる。
(c)× 深部腱反射は低下、消失する。 (d)× (e)○ ペニシリンGが第一選択である。


(13)髄液険査について正しいものはどれか
(a)上部腰椎を穿刺する  (b)頭蓋内占拠性病変があるときには行わない
(c)髄液採取後の頭痛は起立すると増悪する 
(d)クモ膜下出血と穿刺時出血を鑑別するには髄液を遠沈する
(e)正常髄液では多核球と単核球の比は約1:2である
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】4(2003年卒試13問目参照)
(a) 通常はL3~L4かL4~L5(Jacoby's line;左右腸骨稜を結ぶ線)を穿刺
(b) 頭蓋内圧が亢進しているので脳ヘルニアを引き起こすため禁忌。
(c) すぐに頭を上げると頭痛を生じるという理由から、髄液採取後は臥床安静。
(d) 外傷性腰椎穿刺では血性は最初だけで、次第に透明となり、遠心沈殿して確認できる上澄みにキサントクロミー(溶血による黄色化)を認めないが、SAHでは血性のままで透明になることはなく、遠心沈殿後の上澄みにキサントクロミーを認める。
(e) 正常髄液中では細胞成分は5/mm3(15/3;3視野に15個)以内で、リンパ球と内皮細胞などの単核球からなる。

(14)42歳男性.発熱を伴う下痢が2日間続いた.その約2週間後より四肢が動かなくなり,次第に呼吸困難が出現したため入院。四肢で高度の筋力低下を認め,深部腱反射は消失していた。両側ラゼーグ徴候陽性。肺活量は830m1であった。適切な検査・治療はどれか
(a)末梢神経伝導遠度検査 (b)髄液検査 (c)頸椎MRI検査 (d)副腎皮質ステ'ロイド剤投与 (e)血漿交換療法
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】2(2003年卒試14問目参照)
【解説】胃腸炎や上気道炎後、2週間ほどして運動麻痺(急性に始まる下肢から次第に上行する弛緩性運動麻痺)が生じたらギラン・バレー症候群を考える。特徴的なのは両側性の顔面神経麻痺。検査所見としては髄液の蛋白細胞解離、末梢神経伝達速度の低下が有名。只、前者は発症1〜2週間後でないとみられない。症状は数週から数ヶ月で自然回復するが、回復を速めるために血漿交換療法を行うこともある。


(15)36歳男性。5〜6年前から月に数回、何か妙な感じがした後、それまでの動作が止まり、30秒間くらい口をもぐもぐさせたり、手指を動かしたりする発作が起こる。患者は発作中のことは全然覚えていない。発作の時以外は全く正常に生活できる。この症例に関して正しいものはどれか
(a)脳波所見で限局性の棘波を認める (b)逆行性健忘を伴う頻度は高い
(c)薬物療法は単剤投与が望ましい  (d)初回治療の場合はフェノバルビタールから開始する
(e)後頭葉の腫瘍で起こることが多い
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1
【解説】意識障害(+)で自動症があるので、複雑部分発作と考える。
(a) ○側頭葉を中心にspike & wave (b)○ (c)○
(d)×カルバマゼピンやフェニトインを使う。 (e)×側頭葉。


(16)38歳女性。会合で大量に飲酒をした翌目より腹痛・嘔吐が出現。また手足に力が入らず歩けなくなった。夜眠れなくなり, 尿が赤褐色を呈してきた。この疾患について誤っているものはどれか
(a)日光過敏症を呈する          (b)深部腱反射は滅弱する
(c)尿中ポルフォビリノーゲンが高値を示す (d)ヘムの合成経路に異常がある
(e)不眠の治療にバルビタール剤が有効である
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】5(2003年卒試17問目参照)
【解説】アルコールを契機に腹痛・赤色尿が見られるといえば、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)を考える。
(a)×ポルフィリン症でAIPだけは皮膚症状(-)
(b) ○ (c)○ (d)○ (e)×バルビタールは発症の誘因となる。


(17)55歳、女性。45歳頃から徐々に進行してきた痙性対麻輝を主訴として入院。神経学的には下肢で腱反射の亢進と両側バビンスキー徴候陽性あり。髄液所見は細胞数10/3、蛋白7mg/dl、末梢血の塗抹標本および髄液の細胞診にて核の分葉したリンパ球を認めた。この疾患について正しいものは
(a)髄液の抗HTLV-1抗体は陽性   (b)下肢の感覚障害を呈する例が多い
(c)排尿障害は通常認められない   (d)東日本で多くみられる
(e)インターフェロンαが有効である
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】5(2003年卒試18問目参照)
【解説】症状からHAM(HTLV-1関連脊髄症)が疑われる。HAMは西日本に多く、症状としては緩徐進行性の歩行障害(痙性対麻痺)、排尿障害、下肢優位の感覚障害などがある。治療は高齢者や軽度の痙性歩行時は筋弛緩剤とリハビリテーションのみでも有効だが、重症例にはステロイドやINFαを使う。

(18)45歳男性。2ヶ月前から両下肢がだるく体が疲れやすい.徐々に症状は悪化している.複視は認めない.両上肢の筋力は正常であるが両下肢の中等度筋力低下を認めた.腱反射はすべて低下.血清CK正常.末梢伝導遼度正常.適切な検査はどれか
(a)胸部CT  (b)誘発筋電図 (c)抗Caチャンネル抗体の検索 (d)髄液検査 (e)頚椎MRI
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1
【解説】複視(-)、両下肢の筋力低下、腱反射低下から、Eaton-Lambert(筋無力)症候群(LEMS)が疑われる。
(a)○LEMSなら肺小細胞癌の有無、MGなら胸腺腫の有無を確認できる。
(b)○LEMSならwaxing、MGならwaningがみられる。 (c)○LEMSの自己抗体。(d)× (e)×


(19)35歳の女性.30歳時に左下肢の筋力低下と運動障害が出現したが,1ヶ月程度で自然治癒.2週間前より風邪気味であったが,今朝起床時より複視が出現したため来院.眼球運動を図に示す(p16)。病変部位はどこか
1.左動眼神経核 2.右動眼神経核 3.左脳幹内側縦束 
4.右脳幹内側縦束 5.橘下部被蓋傍正中部

【解答】3(2003年概説試験5番参照)
【解説】MLF(内側縦束)症候群=核間性眼筋麻痺といわれる。右方あるいは左方視する際には、一側の動眼神経と反対側の外転神経を協調して働かせねばならないが、これを司っているのが内側縦束。MLFの侵される典型的疾患には多発性硬化症がある。


(20)52歳、男性。2ヶ月ほど前から午後になると右眼瞼下垂と複視が起こるために来院。正中神経反復刺激試験(3Hz)を行い、母指内転筋表面筋電図を記録したところ図a(p16)のような結果が得られた。また、胸部造影CTスキャンの結果を図b(p16)に示す。この時点でこの患者について誤っているものはどれか
(a)誘発筋電図にて漸増現象(waxing)が認められる (b)血液浄化療法が有効
(c)誘発筋電図にて漸減現象(waning)が認められる (d)拡大胸腺摘出術を行う
(e)四肢腱反射が低下、ないし消失する
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】4(2003卒業試験19番参照)
【解説】誘発筋電図でwaning、胸部CTで胸腺腫大が認められる。重症筋無力症はAchRへの自己抗体ができる自己免疫疾患で、女に多く、特に20〜40代の女。男は50歳以上に多い。症状:眼瞼下垂、朝より夕に優位な筋力低下(上肢優位)。複視、兎眼(完全には瞼が閉じない目)など。但し、筋萎縮なし。検査:テンシロン(ChE blocker)試験で陽性(症状改善あり)。誘発筋電図で反復刺激後、筋収縮漸減(waningという)。80%に抗AchR抗体陽性。30%に胸腺腫(予後が悪い)。治療:眼症状のみの軽症ならChE blocker。重症ならステロイド。胸腺腫や胸腺過形成があれば胸腺摘出。根治は稀。


(21)以下の失語の中で、自発言語が流暢なものはどれか
(a)超皮質性感覚失語 (b)超皮質牲運動失語 (c)Broca失語
(d)Wernicke失語  (e)健忘失語
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】2
【解説】(a)○ 復唱○発話○言語理解× (b)× 復唱○発話×言語理解○
(c)× 復唱×発話×言語理解○ (d)○ 復唱×発話○言語理解×
(e)○ 復唱○発話○言語理解○

(22)両側性の顔面神経麻痺を呈する患者をみた場合,以下のうち可能牲の高い診断はどれか
(a)ラムゼイ・ハント症侯群 (b)サルコイドーシス (c)ギラン・バレー症候群
(d)クリプトコッカス髄膜炎 (e)橋下部便塞
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】3
【解説】両側顔面神経麻痺を来たし得る疾患は、多発性硬化症、サルコイドーシス、Lyme病、ギラン・バレー症候群の4つを覚える。
(a)×VZVによる膝神経節障害で片側性。(b)○ (c)○ (d)× (e)×


(23)疾患と欠損酵素の組み合わせで正しいのはどれか
(a)Tay-Sachs病一hexosaminidase A (b)Fabry病一α-galactosidase 
(c)Tarui病-phosphofructokinase   (d)Krabbe病-sphingomyelinase
(e)副腎自質ジストロフィ-arylsulfatase A
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】(2001年卒業試験20番参照)
【解説】脂質蓄積症(lipidosis):臓器に脂質が蓄積し、中枢神経系障害はすべてに起こり得る。Fabry病は伴劣、他はすべて常劣。糖原病:glycogenが組織に沈着する先天性遺伝性疾患。
(a)○hexosaminidaseA欠損によるGM2ganglioside 蓄積症。網膜も中枢の一部なので網膜にも蓄積(cherry red spot)
(b)×α-galactosidase欠損が原因である。
(c)×phosphorylase欠損である。筋型糖原病(X型)で、運動時筋痛、易疲労性。
(d)○sphingomyelinの蓄積で肝脾腫おこす。
(e)○sulfatideという糖脂質の分解できずに脳腎に蓄積

