皮膚 平成14年度概説試験

問題用紙はA4で表紙を含め8枚。120分。

問題1.以下の設問に対し1〜5のうち1つを選び解答欄に記入せよ。
1)誤りを選べ。
1.皮膚の基底膜は表皮と真皮の境界部にある。
2.天疱瘡は抗デスモゾーム抗体による自己免疫性水疱症である。
3.類天疱瘡は抗ヘミデスモゾーム抗体による自己免疫水疱症である。
4.掌せき膿疱症では時に肋鎖関節痛・腰痛を伴う。
5.角層下膿疱症では基底膜部に膿疱が形成される。
解答 5
解説 4/12、4/23授業プリント
5…× 膿疱は表皮内に白血球が集積したもの。

2)誤りを選べ。
1.天疱瘡では表皮内に水疱が形成される。
2.類天疱瘡では表皮・真皮境界部に水疱が形成される。
3.扁桃炎や歯根炎などに続発して掌蹠膿疱症が発症することもある。
4.先天性表皮水疱症にはステロイド内服が有効であることが多い。
5.天疱瘡では通常血中に抗デスモゾーム抗体が検出される。
解答 4
解説 4/23授業プリント
4…× ステップP178。治療は対症療法のみ。

問題2.以下の設問に対しa〜eのうち1つを選び解答欄に記入せよ。
1)アトピー性皮膚炎について誤っているものはどれか。
a)青年期以降に発症することもある。
b)ヘルペス感染症が合併しやすい。
c)血清IgEの上昇することもある。
d)白内障の合併に注意する必要がある。
e)確定診断には皮膚生検が必要である。
解答 e
解説 4/16授業プリント
e…× 診断には必ずしも検査は必要ない。

2)ニコルスキー現象が陽性を示すものはどれか。
1.尋常性乾癬
2.類天疱瘡
3.扁平苔癬
4.天疱瘡
5.Toxico epidermal necrolysis(TEN)
a)1,2  b)1,5  c)2,3  d)3,4  e)4,5
解答 e
解説 他に尋常性天疱瘡も陽性。
4…○ 4/23授業プリント。
5…○ ステップP163。

3)皮膚のLangerhans細胞について正しいものはどれか。
1.骨髄由来である。
2.樹枝状の細胞である。
3.テニスラケット様のBirbeck顆粒をもつ。
4.抗原提示機能をもつ。
a)1,3,4のみ  b)1,2のみ  c)2,3のみ  d)3,4のみ  e)1〜4すべて
解答 e
解説 4/12、H15問1の2)より。

4)直接鏡検(KOH標本)が診断的価値のある疾患はどれか。
1.癜風
2.疥癬
3.単純性ヘルペス
4.梅毒
5.白癬
a)1,2,3  b)1,2,5  c)1,4,5  d)2,3,4  e)3,4,5
解答 b
解説
 1…○ ステップP365。マラセチアが原因。
 2…○ ステップP371。
 5…○ ステップP358。

5)PUVA療法(Psoralen投与+長波長紫外線照射)が用いられる皮膚疾患はどれか。
1.尋常性白斑
2.尋常性乾癬
3.掌蹠膿疱症
4.菌状息肉症
a)1,3,4のみ  b)1,2のみ  c)2,3のみ  d)4のみ  e)1〜4すべて
解答 e
解説
 1…○ ステップP249より。PUVA療法が基本。
 2…○ 4/21授業プリント。
 3…○ 4/23授業プリント。
 4…○ ステップP295より。紅斑期・扁平浸潤期に行う。

問題3.以下の設問に対しa〜eのうち1つを選び解答欄に記入せよ。
1)悪性腫瘍でないのはどれか。
a.基底細胞上皮腫
b.Sezary症候群
c.Bowen病
d.隆起性皮膚線維肉腫
e.ケラトアカントーマ
解答 e
解説 5/7授業プリント
 e…ケラトアカントーマは良性腫瘍。

2)次の皮膚腫瘍のうち生命予後が比較的良好な組み合わせはどれか。
1.Bowen病
2.悪性黒色腫
3.陰部Paget病
4.血管肉腫
5.隆起性皮膚線維肉腫
a)1,2  b)1,5  c)2,3  d)3,4  e)4,5
解答 b
解説 5/7授業プリント
 1.先生の言葉を借りると、「なあんだ」って感じの病気らしいです。
 5.低悪性度肉腫で転移はない。

