聴・嗅・味覚器 平成15年度概説試験

2003年度4学年
※分からなかったところが多すぎるので、分かった方は「いどばた」に書き込んでください。僕もさらに調べてみるつもりではいますが。

【1】(おそらく去年まで腫瘍の分野は山本先生が講義を担当していたものだと思われます。TMN分類は呼吸器の講義で習いましたが、今年の耳鼻科の講義では出てきませんでした。とにかく、答えはさっぱり分かりません)
1)口腔癌のT分類別(原発巣の大きさ)による各生存率曲線はStage分類別(病期)による各生存率曲線に比べると低くなっている。つまりT1とStage I、T2とStage II、というように比べると、T分類別の方が生存率が悪くなっている。その理由を40字程度で説明しなさい。

2)上顎癌のT分類別、N分類別(所属リンパ節別)による治療成績を示す。上顎癌の治療成績において、原発巣の大きさ以外に大きな要因となるものは何かを、40字程度で説明しなさい。

【2】
1. 総頚動脈の枝を模式図で示しながら名称をあげよ。
(12概説問1、15卒試3、14卒試3)

総頚動脈は胸郭上口から頚部に入り、気管及び喉頭の外側を上行し、甲状軟骨上縁の高さ(C6)で内頚動脈と外頚動脈に分かれる。
外頚動脈は2本の終枝(浅側頭動脈と顎動脈)以外はほとんど頚動脈三角の部分で分枝している。前面から上甲状腺動脈、舌動脈、顔面動脈、内側面から上咽頭動脈、後面から後頭動脈、が分枝している。
内頚動脈は眼動脈(→前硬膜動脈)を分枝した後、脳底で後交通動脈、前脈絡叢動脈、前大脳動脈、中大脳動脈に分かれる。

2. 耳下腺腫瘍の臨床的な良悪性の鑑別を述べよ。
(4/8「頭頸部腫瘍」中島格先生)

悪性 良性
成長 速い 遅い
痛み
顔面神経麻痺
境界 不明瞭 明瞭

最近はFNA(吸引細胞診)も用いられる。

【3】(倉富先生の担当分野は去年まで山本先生が担当していたとか)
1.65歳男性が鼻閉を主訴に来院した。
(標準耳鼻咽喉科・頭頸部外科学P324、4/13&14倉富先生)
1)問診の要点を述べよ。
鼻閉はほとんど全ての鼻疾患に見られる症状であり、一側性か両側性かあるいは左右交互にあるか、一時的か持続的か、などを知る必要がある。特に「鼻閉、鼻汁、くしゃみ」を3主徴とよび、これらが同時に見られる場合、風邪やアレルギー性鼻炎が疑われ、さらにアレルギーの既往、家族暦、ペットの有無、季節性などを問診する必要がある。しかし、鼻閉のみしか見られない場合、他に腫瘍なども疑われる。腫瘍であれば腫瘍のある側に一側性に鼻閉があるはず(両側に同時に腫瘍ができることは考えにくい)であり、問診のポイントとなる。

2)前鼻孔からの観察で右中鼻道に表面不整なポリープ様の腫瘤を認めた。次にどの様な検査を行うか。
(4/14倉富先生P2〜)
腫瘍性病変が疑われ、その鑑別が重要となる。具体的には画像診断(単純レントゲン、CT、MRI)、生検(組織診、細胞診)があり、生検が確定診断となる。

2.45歳男性がのどに流れ込む鼻出血を主訴に来院した。行うべきチェック、止血処置について述べよ。
(H15卒試5、4/13倉富先生P4)
まず、バイタルサインと出血部位のチェックを行わなければならない。この場合、のどに流れ込んでいることから蝶口蓋動脈の出血が疑われる。
止血については、まず座位(頭の血圧を下げる、のどに流れるのを防ぐ)で下向きの姿勢をとらせ、滴下する鼻血は膿盆に落とすように指示する。口は開いたまま静かに呼吸させ、咽頭に流下した血液は嚥下せずに吐き出すように指示する(この際、咽頭に血液が流入し、誤嚥の可能性を高めるので上を向かせてはならない)。さらに、外から抑える/冷やすことにより血管を収縮させる。また、鼻腔内にアドレナリンと表面麻酔剤(4%リドカイン)を浸したガーゼを挿入し圧迫止血する。他に特殊止血法として、動脈性鼻出血→電気凝固、鼻腔上/後方出血→Bellocqタンポン、重篤・反復する鼻出血→外頚動脈結紮術・顎動脈結紮術などがあるが。ただし、鼻腔上/後方出血に対して、最近は教科書的なBellocqタンポンでなく、止血バルーンによる後鼻孔の閉鎖が行われている。