(24)18歳、女性幼小児期に間題なし。半年前より字を書こうとすると手が震えてうまく書けない、体の動きが悪く、転びやすくなったなどの症状で来院。軽度の知能低下を認め、性格は多幸的。頚部と四肢に筋圏縮、寡動、右手のジストニーあり。病的反射なし。感覚障害、小脳症状、骨格の変形などはない。眼球の写真(カラーぺ一ジ図a(p21))と頭部MRI(図b(p16))を図に示す。この疾患に関して正しいものはどれか
(a)肝機能障害がある (b)1日尿中銅排泄量は低下している (c)血清セルロプラスミン値は高値をとる
(d)D一ペニシラミンとビタミンB6の併用内服治療を行う (e)血清銅は低下する
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】(2003年概説試験24番参照)
【解説】Wilson病。銅は肝細胞に沈着するが、ついで腎臓、角膜、大脳基底核などに沈着する。目の写真は銅が角膜に沈着することによるKayser-Fleischer角膜輪。MRIはよくわかりませんが、基底核のあたりの高信号域が銅の沈着でしょうか。
(a)×血清銅、セルロプラスミン低値。 (b)×尿中銅排泄は著明に増加。 (c)○写真参照。
(d)○D−ペニシラミンはキレートで銅吸収抑制。 (e)○これらは銅の含有量が多い。


(25)20歳の女牲。生来健康であったが、2年前急に左眼がみえにくくなった。2-3カ月で視力は徐々に回復した。1ヵ月前から左をみると物が二重に見えるようになった。2週間前から両下肢の脱力をきたし、3日前から歩行不能、・尿閉となった。左眼の視力低下、眼底検査で耳側蒼白(Temporal pallor)を認めた。左方視で右眼の内転が不十分であり、外転している左眼に眼振がみられた。輻輳は正常。両下肢の筋力は著明に低下し、腱反射の充進とBabinski反射が陽性であった。腹部の臍付近に帯状に絞宛感(girdle sensa)を認め、それより下の温痛覚、振動覚の低下を認めた。この疾患について正しいものはどれか
(a)痙攣を伴うことは稀である 
(b)髄液オリゴクローナルバンドが陽性になる
(c)インターフェロンβ療法が再発防止に有効である 
(d)灰自質が白質よりも高頻度に障害される
(e)好発年齢は50-70歳である
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1(2004卒業試験25,26番参照)
【解説】MS(多発性硬化症)の所見。時間的多発が特徴だし、選択肢にオリゴクローナルバンドが…と入っていることからも、MSやADEM はまず思いつきたい。
MSに決まった神経症状から初発するというものはなく、視力障害、しびれ感、運動麻痺、歩行障害、複視、排尿障害、感覚鈍麻、言語障害などが多い。
MSは中枢神経白質の髄鞘を形成している乏突起膠細胞の、髄鞘成分に対する自己免疫機序により多発性の脱髄を生じるものである。中枢神経の白質に複数の病巣を認め(空間的多発)、また症状の寛解・再発を認める(時間的多発)のが特徴である。検査所見としては髄液検査でIgGの増加、オリゴクローナルバンドの出現、ミエリン塩基性タンパクの出現、MRIでは、T1WIで低信号域、T2WIで高信号域の散在性の脱髄巣を認めること、さらに誘発電位における中枢神経白質の伝導速度の低下を認めることが特徴である。疫学としては、15〜50歳の成人、やや女性に多く、有色人種は白人より有病率が低い、北方の寒冷地域に多い(類題:94B70参照)。ここまでだけでも、d× e×  1しか残らない。
解説を続けると、治療は再発・急性増悪期にはステロイドパルス(500〜1000mg/日)を早期に使う。しかし、ステロイドは再発抑制効果はない。最近I FN β(ベータフェロン)・グラチラマーアセテート・および免疫グロブリン静注療法などが再発回数を抑制し、かつMRI病巣を減少させる効果があると明らかにされている。また、症状としての痙攣はイギリスで204例中4%に見られたと書かれている(新臨床内科学V-p.1620)ので、稀なのでしょう。


(26)8歳、男児。出生、発育は正常であったが、小学校に通う頃からしゃがみ立ちが出来なくなり、徐々に歩行も困難になってきて、現在は車椅子生活。神経学的には四肢近位筋の筋萎縮と筋力低下、腱反射の消失を認め、血清CK3850U/l(正常45〜63U)であった。下肢の写真(図a(p16))筋生検のジストロフィン染色(カラベージ図b,c, 左:正常者、右:患者(p21))を図に示す。この疾患について正しいものはどれか
(a)伴性劣性遺伝で男子に発症する     (b)呼吸筋障害を伴う例が多い 
(c)下肢腓腹筋に仮性肥大が認められる (d)一般には思春期以降に発症する 
(e)女性キャリアーに症状が出ることはない
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1(2004卒試27参照)
【解説】問題文より筋ジスが考えられる。下腿の写真では、下肢腓腹筋の仮性肥大が認められる。また、ジストロフィン染色の図で、患者の筋には全くジストロフィンがないことわかる。すなわち、Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)である。<ちなみに、少し染まっていればBecker型筋ジストロフィー(BMD)、モザイクになっていれば保因者>
DMDは筋ジストロフィーの中で最も頻度が高く、筋ジストロフィーの約半数を占める。新生男児3000〜3500対1の割合で発祥し、10万人あたりの発生率は13〜39人である。通常2〜4歳ごろに歩行異常で発症する。初期より腰帯部が強くおかされ、Gowers徴候が認められる。下腿の仮性肥大もしばしば認められる。また、20%の症例で知能障害の合併をみる。筋力低下と筋萎縮は常に進行し、11歳頃には自立歩行不能となり、20〜30歳までに呼吸障害、心不全などで死亡する。 2004-27では呼吸筋は犯されないと解説に書かれているが、呼吸筋も犯されるっぽい。原因遺伝子はX鎖p21.2に存在するジストロフィン遺伝子の異常。伴性劣性遺伝。保因者の女性でも、まれに軽い症状を示す事があり、症候性保因者と呼ばれる。(ジストロフィン染色でもモザイクになることだし…)。付け加えで…日本では福山型筋ジストロフィーがDMDの次に多いです。


(27)45歳女性5〜6年ほど前から上・下肢の脱力と筋委縮が徐々に進行し、最近階段の昇降が困難になリ、杖歩行となった。3ヶ月前に突然右片麻痺と右同名半盲が出現。血液検査で代謝性アシドーシスを呈しており、血清乳酸、ピルビン酸値軽度上昇、血清CK180U/l(正常45〜163U/l)。針筋電図所見で筋原牲変化を認めた。症状は徐々に軽決し、発症1ヶ月で右片麻痺も半盲も消失した。発症3目目のT2強調MRI像(A(P17))と、発症3ケ月目のT1強調画像(B(p17))。ゴモリトリクロム変法染色(200倍)での筋生検像(C(P21))を示す。正しいものはどれか。
(a)脳梗塞は中大脳動脈の支配領域に一致して起こっている
(b)副腎皮質ステロイド剤経口内服治療が有効である
(c)ミトコンドリア脳筋症の中でMELAS(mitochondrial encephalomyopathy, lactic acidosis and stroke)が疑われる
(d)ミトコンドリア遺伝子の点変異で起こる症例が多い
(e)好気性運動負荷試験を行っても血中乳酸・ピルビン酸値が上昇しない例が多い
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】4
【解説】ミトコンドリア病なんて勘弁してほしいですな。
ミトコンドリア病の4大疾患は、CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺)、MELAS、MERRF、Leigh脳症。ミトコンドリアが侵されるということで、骨格筋、中枢神経系にまず被害が出、心筋も侵されるし、難聴、DM、腎障害などの合併症も高頻度に見られる。
CPEO: ミトコンドリアDNAの欠失(種々の大きさ)が見られる。発症は小児期〜成人と幅広く、10〜20歳に気づかれることが最も多い。まず眼瞼下垂、ついで全方向への眼球運動制限。眼症状だけでなく、大半は易疲労性や四肢の筋力低下も伴う。眼症状、網膜色素変性、心伝導障害を伴うものはKearns-Sayre症候群と呼ばれるている。 検査では、血液・髄液乳酸値の上昇、膵液蛋白の上昇、筋生検で赤色ぼろ繊維(RRF: red ragged fiber)の確認、チトクロームc酸化酵素染色で酵素活性が欠損した繊維があることで診断が確定となる。
MELAS: ミトコンドリアDNAの点変異によって起こる。母系遺伝をし(家族歴あり)、発症は2〜15歳。病理的には小血管平滑筋細胞に異状ミトコンドリアが増加している。脳卒中様症状(嘔吐を伴う発作性の頭痛、痙攣、意識障害。回復後には片麻痺、多くは一過性の視力障害)が主症状である。卒中様症状が出現する前から低身長、易疲労性、軽度の筋力低下を認めることが多い。卒中様症状は数時間〜数日続き、その間は高乳酸血症による代謝性アシドーシスを認めることが多い。麻痺症状は一過性で通常は速やかに回復する。発作症状を繰り返すにつれ知的退行、てんかん、半盲、筋力低下が進行し、やせ、かんせん、腎不全などで死の転帰となる。血液・髄液の乳酸値高値、CT/MRIで多発性の脳梗塞類似の所見を後頭部有意に認める。また、筋生検ではRRFを認める。治療には根本的なものはない。発作時には輸液、ステロイド投与、酸素吸入を行う。
MERRF:ミオクローヌス、全身性のてんかん発作、小脳性失調を主症状とし、母系遺伝をとる。ミトコンドリアDNAの点変異が原因。発症は小児期から成人までと幅広い。検査では血液・髄液の乳酸値の上昇、筋生検でRRF、チトクロームc酸化酵素部分欠損などが認められる。治療はMELASと同じで対症療法。
Leigh脳症:脳基底核、脳幹部に左右対称性の壊死性病変を認める。乳児期に発症し、発達発育の停止、筋力・筋緊張低下、呼吸障害、知的退行を主症状とし、予後は悪い。ミトコンドリアDNAの点変異が原因として一番多いが、常劣のものもあると考えられている。
以上を考えて、MELASが疑われる。画像は左頭頂葉〜後頭葉あたりにかけてA(T2WI)でhigh、B(T1WI)でlowな領域があり、ここが虚血性病変と考えられる。片麻痺・半盲の症状とも一致。染色標本はRRFを確認。(カラーでは青の中に赤い繊維があるのが見える。)
a.頭頂葉〜後頭葉が虚血。上頭頂小葉、後頭葉を潅流するPCAを推したい ×
b.ステロイドの投与は対症療法なので×。 c.○ d.○ e.好気性運動負荷試験(エルゴメーターなど)では乳酸・ピルビン酸が上昇(ってミトコンドリアが悪いんだから当たり前)。×
http://www.ncnp.go.jp/hospital/news/kin250.htm でも見てお茶を飲みましょう。