3)次の各腫瘍に共通した特徴はどれか。
[グロームス腫瘍、血管平滑筋腫、血管脂肪腫、エクリン螺旋腫、神経鞘腫]
a)圧痛があることが多い。
b)悪性化しやすい。
c)潰瘍化しやすい。
d)多発しやすい。
e)血管系腫瘍である。
解答 a
解説 5/7授業プリント
 これらは良性腫瘍である。

4)日光曝露により悪化または発症しやすい疾患はどれか。
 1.尋常性乾癬
 2.ポルフィリン症
 3.色素性乾皮症
4.菌状息肉症
 5.尋常性天疱瘡
a)1,2  b)1,5  c)2,3  d)3,4  e)4,5
解答 c
解説 5/7授業プリント
 2…○ ステップP233。400nm前後の波長を含む光線暴露による。
 3…○ 4/26授業プリント。UVにより様々な皮膚障害が起こる。

5)間葉系腫瘍とその特徴の組み合せのうち、まちがいはどれか。
a)神経鞘腫:圧痛、自発痛を伴うことが多い。
b)ケロイド:自然に治ることが多い。
c)Kaposi肉腫:AIDSの末期患者に多く見られることが多い。
d)皮膚血管肉腫:老人の頭部に多く見られる。
e)隆起性皮膚線維肉腫:組織像でstoriform pattern(花むしろ構造)が特徴である。
解答 b
解説 ステップP245より。ケロイドは年の単位で経過し、消退しない。

6)血管腫についてまちがいはどれか。
a)ポートワイン母斑は生下時から存在することが多い。
b)苺状血管腫には自然消退傾向がない。
c)くも状血管腫は肝硬変などに伴ってみられることが多い。
d)化膿性肉芽腫は外傷が先行して生じることが多い。
e)Kasabach-Merritt症候群ではDICを起こすことがある。
解答 b
解説 5/14授業プリント。5〜6歳で消退する。

7)末梢血に異型細胞が見られやすい疾患はどれか。
a)Sezary症候群
b)多発性骨髄腫
c)Letterer-Siwe病
d)偽リンパ腫
e)木村病
解答 a
解説 ステップP297。異型リンパ球、Sezary細胞が末梢血に出現する。

8)次の組み合わせの中で誤りはどれか。
a)SLE−凍瘡様紅斑
b)水疱性類天疱瘡−悪性腫瘍合併
c)壊疽性膿皮症−Crohn病
d)乳房外Paget病−口腔内アフタ
e)色素性乾皮症−基底細胞癌
解答 d
解説
 a…○? ステップP157。浮腫性紅斑は、SLEの紅斑と似ていると考えられる。
 b…○ 4/23授業プリント。
 c…○ ステップP183。クローン病、潰瘍性大腸炎などの合併あり。
 d…? 口腔内アフタはベーチェット病では?
 e…○ 4/26授業プリント。

9)60歳女性。左鼻翼部の直径8mm大の黒色丘疹を主訴に来院した。考えにくい疾患はどれか。
a)基底細胞癌
b)悪性黒色腫
c)脂漏性角化症
d)黒色表皮腫
e)色素性母斑
解答 d
解説 ステップP202。黒色の色素沈着を認め、境界はあまりない。他の4つは鑑別診断が必要となるくらい見た目が似ている。

10)31歳女性。約6ヶ月前に近医にて左大腿の「ほくろ」を切除された。約1週間前に左そけい部に直径4cmの腫瘤があるのに気付いた。自覚症状はない。CTにて腫瘤は皮下に存在した。現時点でもっとも適切な対応はどれか。
a)生検
b)抗生物質投与
c)切開排膿
d)経過観察
e)圧迫固定
解答 a
解説 ほくろ(色素性母斑)と思っていたものが、悪性腫瘍であった可能性もある。生検で確定診断を行う必要あり。

問題4.1)次の文章で正しいものに○、間違ったものに×を解答欄に記入せよ。
1.皮膚の悪性リンパ腫はT細胞が多い。
2.菌状息肉症は一般に経過が短く、予後不良である。
3.成人T細胞白血病・リンパ腫は皮膚病変をほとんど生じない。
4.皮膚のT細胞性リンパ腫はときにガンマインタフェロンが有効である。
5.皮膚の悪性リンパ腫には電子線照射は無効である。
解答・解説
 1…○ 5/10授業プリント。多いと考えられる。
 2…× ステップP295。経過は長い。
 3…× 5/10授業プリント。半数に皮膚症状が見られる。
 4…○ 5/10授業プリント。
 5…× 5/10授業プリント。放射線照射も第一選択に含まれる。