3.上顎癌の下記の進展方向に伴う症状について説明せよ。
(H15卒試6、4/14倉富先生P3)
1)下方進展
軟口蓋腫脹、歯肉部腫脹、上顎歯痛、歯抜ける、歯が浮いた感じ
2)内側進展
鼻閉、血性鼻汁、鼻出血
3)前方進展
三叉神経第2枝圧迫による頬部痛/腫脹、知覚障害(三叉神経圧迫によるしびれ/疼痛)、眼球突出
4)後外側進展
内・外側翼突筋障害による開口障害、三叉神経圧迫による顔面知覚異常

【4】(4/19梅崎先生)
問1.次の記載のうち、正しいものには○を誤りには×を( )内に入れよ。
1.( )嚥下運動は生理学的に先行期(認知期)、口腔準備期、口腔期、咽頭期、食道期に分けられる。
2.( )嚥下物が声門を越えて下気道に侵入することを誤燕という。
3.( )一側声帯麻痺では咳嚇効率が低下し、肺炎を生じやすい。
4.( )Vernet症侯群では患側の咽頭筋麻痺を生じることが多い。
5.( )嚥下性肺炎は、高齢者の死因の上位を占めている。

1○
2○
3○?…反回神経の麻痺などによって起こる。
4○…Vernet症候群=頚静脈孔症候群。舌咽、迷走、副神経が同時に障害される。標123、S212。
5×?…肺炎は死因の第4位ですが、「嚥下性」と限定がついて「上位」と言えるのかどうか分かりません。

問2.球麻痺型の嚥下障害におけるX線透視検査所見の特徴と外科的治療について述べよ。
球麻痺型の嚥下障害の場合、咽頭クリアランスの低下が観察され、これにより喉頭下降期型誤嚥(固形物の嚥下が困難になる)に分類される。また誤嚥の左右差も見られ、これは延髄以降に病変部位があることを示している。外科的治療としては輪状咽頭筋切除術がある。

X線透視検査で分かるもの
時間的解析→時間が延長すれば仮性球麻痺タイプ(喉頭の挙上が遅れる=喉頭挙上期型)
咽頭クリアランス→低下していれば球麻痺タイプ(=喉頭下降期型)
左右差→見られれば病変部位は延髄以降(=球麻痺タイプ)、見られなければ病変部位は延髄より上(=仮性球麻痺タイプ)

仮性球麻痺型について
喉頭挙上期型誤嚥で水の嚥下が困難になる。左右差などについては上記のとおり。外科的治療としては喉頭挙上術がある。

【5】
問題 形成外科に関する以下の文で誤りと思うものをあげよ
(4/15熊本先生:去年までと今年とでは講義を担当した先生が異なる)

1 外傷の場合、創傷治癒を考えると専門治療を優先するべきで、チーム医療を行わないほうが良い。
2 顔面の骨折はその症状で大体骨折部位が特定可能である。
3 主軸血管系の皮弁は皮膚の直接穿通枝を主血管とし、筋皮弁は筋枝の皮膚穿通枝を栄養血管とする。
4 頭蓋・顎・顔面の先天性形態異常はほとんど胎生2ヶ月以内に発生している。
5 頭蓋骨早期癒合症のクルーゾン病では頭蓋内圧亢進を示すことが多いが、顔面の変形は来たさない。

1×…P1。チーム医療が重要である。
2○…P2。複視→眼窩壁(下壁、内壁)、斜鼻→鼻骨・上顎前頭突起、鞍鼻→鼻中隔・鼻骨、開口障害→頬骨・頬骨弓・下顎関節突起、咬合異常→上顎骨(Le FortT〜V)・下顎骨
3○?
4○?
5×…P3。眼球突出や皿状顔貌(dish face)をきたす。