(28)ニューロパチーに関して正しいものはどれか。
(a)脱髄牲病変では末梢神経伝導速痩が低下する
(b)未梢神経のonion bulb形成は脱髄牲ニューロパチーでみられる
(c)Churg一Strauss症候群は、多発性単神経炎を呈する
(d)針筋電図検査で図(p17)のような所見を認める
(e)慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)では髄液細胞数、蛋白量ともに高値となる
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1(2004年卒試29と同問。)
【解説】
○ a 髄鞘がやられると跳躍伝導ができなくなるから。
○ b Charcot-Marie-Tooth病およびDejerine-Sottas病でみられる。
○ c PN,RA,サルコイドーシス、DMなどでも多発単神経炎を生じる。
× d 神経原性では長持続(10msec以上),高振幅(giant spike)が特徴。一方、筋原性(筋炎など)では、短持続、低振幅。低振幅のがたくさんあるので、筋原性でいいんじゃないでしょうか。1unitがどこまでかということによってdurationが変わるという問題はありますが、高振幅ではないのは確か。
× e Guillain-Barre症候群と同様に、蛋白細胞解離(細胞数正常、蛋白増加)をきたす。


(29)次の組み合わせの中で正しいものはどれか
(a)ビタミンC--ペラグラ脳症 (b)ビタミンB6--イソニアジドによるニューロパチー
(c)ビタミンB12一亜急性連合変性症 (d)ビタミンBl一脚気
(e)ビタミンE--皮膚炎、下痢、神経症状
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】4
【解説】新傾向問題
a × ペラグラ脳症はニコチン酸の欠乏で発症。精神症状(神経衰弱状態や不安抑うつ状態で発症、幻覚妄想状態や、せん妄を認める)、下痢、皮膚症状など。治療は葉酸+ビタミンB1の入った輸液。
b ○ イソジアニド(INH)は結核の治療薬。INHは「あいなー」と呼ばれる。結核の治療薬として、イソジアニド(INH)、リファンピシン(RFP)、ピラジナミド(PZA)、ストレプトマイシン(SM)、エタンブトール(EB)とその副作用はおさえておこう。ところで、INHの副作用に末梢神経障害があるのだが、ビタミンB6で予防可能なのだそうだ。
c ○ ビタミンB12欠乏は、亜急性連合性脊髄変性症、悪性貧血。
d ○ ビタミンB1は脚気、多発性神経炎、Wenicke脳症など  e×  ビタミンEは不妊、溶血など
ちなみに、脂溶性ビタミンはADEK。


(30)25歳男性。10日前より、毎日夜間就眠中に左目の奥に突然刺すような痛みを感じるが、数分から2時間で消失する。頭痛がない時の全身所見、神経学的検査に異常を認めず、頭部CTスキャン検査も正常であった。正しいものはどれか
(a)Horner徴侯を認めることがある (b)この疾患は一般的には中年女性に多い
(c)頭痛は両側性に起こることが多い (d)トリプタン製剤はある程度有効である
(e)100%酸索吸入が有効である
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】5(2004年卒試30と似た問題(aの選択肢が違う)
【解説】成年男性に多い群発頭痛。一側性の眼窩の激痛(自殺するくらいの激痛という)、が夜間に一定期間にわたって起こる。ちなみに片頭痛は40%が両側性に発生する。100%酸素吸入が著効。エルゴタミンが効く(類90A98)。トリプタン製剤も効く。アルコール・喫煙で誘発。随伴症状として流涙(一側性または両側性)、結膜充血、Horner症候群(不全形)(=縮瞳+眼瞼下垂-発汗障害)、光過敏、blurred vision。


(31)側脳室で産生された髄液が第四脳室に流れるまでに通過する脳室構造は、次の順番のどれが正しいか。
1.モンロー孔一中脳水道一第三脳室--第四脳室
2.中脳水道一第三脳室一モンロー孔一第四脳室
3.中脳水道一モンロー孔一第三脳室一第四脳室
4.第三脳室一モンロー孔一中脳水道一第四脳室
5.モンロー孔一第三脳室一中脳水道一第四脳室

【解答】5
【解説】間違った人は解剖をもう一度勉強しましょう。 類題87A27
第1と第2脳室は左右の側脳室のこと、側脳室と第3脳室の間がモンロー孔、第3脳室と第4脳室の間が中脳水道。髄液は側脳室脈絡叢で産生され(一日500ml)、第4脳室に行ってmagendie孔とLuschka孔を通ってクモ膜下腔に入り、脳脊髄全体を浸す。そして、上矢状洞のクモ膜顆粒を介して後膜静脈洞に吸収される。

(32)急性硬膜外血腫の手術で止血のためにしばしぱ閉鎖される孔はどれか。
1.上眼窩裂 2.正円孔 3.卵円孔 4.棘孔 5.頚静脈孔

【解答】4 ?
【解説】硬膜外血腫で最も多いのは中硬膜動脈の破綻。これが通るのが棘孔なので…。

(33)損傷されると同名半盲を呈する可能性のある解剖学的構築の組み合わせは、次のうちどれか
(a)視神経 (b)視索 (c)後頭葉 (d)外側膝状体 (e)内側膝状体
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】4
【解説】同名半盲は両目とも外側が見えない、または両目とも内側が見えない。視交差の後ろ(視索以下)で障害されると同名半盲になる。eの内側膝状体は、聴覚が経由する経路なので関係がない。視覚は外側膝状体。
視覚の経路  視神経→視交差→視索→外側膝状体→視放線→後頭葉
聴覚の経路  蝸牛神経→内耳孔→小脳橋角→延髄→背側及び腹側蝸牛神経核→対側上オリーブ核(一部は同側上オリーブ核で終止)→外側毛帯→外側毛帯核→下丘→内側膝状体→聴放線→側頭皮質にある聴覚野(41)

(34)左動眼神経の障害に伴う神経学釣所見として正しいものの組み合わせはどれか。
(a)左眼瞼下垂がみられる。      (b)左眼の直接対光反射は消失している。
(c)左眼の間接対光反射は消失している。 (d)右眼の間接対光反射は消失している。
(e)左眼の瞳孔は縮小している
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1
【解説】動眼神経麻痺では、麻痺側の瞳孔の散大、麻痺側の眼瞼下垂、麻痺側の直接対光反射・間接対光反射の減弱あるいは消失が起こる。瞳孔の縮小はHorner症候群。


(35)精神運動発達が遅れている可能性が高いのはどれか
(a)(12生月,女児)まだ歩けない   (b)(5歳,男児)赤、青、黄、緑の弁別ができない
(c)(4歳女児)白分の姓名がいえない (d)(6生月,女児)首が座っていない
(e)(2歳男児)二語文の復唱ができない
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】4
【解説】2002卒試46に似た問題
(a)×ひとり立ちが1歳くらいだからもうちょっと。つかまりだちは9ヶ月。
(b)○交通信号の赤、黄、青の意味がわかる→4歳  (c)○自分の名前を言う→3歳
(d)○くびがすわる→3〜4ヶ月      (e)×2語文が復唱できる→2歳、3語文→3歳


(36)胎児期の心臓腫瘍を指摘されていた7か月男児が、十数秒おきに2-3分間くり返して全身に一瞬力を入れ、不機嫌に泣くようになった。同じくり返しが1日に何度もあり、あやし笑いもなくなった。症状や検査所見について正しいものはどれか。
(a)この発作型はミオクロニー発作と非定型欠神発作である
(b)精神運動発達の停止または退行が起きている
(c)頭部CTでは脳内に石灰化がみられる
(d)皮膚には白斑がみられる
(e)脳波では特異的なslow spike & wave complex (遅棘徐波結合)を呈する。
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】4(類題 2003年卒試36)
【解説】白斑・脳内石灰化・心臓腫瘍とか書いてあるので、結節性硬化症を考える。
そして、この年齢のてんかんならまずEIEEかWest症候群。十数秒おきに2-3分間くりかえして〜という記述がシリーズ形成を思わせるのでWest症候群。むしろ、結節性硬化症に合併しているのでWest症候群と言うべき。脳波はHypsarrythmiaが特徴。

結節性硬化症:常優(多くは突然変異)。中枢神経と皮膚にあらゆる症状が見られる。また、網膜、肺、心、腎など多臓器に腫瘤性の変化が見られる(網膜過誤腫、心横紋筋肉腫、腎多発性血管脂肪腫など)。中枢神経症状としてはてんかん(West症候群)、知的障害、脳CT上で側脳室周囲の多発性小石灰化像。皮膚症状としては、多発性大小不同の葉状白斑、両頬部血管線維腫、シャグリーンバッチ、カフェオレ斑などを認める。
a)× West症候群の発作は強直攣縮を特徴とし、シリーズ形成も見られる。
教科書によれば「ミオクロニー様」ではあるけど…。 
bcd)○ 問題文より結節性硬化症に合併したWest症候群なので。
e)× 遅棘徐波複合はLennox症候群の所見。                      