2)次の文章で正しいものに○、間違ったものに×を解答欄に記入せよ。
1.黒色表皮腫を呈した場合、真菌感染のチェックが必要である。
2.皮膚筋炎は内臓癌の合併例がある。
3.糖尿病性壊疽は皮膚の血行障害により生じる。
4.色素性痒疹の患者は、糖尿病性ケトアシドーシスを合併していることがある。
5.腎不全患者は皮膚そう痒を訴えることはない。
解答・解説
 1…× ステップP202。内分泌異常、肥満に合併する病気。
 2…○ ステップP213。胃癌、乳癌、肺癌などが見つかることが多い。
 3…○ 代謝障害に関連する。
 4…○ 高齢者にしばしば見られる。
 5…× ステップP389。高頻度に見られる。

問題5.皮膚のウイルス感染症について、a〜eのうち正しい答えの組み合わせを選び解答欄に記入せよ。
1)ヒト乳頭腫ウイルス感染に関連して発症する疾患はどれか。
1.ミルメシア
2.ボーエン様丘疹症
3.子宮体癌
4.パージェット病
5.疣贅状表皮発育異常症
a)1,2,3  b)1,2,5  c)1,4,5  d)2,3,4  e)3,4,5
解答 b
解説
ミルメシアの病原体はHPVの1型。
ボーエン様丘疹症はHPVの16型。
疣贅状表皮発育異常症には5型や8型など多くのHPVが関与。
参考までに、他には子宮頸癌、ケラトアカントーマ、ボーエン病、有棘細胞癌、喉頭乳頭腫、尖圭コンジローマなどにHPVが絡んでいるそうです。

2)慢性活動性EBウイルス感染症あるいはEBウイルス関連リンパ球増殖症を疑わせる皮膚病変はどれか。
1.蚊刺過敏症
2.カポジ肉腫
3.形質細胞症
4.ケラトアカントーマ
5.種痘様水疱症
a)1,2  b)1,5  c)2,3  d)3,4  e)4,5
解答 b
解説
 1…○ ステップP151。種痘様水疱症の患者の一部に蚊アレルギー合併がある。
 2…× HHV−8が病因。
 3…× たぶん。
 4…× 良性腫瘍。
 5…○ ステップP151。

問題6.a〜eのうち正しいものの組み合わせを選び解答欄に記入せよ。
1.尋常性乾癬の病因にはB細胞が重要である。
2.尋常性乾癬のサイトカインパターンはTh1型である。
3.尋常性乾癬は遣伝学的には多因子疾患である。
4.関節症性乾癬ではHLAとの相関は低い。
a)1,3,4  b)1,2  c)2,3  d)4のみ  e)1,2,3,4
解答 c
解説
 1…× T cell
 4…× HLAとの相関高い。

問題7.a〜eのうち正しいものの組み合わせを選び解答欄に記入せよ。
1)皮膚真菌症の主な感染経路・様式として正しいのはどれか
1.足白癬――――――――患者から屋内環境中に菌が散布され感染する。
2.癜風―――――――――皮膚の常在菌が増殖・形態変化する。
3.皮膚カンジダ症――――屋内環境中の菌が経皮的に侵入する。
4.スポロトリコーシス――熱帯魚に寄生する菌が水を介して外傷部から侵入する。
a)1,3,4のみ  b)1,2のみ  c)2,3のみ  d)4のみ  e)1〜4のすべて
解答 b
解説
 1…○ ステップP359。水虫のこと。
 2…○ ステップP365。
 3…× ステップP362。口腔、消化管、膣に常在。
 4…× ステップP366。土、腐った木に腐生している。

2)スポロトリコーシスについて正しい組み合わせはどれか。
1.小児の顔面、高齢者の上肢に好発する。
2.診断にはスポロトリキン反応が役立つ。
3.病理組織では真皮に豊富な菌要素が認められる。
4.治療として抗真菌剤の外用が行なわれる。
a)1,3,4のみ  b)1,2のみ  c)2,3のみ  d)4のみ  e)1〜4のすべて
解答 b
解説 H15、問4の1)
 1…○
 2…○?
 3…×と、考えられる。
 4…× 抗真菌剤は内服。他にヨウ化カリウム、切除など。

3)次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。
1.Microsporum canisによる白癬は一般的に炎症症状が軽い。
2.ケルスス禿瘡は真菌感染と細菌感染が合併し、膿瘍を生じた状態をいう。
3.Candida albicansは常在菌なので陰部カンジダ症が性行為感染症となることはない。
4.Malassezia furfurは耳垢に豊富に存在する。
a)1,3,4のみ  b)1,2のみ  c)2,3のみ  d)4のみ  e)1〜4のすべて
解答 d
解説
 1…× ステップP361。進行すれば炎症も強い。
 2…× ステップP361。M. canisによることが多い。
 3…× STDのひとつ。
 4…○ 4/22スライドより。常在菌の一つ。