(37)(36)の症例の治療や予後について正しいものはどれか
(a)治療として抗てんかん薬の他にビタミンB6やACTHを使用する
(b)抗ウイルス剤を併用する      (c)心臓腫瘍で死亡する可能性が高い
(d)知能障害を合併する         (e)発作のコントロールは困難である
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】3
(a)○ West症候群では特殊な治療法としてACTH(酢酸テトラコサクチド)やVit.B6(塩酸ピリドキシン)投与がある。 (b)× (c)× (d)○ 正常(10〜20%)〜重度まで様々  (e)○

(38)熱性けいれんに関する記述で正しいものはどれか
(a)日本では小児の0.8%にみられる
(b)単純型熱性けいれんは、好発年齢が6生月-2歳で持続も比較的短い
(c)予防目的としてはジアゼパムの坐薬を使用することが多い
(d)後にてんかんを発症することがある
(e)発作型は全体の約5割の症例で複雑部分発作である
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】4
(a)× 6〜8/100人
(b)○ 単純型とは、高熱時のみで1日に1回、15分以内、全身性けいれん、発達正常、脳波正常、てんかんの家族歴なし、のものをいう。
(c)○ 熱性痙攣を3回以上繰り返す場合には、発熱時(38℃以上)にジアゼパム坐薬を投与する。
(d)○ てんかんへの移行は3%
(e)× ほとんどが全般性強直間代性か全般性強直性けいれんで、焦点性けいれん15%、脱力発作6%

(39)正しい組み合わせはどれか。
(a)Sturge-Weber症候群 一 顔面ポートワイン様母斑
(b)結節性硬化症      一 躯幹の線状・渦状白斑
(c)Hypomelanosis of Ito 一 木の葉様白斑
(d)色素失調症       一線状紅斑性水疱
(e)神経線維腫症(type1)  一 カフェオレ斑
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】3
(a)○ 一側三叉神経第1・2枝支配領域の顔面血管腫portwine stain 反対側の痙攣発作 頭蓋内石灰化陰影
(b)× TS(Bourneville-Pringle病) AD 左右対称性の顔面皮脂腺腫 木の葉様白斑
(c)× 躯幹の線状・渦状白斑  (d)○ 線状紅斑性水疱
(e)○ NF1(von Recklinghausen病) AD cafe-au-lait spot 皮下神経線維腫


(40)Reye症候群について正しいものはどれか
(a)血清アンモニアの高値 (b)低血糖 (c)髄液細抱数増多 (d)尿中アミノ酸の増加
(e)肝脂肪変性
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】2
(a)○ (b)○ AST・ALT・LDH・CKの上昇 APTT・PTの延長 Bilは上昇せず黄疸はみられない
(c)× 髄液の圧上昇のみがみられる 非炎症性であるため、細胞増多はない
(d)× (e)○ 肝・中枢神経の脂肪変性をきたす
*Reye症候群はインフルエンザBや水痘ウイルス感染時にアスピリン投与が誘因となって発祥することの多い脂肪肝を伴う急性脳症であり、30〜40%の致命率である


(41)福山型筋ジストロフィーによく認められるものはどれか
(a)常染色体劣性遺伝の家族歴 (b)多小脳回 (c)関節拘縮 (d)軽度の知能障害
(e)筋緊張亢進
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1
(a)○ AR筋ジストロフィー症には、肢体(LG)型2型、小児筋肢体型、先天性筋ジストロフィーがある
(b)○ 小脳に脳回表層に多数の細かな凹凸を認める多小脳回がみられる
(c)○ 全身の筋萎縮、関節拘縮を来たす
(d)× 高度の知能障害、中枢神経障害を伴う  (e)×


(42)生来健康な6歳の男児が知能低下の進行と頻発するけいれんを認めた。肝脾腫はなく、ガーゴイル様顔貌も認めない。正しいものはどれか
(a)病変の主座は大脳灰白質である可能性が高い  (b)脳波検査を実施すべき症例である
(c)亜急性硬化性全脳炎の可能性もあるので麻疹抗体価を調べる必要がある
(d)男児であることからAdrenoleukodystrophyの可能性は低い
(e)ムコ多糖症である可能性が最も高い
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1
(a)○  (b)○ SSPEであればPSD(periodic synchronous discharge)がみられる
(c)○ SSPEであればCSF及び血清中の麻疹抗体価↑
(d)× ADLはXRであり男児に発症する
(e)× ムコ多糖症ではガルゴイリズムを示し、Morquio症候群を除いて肝脾腫を示す


(43)6歳の男児が明け方、睡眠中に左顔面、舌、咽頭の短いけいれんをおこした。これまでにも一度同じ症状があり、発作中のことは憶えていた。発達や知能は正常で、頭部MRIでは異常を認めなかった。正しいものはどれか。
(a)約半数の例は成人期にも同じ発作をくり返す。 (b)直ちにフェニトインを開始する。
(c)脳波では中心・側頭部に棘波を認める。    (d)棘波は睡眠中に出やすい。
(e)棘波は自然に消失する。
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】5
(a)× BECTは予後良好であり、16歳以降の再発は起こらないといわれている
(b)× カルバマゼピンとバルプロ酸による治療
(c)○ (d)○ 中心・側頭部に棘波を有し、睡眠で増強される
(e)○ 年齢依存性であり、一定年齢後には消失する


(44)2歳の男児が精神運動発達の退行と痙性四肢麻輝の緩徐な進行を呈し、肝脾腫・ガーゴイル様顔貌なく、頭部MRI(T2WI)での両側基底核と白質の広範な高信号域を認めた。次の検査で必要性の高いものはどれか
(a)尿中有機酸  (b)サイトメガロウイルス抗体価
(c)白血球ガラクトセレブロシダーゼ活性  (d)髄液の乳酸とピルビン酸
(e)血清のセルロプラスミンと銅
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】5
(a) 先天性有機酸代謝異常症のスクリーニング(ガスクロマトグラフィーによる)
(b) サイトメガロウイルス先天性感染では、内耳性難聴や肝脾腫、知能障害を来たす
(c) Krabbe病ではガラクトセレブロシダーゼ活性が低下する
(d) ミトコンドリア脳筋症であれば髄液中の乳酸・ピルビン酸が増加する
(e) Wilson病やMenkes病であれば血清銅・セルロプラスミンは低下する


(45)症例は69歳、男性。高血圧、糖尿病の既往があり、近医で内服治療を開始されたが自己判断で中止していた。左上下肢の脱力を自覚し、放置していたが徐々に麻痺が進行し、傾眠傾向にあるため家人が救急車を呼び当院に搬送された。来院時、血圧200/86mmHg、脈拍68/分、整。意識10/JCS、左半側空間無視、左不全片麻痒を認めた。来院時の頭部MR画像(p17)を示す。本症例に関し正しい組み合わせはどれか?
(a)拡散強調画像で高信号域を認め、急性期脳梗塞を疑う。
(b)脳血管造影を行い脳動脈瘤の有無を調べる。
(c)臨床上はラクナ梗塞を最も疑う。     (d)直ちに正常血圧まで降圧する。
(e)内頸動脈の閉塞を認める。
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】2
(a)○ MRIにてhigh intensityの領域をみとめる
(b)× SAHでは70%が脳動脈瘤破裂のため、angioにて4vessels studyを行う
(c)× ラクナ梗塞では原則として意識障害はみられず、MRIにてenhanceが弱く、画像上血管閉塞部位は確認できない
(d)× 急性期に降圧すると虚血症状が増悪する恐れがある
(e)○ MRAにて右内頸動脈の閉塞がみられる
*高血圧・糖尿病の既往があり、発症が緩徐進行性であることより、アテローム血栓性脳梗塞であると考えられる。


(46)症例は66歳、男性。高血圧があり内服治療中であった。起床時より右上下肢が動かしにくいことを自覚した。症状は徐々に進行し、翌日になっても改善しないために当院を受診した。受診時、血圧192/94mmHg、脈拍76/分、整。意識は清明、軽度の右不全片麻摩を認めた。第5病日の頭部CT(p17)を示す。最も考えられる診断はとれか?
1.脳出血  2.心原性脳塞栓  3.高血圧性脳症  4.ラクナ梗塞  5.くも膜下出血

【解答】4


(47)症例は56歳、女性。仕事中に突然倒れ、同僚の問いかけに対し意昧の分からないことを言うため、救急車で当院に搬送された。来院時、神経学的には意識障害、感覚性失語、右不全片麻痒を認めた。本例の発症7日目の頭部CT(p17)を示す。原因となりやすい基礎疾患の組み合わせはどれか?
(a)僧帽弁狭窄症 (b)悪性高血圧 (c)腹部大動脈瘤 (d)洞不全症候群 (e)心房紬動
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】3
(a)○  (b)×  (c)×  (d)○  (e)○ 心原性脳塞栓症の原因


(48)症例は56歳、女性。高血圧と糖尿病にて治療中であった部屋で倒れているところを家人が発見し、呼名に反応なく手足の動きも悪いため救急車で当院に搬送された。来院時、血圧220/11OmmHg、脈拍88/分,整。意識レベルは100/JCS、四肢の不完全麻痺を認めた。来院時の頭部CT(P17)を示す。本症例に関し正しい組み合わせはどれか?
(a)箸明な縮瞳(pinpoint様)を認めるごとが多い。
(b)対光反射は完全に消失する。
(c)自律神経症状として極端な低体温がみられる。
(d)閉じ込め症侯群(locked-in syndrome)を呈することがある。
(e)出血部位として脳出血の中で最も予後の悪いタイプである。
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】3
(a)○ (b)× pin-point pupilはみられるが、対光反射は保たれる
(c)× 高熱となる  (d)○  (e)○


(49)症例は62歳、男性40歳頃より糖尿病を指嫡され、50歳頃より高脂血症も診断されていた。1日20本、40年間の喫煙歴がある。食事中に突然左上肢のしびれ感が出現したが1時間程で完全回復し、翌日当院を受診した。来院時、血圧152/88正mmHg、脈拍72/分,整。右頸部に血管雑音を聴取したが、神経学的には明らかな異常所見老認めなかった。頭部MR FLAIR画像と右総頸動脈血管造影(P17)を示す。本症例に関し正しい組み合わせはどれか?
(a)右頭頂葉に出血性病変を認める。  (b)右総頸動脈に著明な狭窄性病変を認める。
(c)臨床診断は一過性脳虚血発作である。(d)頸動脈内膜剥離術の適応である。
(e)慢性期の降圧は慎重に行う必要がある。
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】4
(a)× TIAによる虚血領域と思われる  (b)○  (c)○
(d)○ CEAの適応は、75歳以下で内頸動脈起始部狭窄が70〜99%、有症候性であること
(e)× 急性期の降圧は慎重に行う必要がある


(50)症例は61歳、男性。高血圧で通院中であったが血圧コントロールは不良であった。日中、頭痛とともに右上下肢の脱力を自覚し、救急車で当院に搬送された。来院時、血圧210/106mmHg、脈拍測分、整、意識は清明であった。来院時の頭部CT(p17)を示す。本症例に関し正しい組み合わせはどれか?
(a)超急牲期の心原性脳塞栓症であり血栓溶解療法を考慮する。
(b)感覚障害が強く慢性期の合併症として頼固な自発痛が残る。
(c)グリセロールによる抗脳浮腫療法を行う。
(d)亜急性期には造影CTで環状増強効果を認めることがある。
(e)高率に失語を合併する。
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】4
(a)× 被殼出血と思われるため、血栓溶解療法は行わない
(b)× 視床出血でみられる  (c)○
(d)○ 発症2〜5wで血腫周辺の新生血管によるリング状増強効果がみられる
(e)× まれに失語・失認などの皮質症状がみられる


(51)症例は26歳、妊娠8ヵ月の女姓。激しい頭痛の後に痙攣発作が出現して来院した。来院時。血圧138/84mmHg、脈拍76/分整。意識レベルは3/JCS、ごく軽度の右片麻簿を認め、頭部CTにて左後頭葉に出血牲梗塞の所見を認めた。本症例に関し正しい組み合わせはどれか?
(a)脳静脈洞血栓症と考えられる。 (b)MR venographyが有用である。 
(c)単鈍CTで静脈洞内にempty triangle signeを認めることがある。
(d)脳浮腫は軽いことが多い。   (e)脳血管撮影は行うべきではない。
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】1
(b)MR venography=MRIによる静脈造影
(c) empty triangle signは造影時にみられる。


(52)下記の各筋肉を支配する神経の組み合わせで正しい組み合わせはどれか。
(a)口輪筋一三叉神経運動路核
(b)舌筋一舌姻神経
(c)上斜筋一滑車神経
(d)下斜筋一動眼神経
(e)上眼瞼挙筋―顔面神経
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】4
(a)口輪筋−顔面神経(b)舌筋−舌下神経(e)上眼瞼挙筋−動眼神経
(c)(d)外直筋−外転神経、上斜筋−滑車神経、それ以外の外眼筋は動眼神経支配


(53)55歳男性5年前より右聴力低下を自覚、半年前より歩行時のふらつきを認め来院した。造影MRI(pI8)を示す。異常が予想される検査として正しい組み合わせを選べ。
(a)頭蓋単純X線検査  (b)カロリックテスト (c)一聴牲脳幹反応 (d)視覚誘発電位 (e)腫瘍マーカー
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】1
【解説】聴神経鞘腫。
(a)患側内耳孔の拡大(c)T-X波間潜時の延長


(54)上記欄53の腫瘍が最も高率に発生するのはどれか。
1.三叉神経 2.顔面神経 3.前庭神経 4.蝸牛締経 5.迷走神経

【解答】3
【解説】頭蓋内の神経鞘腫は内耳神経が95%、そのほとんどが前庭神経より発生する。


(55)60歳女性。5年前より左難聴を自覚しでいる。単純と造影CT(p18)を示す。考えられる疾患はどれか
(a)神経鞘腫 (b)髄膜腫 (c)類上皮腫 (d)くも膜嚢胞 (e)脈絡叢乳頭腫
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】1
【解説】小脳橋角部腫瘍の頻度:@聴神経鞘腫(80%)A髄膜腫(10%)B類表皮腫(3%)


(56)44歳男性。6年前より顔貌が変化し、靴のサイズが大きくなった。造影MRI(p18)を示す。次のうち誤った組み合わせはどれか
(a)heel padの肥厚  (b)満月様顔貌
(c)骨粗鬆症 (d)発汗過多 (e)血中ソマトメジンC高値
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】3
【解説】下垂体腺腫。病歴よりGH産生腫瘍なので、(a)(e)は○。ACTH産生腫瘍では、コルチゾール過剰分泌によりCushing病をきたし、(b)(c)などがみられる。


(57)50歳女性。視力低下をきたし眼科より紹介された。造影CT(pI8)を示す。この患者で次に行うべき検査はどれか。
1.頚部エコー 2.PET 3.MRI 4ガリウムシンチ 5.腫瘍マーカー

【解答】5
【解説】下垂体腺腫による視交叉の圧迫が疑われる。MRIは微小腺腫の検索、術前検査に有効。


(58)転移性脳腫瘍の原発巣の中で多いものを選べ
(a)肺癌 (b)胃癌 (c)甲状腺癌 (d)肝臓癌 (e)乳癌
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】2
【解説】転移性脳腫瘍の原発巣:@肺癌(53%)A乳癌(9%)B消化器癌(胃,大腸,直腸)


(59)19歳男性。視力障害と多尿で発症し、髄液中にHCGの上昇を認めた。Gd造影MRI(p18)を示す。この腫瘍で正しいものを選べ
(a)高齢者に多い。 (b)髄液中のVMAの上昇を認めることが多い。 
(c)小脳半球に好発する。(d)放射線治療が有効である。
(e)脊髄に播種することがある。
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】5
【解説】胚細胞腫。小児(10〜20歳)に多く、男性に優位。発生部位は松果体近傍部に50%、鞍上部に30%。腫瘍マーカーでは、AFP、HCGが病勢に一致して増減する。胚腫は放射線感受性が極めてよい。


(60)頭痛と嘔吐で発症した3歳男児のGd造影MRI(p18)を示す。鑑別診断にあがる疾患を選べ
(a)髄芽腫 (b)上衣腫 (c)脳膿瘍 (d)神経鞘腫 (e)悪性リンパ腫
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】1
【解説】小児の脳腫瘍:@星細胞腫(20%)A髄芽腫(12%)B胚細胞腫瘍(10%)       C頭蓋咽頭腫(9%)D上衣腫(5%)
脳膿瘍はMRIにて、T1で中心部low,辺縁high densityとなる。


(61)記銘力障害で発症した67歳女性のGd造影MRI(p18)を示す。入院時、髄液中のβ2ミクログロブリンと可溶性IL2受容体が上昇していた。この疾患についで正しいものを選べ
(a)Gd造影で増強効果のある部分は壊死巣である。
(b)ステロイド投与で縮小することがある。    (c)放射線療法は有効である。          (d)手術前に栄養血管の塞栓術を行う。        (e)若年者に発生することが多い。
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】3
【解説】悪性リンパ腫。手術、放射線、CHOP療法などの化学療法による治療が一般的である。腫瘍の80%は放射線感受性が高く、40%でステロイドによる腫瘍縮小消退効果がある。


(62)9歳男児。次第に進行する両上肢の脱力を主訴に来院した。頚椎レベルのMRI画像(p18)を示す。以下のどれが鑑別にあがるか。
(a)髄膜腫 (b)神経鞘腫 (c)上衣腫 (d)星細胞腫 (e)脂肪腫
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】4
【解説】脊髄腫瘍:胸髄(60%)、腰髄(20%)、頸髄(20%)、仙髄(1%)
硬膜外腫瘍 30% 転移性腫瘍(乳癌、前立腺癌、肺癌、リンパ腫)多い
硬膜内髄外腫瘍 50% 良性腫瘍(神経鞘腫>髄膜腫)多い
髄内腫瘍 20% 神経膠腫(脳室上衣腫>星細胞腫)多い


(63)脊髄空洞症と関連がある病変はどれか。
(a)頸椎椎間板ヘルニア (b)頸稚後縦靭帯骨化症 (c)頸椎黄色靱帯骨化症
(d)キアリ奇形     (e)頚髄髄内腫瘍
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】5
【解説】脊髄空洞症の原因:原発性、延髄腫瘍、結核性髄膜炎、Chiari奇形


〔64)50歳女性夜間安静中に突然頭痛を自覚し嘔吐した。入院時、意識清明で、神経学的に異常を認めない。血圧180/110Hg。入院時のCTスキャン(p18)を示す。この疾患について正しいものはどれか。
1.次に行うべき検査制要椎穿刺である。 2.Hunt&Kosnikの重症度分類でGrade4の状態である。
3.CT所見でFisher group4である。   4.降圧剤を投与し、保存的に経過を観察する。
5.原因として脳動脈瘤破裂によるものが80%を占める。


【解答】5
1× 再出血や脳ヘルニアを来たす可能性があり、CTにて診断できないがSAHを強く疑うときのみ行う。本症例では画像より明らか。
2× 脳動脈瘤破裂の重症度分類。意識清明で神経学的所見なくGrade2であるが、高血圧がありGrade3となる。
3×? 脳動脈瘤破裂後の血管攣縮を予測するための分類。Group1:CTで所見なし(30%) Group2:クモ膜下腔にびまん性に1mm以内の出血(40%) Group3:クモ膜下腔に1mm以上の厚い出血(100%) Group4:クモ膜下出血は所見なしor軽度で、脳内or脳室内に血腫を伴うもの(40%)
4× Hunt&Kosnik分類でGrade0〜3はope適である。
5○? 一番多いのは確か。授業プリント含め文献によって50〜75%の開きがある。80%が正しいのかわからないが、こういう選択肢は普通○でしょう。