問題8.1)薬疹の記載について正しいものには○、誤りには×を解答欄に記入せよ。
1.固定薬疹は皮膚症状のみで薬疹と診断できる場合が多い。
2.長期(数年以上)内服している薬はたとえ薬疹を生じても中止する必要はない。
3.TENなどの重症薬疹でも皮内テストは必須である。
4.薬剤リンパ球刺激試験(DLST)で陰性であればその薬剤は中止する必要はない。
5.Drug-induced hypersensitivity syndromeとは薬剤とHHV−6などのウイルス再活性化が関連して発症するものをいう。
解答・解説 4/30授業プリント。
 1…○ 皮疹を見ればある程度推定できる。
 2…× 中止することが大事。
 3…× 早期治療すべき。
 4…× 原因薬剤同定法はいまだ確実なものが確立されていないので、たとえ陰性であっても、それが原因でないといえず、総合的判断を必要とする。
 5…○ プリントの診断基準。原因薬剤としてカルバマゼピン、ミノサイクリンなどがある。

2)蕁麻疹、痒疹の記載について正しいものには○、誤りには×を解答欄に記入せよ。
1.食物依存性運動誘発アナフィラキシーは卵や牛乳を摂取した直後に起こりやすい。
2.色素性痒疹ではDarier's sign陽性である。
3.妊娠性痒疹は経産婦に発症しやすい。
4.遺伝性血管神経性浮腫は常染色体優性遺伝である。
5.肥満細胞症は小児のみに生じる疾患である。
解答・解説 4/30授業プリント。
 1…× 摂取して十分な運動負荷を行うと出現しやすい。
 2…× 色素性蕁麻疹で起こる。
 3…○
 4…○
 5…× 幼児型、成人型あり。

問題9.
T.以下の設問に対し、a〜hの記号を解答欄に記入せよ。
1)下記の中で悪性腫瘍を発生しやすい疾患はどれか。2つ選べ。
2)神経櫛(neural crest)起源細胞による母斑はどれか。3つ選べ。
a)脂腺母斑  b)表皮母斑  c)Spitz母斑  d)太田母斑  e)苺状血管腫
f)色素失調症  g)巨大色素性母斑  h)ポートワイン母斑
解答
 1)a,g
 2)c,d,g

解説 H15問題2参照。

U.皮膚筋炎の記載で正しいものに○、誤っているものに×を解答欄に記入せよ。
1.蛍光抗体直接法で基底層にIgG,C3の沈着がみられる。
2.内臓悪性腫瘍の合併が多い。
3.肺線維症の併発に注意を要する。
4.特徴的皮疹としてヘリオトロープ斑、ゴットロン徴候などがあげられる。
5.小児の皮膚筋炎は比較的予後がよい。
解答・解説 5/13授業プリント、ステップP213。
 1…× 蛍光抗体陰性。
 2〜5…○

問題10.22歳男性。小児期から、顔面、四肢に湿疹性病変を繰り返していた。3日前から、顔面、頸部全体に有痛性の小水疱や小膿疱が出現しはじめた。38.5度の発熱と、後頸部および側頸部のリンパ節腫脹が認められた。
1.最も考えられる疾患名を一つ記せ。
2.本疾患の病因となりうるウイルス名を一つ記せ。
3.基礎疾患として最も頻度の高い疾患を一つ記せ。
解答
 1:カポジ−水痘様発疹症
 2:ヘルペスウイルス
 3:アトピー性皮膚炎
解説 小児期から繰り返し湿疹性病変があったことから慢性再発性の皮膚病変と考えられ、アトピー性皮膚炎と推測。本症例はウイルス感染による合併症の1つと判断される。詳しくは4/16授業プリント。

問題11.1)熟傷の記載について、正しいものには○、誤りには×を解答欄に記入せよ。
1.Deep Burn(V度熱傷)では感覚が消失する。
2.Burn Indexが30以上を重症熱傷とする。
3.受傷面積の算出には10の法則を用いる。
4.輸液法にはBaxter法、Evans法などがある。
5.熱傷瘢痕から有棘細胞癌が生じることがある。
解答・解説 H15概説問8の1)と同じ。

2)右図のようなZ形成術を行った場合の完成図はどれか、a〜cのうち1つを選び解答欄に記入せよ。

解答 c
解説 4/26授業プリント。

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