(65)破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血の患者が,開頭動脈瘤クリッピング術後10目目に意識障害をきたした。必要な検査を選べ。
(a)心電図 (b)頭部CT (c)脳血管撮影 (d)脳波 (e)腰椎穿刺
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)


【解答】3
【解説】脳動脈瘤によるSAHに続発する病態としては、再出血・血管攣縮・正常圧水頭症がある。10日目という経過から、血管攣縮、再出血が疑われる。
(a)× SAH後にカテコラミンによる心筋症を来たし、ST-T変化が見られることもあるが、
まず考えるべきは血管攣縮と再出血だろう。
(b)○ 再出血を疑う。 (c)○ 血管攣縮を疑う。エコーによる補助診断行うことも。
(d)× (e)×


(66)56歳男性。脳血管撮影の正面像と側面像(p19)を示す。この疾患について正しいものどれか。
1.大きい病変ほど出血し易い。 2.治療は外科的治療のみである。 3.出血は20才歳台に多い。
4.高血圧の既往のある者が多い。5.中大脳動脈が流入動脈である。


【解答】2?
【解説】画像で黒くつぶれているところがよくわかりませんでしたが、AVMでしょう。
(a)× 小さいものほど出血しやすい。(b)○ 手術による全摘が基本。
(c)×? year noteによると、AVMによる出血の好発は20-40歳代、「病態生理できった」によると30歳代となっています。 (d)× 関係なし (e)×? 好発部位は中大脳動脈領域ですが、画像では前大脳動脈(?)。


(67)53歳男性。高血圧の麗往がある。突然の左片麻痺を自覚した。入院時血圧220/120mmHg。入院時のCTスキャン(p19)を示す。この疾患について正しい組み合わせはどれか。
(a)右共同偏視を認めることが多い。  (b)両側縮瞳していることが多い。  
(c)視床出血である。 (d)脳室拡大を認める。  (e)早急に降圧をするべきである。
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)


【解答】2
【解説】高血圧の既往、突然の片麻痺があり、画像からも被殻出血とわかる。
(a)○ 被殻出血では病巣側への共同偏視が見られる。(b)× 縮瞳はない。(c)×
(d)× (e)○? 降圧は必要だが、脳虚血を防ぐため「慎重に」行う。


(68)十過性脳虚血発作で発症した63歳男性の総頸動脈撮影(pI9)を示す。この症例に対する外科治療として適切なものはどれか。
1.浅側頭動脈中大脳動脈吻合術 2.中硬膜動脈中大脳動脈吻合術
3.内頸動脈血栓内膜剥離術   4.EDAS(encephalo-duro-arterio-synangiosis)
5.EMS(encephalo-myo-synangiosis)

【解答】3
【解説】1× 100%狭窄で適応となる。 2×? 3○ TIAで外科治療ならまずこれ。70%以上の狭窄or70%以下でも潰瘍を伴う例で適応となる。 4× もやもや病の外科治療。5× もやもや病の外科治療。


(69)6歳女児。ハーモニカを吹いていて突無左上下肢の麻簿を発症した。左右脳血管撮影正面像(p19)を示す。診断はどれか。
1.動静脈奇形 2.髄膜腫 3.海綿状血管腫 4.脳底動脈瘤 5.もやもや病


【解答】5
【解説】年齢、病歴、画像から診断できる。


(70)右ラクナ梗塞で発症した56歳女性の右総頸動脈巌影正面および側面像(p19)を示す。血行再建術を考慮する上で適切な検査の組み合わせはどれか。
(a)脳波 (b)PET(positron emission tomography)
(c)SPECT(single photon emission computed tomography) (d)RI脳槽造影
(e)アミタールテスト(和田テスト)
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)


【解答】4
【解説】血流を見たいので(c)か(d)でしょう。(a)は関係ないし(b)も血行再建には関係なさそう。
(d) のアミタールテストは、てんかん手術の際に優位半球の同定をするための検査で、左右の頚動脈にアモバルビタールという麻酔薬のようなものをいれ、左右どちらに入れたときに言葉が話せなくなるのかを見ます。


(71)交通事故による頭部外傷の21歳男性で、救命救急センター搬入時はJCS30、処置中に200・に低下した。右瞳は散大し、対光反射はない。角膜反射は微弱で自発呼吸は不整。除脳硬直姿勢で両側Babinski徴候陽性である。頭部CT所見(p19)の正しい組み合わせはどれか。
(a)急性硬膜外血腫 (b)急性硬膜下血腫 (c)脳挫傷 (d)陥没骨折 (e)気脳症
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)


【解答】3
(a)× CT上凸レンズ型のhigh density areaを呈する。(b)○ CT上三日月型のhigh density areaを呈する。(c)○ CT上low density with high density spotを呈する。
(d),(e)× 認められない。


(72)76歳男性。約2ヶ月前に転倒し頭部を打撲した。1週間ほど前より痴呆、歩行障害、右片麻痺、尿失禁を生じるようになった。頭部CT診断(p19)で正しいものはどれか。
1.急性硬膜下血腫 2.慢牲硬膜下血腫 3.急性硬膜外血腫 4.脳挫傷 5.びまん性軸索損傷


【解答】2
【解説】病歴からも慢性硬膜下血腫である。画像上、古い血腫を示す三日月型のlow density areaと、その中に新しい血腫であるhigh density areaを認める。


(73)26歳女性。4歳位から眼前に光りが見えた後に意識消失を伴う全身けいれん発作を起こすようになった。難治性となり、外科的治療を目的として受診した。左三叉神経第1枝領域に血管腫がみられた。頭部単純CT(p19)示す。診断はどれか。
1.結節性硬化症 2.von Recklinghausen病 3.Sturge-Weber症候群
4.von Hippel-Lindau病 5.先天性Toxoplasma症


【解答】3
1× 頭蓋内石灰化が見られる。左右対称性の顔面皮腺腫、再発性痙攣発作、精神発達遅滞が特徴的。   2× 神経線維腫症1型。皮膚のCafe-au-lait spotが有名。
3○ 顔面一側の三叉神経第1枝、第2枝領域の血管腫。脳室周辺に石灰化が見られる。
4× 小脳にできる血管芽腫から小脳失調を来たす。5× 小頭症を来たす。


(74)4歳女児。生下時より腰背部に桑らかい皮下腫瘍がみられた。腰髄MRI、T1強調画像矢状断(p19)を示す。以下のうちどのような病態を考えなければならないか。
(a)脊髄髄膜瘤 (b)脊髄脂肪腫 (c)脊髄係留 (d)二分脊椎 (e)脊髄被裂
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)


【解答】4
【解説】皮下の脂肪腫が脊髄に連続していて、そのために脊髄の上昇が妨げられ、脊髄係留を起こしている。


(75)23歳男。熱性けいれん重積状態の既往がある。I2歳頃より意識減損し、口をもぐもぐさせ、両手で自分の衣服をまさぐり、その後全身けいれんとなる発作を起こすようになった。種々の薬物療法でも発作のコントロールが不良であるため来院した。発作焦点となる部位に最も近い脳室はどれか。
1.側脳室前角 2.側脳室後角 3.側脳室下角 4.第3脳室 5.第4脳室


【解答】3
【解説】年齢や自動症があることから、精神運動発作(複雑部分発作)が考えられる。EEGでは側頭葉を中心にspike&waveが見られる。側頭葉に最も近いのは側脳室下角である。


(76)64歳女性。5年前から右手の震えが出現し、動作が緩漫になってきた。当初Lドーパの服用で症状は改善していたが、最近薬効時關が短くなってきた。薬効が消失すると四肢の振戦とすくみ足が薯明になる。この症例に対する外科治療として適切なものはどれか。
(a)視床下核刺激療法 (b)淡蒼球内節刺激療法 (c)捕捉運動野刺激療法
(d)一次感覚野刺激療法(e)内包後脚凝固術
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)


【解答】1
【解説】Parkinson病の外科的治療には、電気凝固破壊術と深部脳刺激(deep brain stimulation;DBS)がある。前者は淡蒼球内節、視床VL核、視床Vim核を、後者は淡蒼球内節、視床下核、視床Vim核をtargetとしている。DBSは、上記場所に電極を、鎖骨下前胸部にパルス発生器を埋込み、振戦や固縮が起こると患者がスイッチを押して電気刺激を与えるという、ペースメーカーのようなもの。


(77)症例は24歳、女性。2年前に右手足のしびれ感を自覚したが、2週間ほどで消失した。半年前に複視が出現したが、一ヶ月ほどで軽快した。5日前に左眼の視力低下がおこり、改善しないため入院した。この患者の診断に直ちに必要な電気生理学的検査はどれか。
(a)事象関連電位(P300) (b)運動誘発電位検査脾(MEP) (c)視覚誘発電位(VEP)
(d)体性感覚誘発電位(SEP) (e)聴覚脳幹誘発電位(ABR)
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)
 
【解答】 5.(c)(d)(e)
【解説】症状の時間的・空間的多発性から多発性硬化症が疑われる。MSではABR,VEP,SEP等の異常、特にVEPは約80%に異常があり診断的意義がある。


(78)振戦について、正しい組み合わせを選べ
(a)甲状腺機能亢進症一安静時振戦   (b)本態性振戦一姿勢時振戦 (c)パーキンソン病 -- 安静時振戦   
(d)肝性脳症--羽ばたき振戦 (e)生理的振戦一安静時振戦
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】 4.(b)(c)(d)
【解説】甲状腺機能亢進症、生理的振戦は姿勢時振戦。


(79)25歳、男性。感冒様症状、下痢のあと10日経って、四肢の運動障害が出現したため緊急入院となった。明らかな感覚障害はない。本症例の筋電図所見として正しいものはどれか
(a)針筋電図で運動単位の減少がみられる (b)安静時に陽性鋭波positive sharp waveが出現する
(c)安静時に線維束攣縮電位 fasciculation potentialが出現する
(d)未鞘神経伝導率度検査で運動神経伝導遠度が低下する (e)F波の出現が低下する
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】 5.(d)(e)
【解説】経過からGuillain-Barre症候群が疑われる。末梢神経の脱髄性疾患なので、(d)伝速検査で運動神経伝導速度の低下とF波の出現率が低下する。F波は運動神経線維が刺激され、その部位からの逆行性インパルスにより脊髄前角運動ニューロンが発火し、順行性インパルスが生じた結果もたらされる筋電位。末梢神経、ことに髄鞘に広範な障害を来たす疾患、Guillain-Barre synやCIDP、CMT病、DM性ニューロパチー等で認められる。


(80)55歳、男性。四肢遠位筋の萎縮が半年前より出現し、少しずつ進行してきた。最近、構音障害や嚥下困難がみられるようになったため入院。明らかな感覚障害や膀胱直腸障害は認めない。本症例の診断を進めて行く上でまず行うべき検査はどれか。
(a)脳MRI検査 (b)脳脊髄液検査 (c)運動誘発電位(MEP)検査
(d)針筋電図検査 (e)テンシロン検査
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】4.(c)(d)
【解説】経過からALSが疑われる。(c)MEPで運動神経の障害部位の検索、(d)針筋電図で筋の萎縮が神経によるものか、筋疾患によるものかの鑑別を行う必要がある。


(81)48歳女性。5-6年前から年に2回程度、急に意識消失し、全身けいれんを超こすようになった。患者は発作中のことは全然覚えていない。発作以外の時は全く正常に生活できる。本症例のてんかんの臨床病型はどれか。
1.単純部分発作 2.複雑部分発作 3.欠伸発作 4ミオクロニー発作 5.全般強直間代発作

【解答】 5. 
【解説】発作中のことは覚えていないので、意識障害を伴わない1.単純部分発作、4.ミオクロニー発作は否定的。痙攣を起こしているから3.欠伸発作は否定的。また欠伸発作は小児に多いことからも否定的。2.複雑部分発作は意識障害を伴うが、ほとんどに自動症を伴うので否定的。


(82)症例(81)の脳波所見を図に示す(P20)。正しいのはどれか
1.右半球牲棘徐波 2.右側頭部棘徐波 3.両側全般性棘徐波 4.左半球性棘徐波 5.左側願部棘徐波

【解答】 3?.
【解説】両側大脳半球に棘徐波が認められる。


(83)症例(81)の治療薬として適当な組み合わせはどれか
(a)ACTH (b)フェニトイン (c)バルプロ酸 (d)カルバマゼピン (e)ジアゼパム
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】 3.(b)(c)
【解説】部分発作にはCBZ、強直間代発作にはVPAやPHT、欠伸発作にはESMやVPA、ミオクロニー発作にはVPAが用いられる。


(84)尺骨神経低位麻痺に関して正しいどれか
(a)骨間筋の萎縮  (b)MP関節伸展障害  (c)母指、示指の屈曲障害
(d)Froment sign陽性  (e)指の内・外転障害
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)
 
【解答】3.(a)(d)(e)
【解説】尺骨神経麻痺では手の尺側の感覚障害、指の開閉運動障害、Froment徴候が認められ、鷲手変形(MCP関節過伸展、PIP,DIP関節屈曲)となる。Froment徴候とは母指の内転が出来ないために、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることをいう。


(85)末梢神経損傷について正しいものはどれか
(a)神経の再生速度は平均1日1oである。
(b)切断部の近位および遠位側の軸索はWaller変性に陥る
(c)神経断裂部に少しでも間隙が生じた場合は、神経移植を行った方がよい
(d)neurapraxiaでは自然回復が期待できる
(e)機能回復の程度は、神経の種類により異なる。
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】 3.(a)(d)(e)
【解説】(b)Waller変性に陥るのは遠位部のみ。(c)断裂部分が短ければ縫合してやり、長ければ神経移植が必要となる。


(86)末梢神経障害について誤っているものはどれか
(a)手根管症侯群は正中神経の障害である
(b)尺骨神経麻痺では鷲手が出現する
(c)前骨間神経麻痺では環指、小指の届曲が不能となる
(d)腕神経叢麻痺引き抜き損傷は、神経縫合の適応となる
(e)上位型腕神経叢麻痺では肩関節の挙上が困難となる
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)
 
【解答】1.(a)(b) 
(c)前骨間神経障害では感覚障害はなく、長母指屈筋、示指深屈筋、方形回内筋の麻痺が生じる。 (d)引き抜き損傷は手術が困難。保存的治療を行い、機能訓練を行うしかない。
(e)上位型(C5,C6損傷)では、肩甲帯挙上と肩関節の外旋、肘関節の屈曲と前腕の回外が不能になる。


(87)68歳女性。関節リウマチにて24年間ステロイド投薬治療を続けている。1年前より頚部痛及び腰痛があったが、最近に下肢のしびれ、脱力が生じてきた。現在下肢知覚及び筋力低下のため歩行不能であるが、ベッド上で膝立にできる。次のうち正しいものを選べ
(a)頚椎環軸椎亜脱臼は、環椎横靱帯の断裂を伴っている
(b)頚椎環軸椎亜脱臼は、頚椎前屈位で脱臼は増悪する
(c)現在麻痺レベルとしてはFrankel Cである
(d)椎体圧潰による脊髄麻痺は、通常転倒などの明らかな外傷歴が存在する
(e)第1腰椎の圧潰に伴う麻痺であれば、通常下肢反射は亢進する
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】3.(b)(c) 
【解説】(a)リウマチ性脊椎炎では靭帯の弛緩により固定が悪く不安定で、前屈位の方が後屈位より目立って環椎軸椎間距離が開く。(d)骨粗鬆症を基盤として軽微な外傷(転倒)や、ときには外傷の既往なく椎体の圧迫骨折が起こる。(e)腰椎部では馬尾となっているため、通常脊髄症状はなく、根症状のみ。


(88)症例(87)は精査の結果、第1腰権の椎体圧潰にともなう脊髄圧迫が認められた。治療方針につき正しいものを選べ。
(a)早急にステロイドを中止し、抗リウマチ薬を考慮する
(b)積極的に座位をとらせ、リハビリを開始する
(c)硬性コルセットやギプスにて保存的に治癒する可能性が高い
(d)腰椎牽引療法は殆ど意味がない
(e)環軸椎亜1脱臼が合併していた場合、同部の症状がなければ通常手術を行わない
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)
 
【解答】 2?.(a)(e)
(b)脊髄圧迫症状があるので安静にした方がいいのでは?
(c)痛みが強いときはコルセット(軟性コルセット、バンド)が有効。圧潰を止める意味の硬性コルセットは治療期間を長引かせる結果となるので注意が必要。また、脊髄圧迫の症状があるので保存的治療では治癒は望めない。
(e)軽症で疼痛が主な症例に対しては頚椎カラーの装着。環軸椎の不安定性が増しているものには、halo-vestを装用させる。脊髄症状を起こしているもの、環軸椎亜脱臼が高度のものに対しては脊椎固定術を行う。


(89)核医学を用いた脳機能画像所見について正しいものの組み合わせを選べ
(a)アセタゾラミド(Diamox)負荷は閉塞牲脳血管障害の評価に用いられる
(b)パーキンソン病では線条体のF-18DOPA集積が増加する
(c)Luxury perfusionは亜急性期梗塞でみられ、酸素摂取率が増加する
(d)アルツハイマー型痴呆では側頭・頭頂葉のF-18FDG集積が低下する
(e)脳梗塞による対側小脳の血流低下は脳代謝の低下を反映したものである
1.(a)(b)(c) 2.(a)(b)(e) 3.(a)(d)(e) 4.(b)(c)(d) 5.(c)(d)(e)

【解答】3 2003年度卒試88.と全く同じ。


(90)83才,女性.突然の左片麻痺と意識障害が出現発症3時間後のMR拡散強調画像と第3病日の単純CTを図に示す(p20)。最も考えられる疾患名の組み合わせはどれか
(a)アテローム血栓性脳梗塞 (b)出血性脳梗塞 (c)心原性脳塞栓症
(d)高血圧性脳出血 (e)脳挫傷
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】3or4?
(a)×アテローム血栓性脳梗塞は、発症が緩徐で階段状に進行することが多い。
(b)(c)(d)CTでhigh densityな領域を認めるので出血性の病変が存在すると考えられる。心原性脳塞栓は出血性脳梗塞を生じやすい。 (e)×


(91)次の文を読み、問いに答えよ。
55歳の男性。転倒し左前頭部を打撲し、前頭部挫創にて2針縫合を受けたが、意識消失はなく、その後は普通に生活していた。受傷41日目に嘔吐し頭痛を訴え、その6時間後には昏睡状態となり、翌日死亡した。ホルマリン固定脳の割面を示す(p21)。この疾患について正しいものはどれか。
(a)急牲硬膜外血腫がある (b)左側の天幕切痕ヘルニアを生じている
(c)高齢者に多くみられる疾患である (d)軽微な頭部外傷ではおこらない
(e)治療は開頭術にて中硬膜動脈からの出血を止める。
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】3
(a)×慢性硬膜下血腫である。 
(b)○テント切痕を越えて間脳・中脳が下方に偏位している。
(c)○中高齢、男性、大量飲酒者に多い。 (d)×本人が記憶しない程度の外傷でもおこる。
(e)×治療の原則は外科的な血腫吸引である。脳への圧迫所見がなく、症状も軽微で血腫が小さいものでは抗脳浮腫薬などのみによる保存療法を行う。


(92)60歳の女性。1年前より声が出にくくなり、4ケ月前より食べものが飲み込みにくくなった。手の筋力が徐々に低下し、細かい運動が困難となった。上下肢ともに深部腱反射が亢進し、感覚は正常。末梢神経伝導遠度は上下肢ともに正常。4日前より呼吸困難が急速に増悪し、酸素が投与されたが意識が混濁し死亡した。胸部レントゲンには異常陰影を認めなかった。この疾患の病変部位として正しいものはどれか。
(a)舌下神経核の変性 (b)骨格筋の筋原性萎縮 (c)動眼神経核の変性
(d)脊髄神経節の変性 (e)脊髄前角の変性
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

(93)(92)の症例の呼吸不全に関して正しいものは
(a)延髄網様体の変牲 (b)声帯の麻痺 (c)腕炎の増悪
(d)呼吸筋の萎縮 (e)高炭酸ガス血症
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【92解答】2
(a)○舌筋の麻痺による嚥下障害と考えられる。
(b)×骨格筋が侵されると深部腱反射は低下し、筋力低下は近位筋優位に見られる。
(c)× (d)×感覚は正常なので後根にある脊髄神経節は冒されていない。
(e)○上肢の筋力低下、四肢深部腱反射の亢進から上位運動ニューロンの障害を考えるが、前角細胞に変性が限局する場合もこれらの症状を説明できる。

【93解答】2?
(a)○延髄網様体腹外側部には呼吸や循環に関与する神経細胞群が存在しており、呼吸中枢あるいは血管運動中枢として重要である。
(b)×?反回神経(迷走神経枝)の障害による声帯の麻痺が呼吸困難の原因となることがあるが、症状が急速に増悪することは考えにくい。
(c)?肺炎? (d)×神経原性の呼吸筋の萎縮で呼吸困難は急速には増悪しない。 (e)○


(94)60歳の女性。下垂体腫瘍摘出後、副腎皮質ホルモンの補充療法を受けていた。発熱、悪心、嘔吐、倦怠感が出現、薯明な低ナトリウム血症(117mEq)、低浸透庄血症をみとめた。輸液、ステロイド投与がなされた。2日後の検査で血清Na値が161mEq/lとなり、意識レベルが急速に低下し、昏睡状態と弛緩性四肢麻痺をきたした。病変の主座と考えられるのはどれか。
1.大脳皮質 2.視床下部 3.視床 4.橋 5.延髄

【解答】2
【解説】下垂体腺腫の浸潤による視床下部症候群だと考えられる。視床下部内には、ある機能を調節する刺激系と抑制系が隣合わせに存在するため、かすかな病変部位の差によって相反する臨床症状が出現する場合がある。また急性期には刺激されていたニューロンが慢性化に伴って破壊され急性期とは逆の臨床所見を示すこともある。(新臨床内科学 内分泌疾患 間脳・下垂体機能異常の項を参照)


(95)75歳の男性。2年半前より振戦、体動不良出現。3ケ月前に転倒し、大腿部を打撲し起立不能となった。その後、筋強直、無動が薯明となり、腕炎にて死亡した。剖検脳の中脳黒質は退色していた。黒質の組織をカラー図にしめす。(H-E染色、p21)。細胞内に赤く染まる円形の封入体がみられた。この疾患について正しいものはどれか。
(a)小脳の変性を合併することが多い (b)大脳基底核の神経細胞が脱落する
(c)大脳基底核のドーパミン濃度が低下している
(d)橋の青斑核や延髄の迷走神経背側核にも同様の封入体がみられる
(e)自律神経系はおかされない
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】4 2003年度卒試95.とほぼ同じ。
【解説】パーキンソン病(あるいはParkinsonism)についての問題。
(a)×パーキンソン病では、小脳病変つまり運動失調症状は認めない。
(e)×錐体外路症状以外に、便秘、起立性低血圧、排尿障害などの自律神経症状を認める。


(96)25歳、男性。口渇および多尿が出現し、全身倦怠感も出現した。ついで射精ができなくなり、徐々に恥毛も薄くなった。頭部CTにてトルコ鞍上部腫瘍と脳室内播種が指摘された。化学療法(カルボプラチン、エトポシド)にて腫瘍が消失した。腫瘍生検の組織像を図に示す(H-E染色、カラーページp21)。この腫瘍の診断名はどれか
1.下垂体腺腫 2.頭蓋咽頭腫 3.胚腫(ジャーミノーマ) 4.ラトケ嚢腫 5、髄膜腫

【解答】3 2003年度卒試96.と全く同じ。


(97)成人の脳腫瘍の組織像を図に示す(H-E染色、カラーぺージp21)。クロマチンに富んだ核を有する巨細胞が多数みられる。この疾患ついて正しいものはどれか
(a)血行性転移をきたしやすい (b)髄膜から発生し、腫瘍の境界は明瞭である
(c)血管内皮細胞の増殖を伴うことが多い
(d)第10番染色体の欠損ないし部分欠損がみられる  (e)小脳が好発部位である
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】4 2003年度卒試97.とほぼ同じ。
【解説】"成人"、"クロマチンに富む巨細胞"、核の大小不同から、膠芽腫についての問題。
(a)×浸潤性増殖が顕著。クモ膜下腔や脳室に播種性に増殖することも多い。
(b)×髄膜腫のこと。髄膜腫は、脳腫瘍のなかで神経膠腫(30%)に次いで多い(20%)。
(c)○血管内皮細胞の増殖により腎の糸球体係蹄様構造(glomerular structure)を呈する。
(d)○ (e)×好発部位は成人では大脳半球。小児では脳幹部。


(98)Wernicke脳症について正しいものはどれか(カラベージp21)
(a)図の点状出血を示している箇所は海馬である
(b)Thiamineが欠乏している
(c)健忘、作話がみられる
(d)Korsakoff症候群とは障害部位が異なる
(e)眼振や眼球運動障害は稀である
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】3
(a)×海馬は側頭葉内側面に位置する。Wernicke脳症では障害されない。
(b)○Thiamine=ビタミンB1。Wernicke脳症は慢性的なチアミン欠乏によって生じる中枢神経障害である。低栄養状態や偏食によって自然発生する一方で、チアミンを含まない糖質の投与によって体内のビタミンB1が急激に消費されてしまい、アルコール性や医原性のWernicke脳症が生じる。
(c)○(d)×Wernicke脳症の病変部位は、左右対称性に出現する視床内側部、視床下部と乳頭体、中脳水道周囲灰白質と橋被蓋、小脳虫部病変で、血管増生や小出血を伴う。Korsakoff症候群は、作話・逆行性健忘・失見当識・記銘力障害を4主徴とするWernicke脳症の後遺症の一つなので、障害部位は同じである。
(e)×外直筋優位の眼球運動障害をしばしば認める。


(99)70歳の女性。8ケ月前より眼がみえにくく字が書きにくくなった。その1ケ月後に入院、左同名半盲、空間失認、歩行障害を指摘された。ついでミオクローヌス、失調症状が出現し、発症5ケ月目に無動性無言状態となり死亡した。剖検にて脳はびまん性に萎縮していた。大脳皮質の組織像を図に示す(H-E染色、カラーぺージp21、左:H-E染色、右:GFAP染色)。この疾患について正しいものはどれか
(a)有病率は1万人に1人前後である
(b)べ一タ蛋自からなるアミロイドが蓄積している
(c)GFAP染色陽性の細胞はミクログリアである
(d)脳波でperiodic synchronous dischargeをみとめる
(e)診断には脳組織のWestern blot法が有用である
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】5 2003年度卒試99.とほぼ同じ。
【解説】CJDについて。病理所見は神経細胞の変性・脱落と海綿状変性と呼ばれる無数の空胞形成。
(a)×有病率は、世界共通で百万人に一人。
(b)×β蛋白(Aβ)はアミロイド前駆体蛋白の一部分で、Alzheimer病における病理所見の一つである老人斑に沈着している物質である。
(c)×GFAP(グリア繊維性酸性蛋白)染色で褐色に染色される陽性細胞はアストログリア。
(d)○CJDの診断には脳波とMRIが有用である。脳波では特有の周期性同期性放電periodic synchronous dischargeを認める。MRIでは拡散強調画像が有用で、発症早期から大脳皮質や基底核などの灰白質に高信号病変を認める。
(e)○Western blot法で脳組織にプリオン蛋白の免疫反応を認めれば、確定診断となる。

(100)正しいものはどれか
(a)モヤモヤ病は脳底動脈から閉塞がはじまる (b)Weber症候群は椎骨動脈の閉塞による
(c)閉じ込め症候群(locked-in syndrome)は両側内頚動脈血栓症による
(d)高炭酸ガス血症では脳血流量が増加する
(e)被殻出血は中大脳動脈からの穿通枝の破綻による
1.(a)(b) 2.(a)(e) 3.(b)(c) 4.(c)(d) 5.(d)(e)

【解答】5 2003年度卒試100.と一部重複。
(a)×Willis動脈輪の閉塞によって生じる。
(b)×Weber症候群とは、中脳腹内側病変(大脳脚、動眼神経根)で、障害側の動眼神経麻痺と対側の顔面・舌を含む痙性片麻痺が起こるものをいう。上交代性片麻痺とも呼ばれる。片麻痺は大脳脚の錐体路障害によるもので、病変が黒質まで及ぶと対側のParkinsonismも出現する。動眼神経麻痺は神経根障害による。脳血管障害とくに脳梗塞、動脈瘤、腫瘍で生じる。脳梗塞による場合は脳底動脈-後大脳動脈移行部より分岐する上正中中脳枝または下正中中脳枝の閉塞に起因する。椎骨動脈の閉塞によって生じるのはWallenberg症候群(延髄外側症候群)。
(c)×閉じ込め症候群は、上位運動ニューロンの両側障害により顔面や四肢が麻痺し発語不能な状態となる症候群。一見、無動無言症に似ているが、本質は意識障害ではなく運動障害である。睡眠リズムは保たれ、まばたきや垂直方向の眼球運動による意志疎通は可能である。脳幹腹側の広範な病変によって生じ、多くは脳底動脈の梗塞、稀に橋出血や腫瘍による。
(d)○血管中膜平滑筋細胞内CO2↑⇒炭酸脱水素酵素によりH+↑⇒pH↓⇒血管拡張⇒脳血流増加
(e) ○脳出血の50%は被殻出血で、30%は視床出血である。双方ともに中大脳動脈の線条体枝からの出血による。残りは10%が脳底動脈の橋枝からの出血による橋出血で、10%が各小脳動脈の皮質枝からの出血による小脳出血である。


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