【6】(今年は中川先生と小宗先生とが半分ずつ出題するとか。小宗先生は宮医時代に落としまくっていたらしいので、頑張りましょう…)
問1、中耳炎を3つ挙げて、病態や症状などを述べよ。
(14概説8、14卒試15、15卒試15、4/6小宗先生P6〜)
・急性中耳炎
上咽頭(多い)、または外耳道由来の細菌感染で生じた、中耳腔の急性の炎症。急性上気道炎に続発することが多い。感冒症状が先行し、その後に耳痛をきたす。耳介を引っ張っても痛みは強くならない。鼓膜が穿孔すると耳漏を呈し、耳痛は軽減する。耳閉塞感、伝音難聴。耳鏡所見で鼓膜の発赤と腫張がみられる。
・滲出性中耳炎
中耳腔の換気不全による中耳腔の陰圧化(これに対し粘膜上皮細胞が分泌液を出す)が原因である。小児では急性中耳炎に続発し、高齢者では耳管機能不全などに合併する。(ただ、ステップには「直接的な原因は細菌感染であり、中耳腔の換気不全はその増悪因子に過ぎないとされ、感染に対する免疫応答の結果として産生された様々のサイトカインが粘膜上皮細胞の肥厚と分泌細胞の分化を誘導し、滲出液の貯留を促すと考えられている。実際、滲出液には細菌が高率に検出されている。」と書いてあるとか)
・慢性中耳炎
中耳に感染が持続して中耳組織に不可逆性の炎症性変化が起きた状態で、通常は急性中耳炎の反復後に生じ、鼓膜穿孔が見られる。耳管、鼓室腔、乳突腔に慢性炎症性変化が生じた状態で、持続性反復性の粘膿性耳漏を認める。側頭骨の含気蜂巣の発育は抑制されている。耳漏、難聴、急性増悪時の耳痛が主要な症状である。
〜以下は中耳炎後遺症の例。授業では真珠腫性中耳炎を取り上げていたので、そちらを書くと無難でしょう。〜
・真珠腫性中耳炎
鼓膜由来の上皮細胞が中耳腔に侵入し、その結果産生されるサイトカインによって増殖することで生じる。耳小骨破壊による伝音難聴と悪臭の強い耳漏、骨迷路の破壊による感音難聴と末梢性前庭性めまい、瘻孔現象(外耳道の加圧・減圧時にめまいを訴える)、Tulio現象(強大音を聴かせるとめまいを訴える)を起こす。顔面神経管や側頭骨の破壊をきたすこともある。
・慢性化膿性中耳炎
急性中耳炎の炎症が完全に治癒せず、排膿が不完全であったために慢性の化膿巣が残存している病態。耳漏が断続的にみられ、伝音難聴をきたす。幼少時では乳突蜂巣の発育が抑制され、含気化が不良になる。

問2. リクルートメント現象を蝸牛の働きより説明せよ。(S21〜)
聴覚補充現象とも呼ばれ、感音性難聴の中でも特に内耳性難聴に限って見られる現象である。本来、音の物理的な強さと感覚的な強さは比例関係にあり、音圧を上げればその分音は大きく聴こえるはずである。しかし、内耳性難聴においては閾値より大きい音(その人に聴こえる音)であれば、物理的に少し大きくしただけで感覚的にはすごく大きくなったように捉えられる。この現象をリクルートメント現象と呼ぶ。
有毛細胞の異常によって起こるらしいですが、蝸牛の働きとの絡みはよく分かりませんでした。

問3.中耳の手術について知っていることを記せ。
(何でも書いていいということでしょうか。本当は真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術などについて書くとベストだと思いますが、正直よく分からなかったので、耳硬化症に対するアブミ骨手術について書いてみます)
耳硬化症に対してはもっぱらアブミ骨手術が行われる。アブミ骨の一部を除去して前庭窓を開き、この部分にワイアーピストンでできた人工アブミ骨を植え込む。

問4. 問題
1.伝音系について間違っているものはどれか。
a中耳腔のガス組成は静脈のガス分圧と同じである。
b空気と鼓膜の音響インピーダンスはほぼ同じである。
c耳管の役割は、中耳腔の圧調節と排泄、上咽頭からの逆流防止である。
d伝音系の増幅機構のうちもっともgain(増幅率)が高いのはてこ比である。
e中耳腔は10-12歳頃まで発達する。

a×…4/6小宗先生プリントP5。ただし、CO2の割合が大きいのは共通。
b?
c○…4/6小宗先生プリントP5。
d×…4/6小宗先生プリントP4。面積比25dB、てこ比2.5dB、正円窓の遮蔽効果12dB。
e?

2.蝸牛の働きで正しいのはどれか。
(1)聴覚系における蝸牛の働きは音エネルギーを神経信号に変換する感覚器としての役割である。
(2)聴覚系における蝸牛の働きは周波数分析装置である。
(3)聴覚系における蝸牛の働きは低い閾値と広いdynamic rangeをもつ増幅器である。
(4)蝸牛が障害されて生じる難聴は感音性難聴である。
a(1),(2),(3) b(1)、(2) c(2),(3) d(4) e(1)一(4)すべて

【解答】e 生理学テキストP153〜
(1)○
(2)○…有毛細胞による。高周波は基底回転側、低周波は頂回転側にピークを持つ。
(3)○
(4)○…蝸牛以降の障害で起こるのが感音性、それ以前の障害で起こるのが伝音性。

3.聴力検査につき正しいのはどれか。
(1)自記オージオグラムの鋸歯状波の振幅縮小は補充現象陽性を示す。
(2)気導聴力と骨導聴力とを比較すれば内耳性・後迷路性難聴を鑑別できる。
(3)聴性脳幹反応(ABR)は主観的聴力検査である。
(4)語音弁別能(語音明瞭度)は正常人では100%に達する。
(5)聴神経腫瘍の患者では一過性閾値上昇が現れる。
a(1),(2),(3) b(1),(2),(5) c(1),(4),(5) d(2),(3).(4) e(3),(4),(5)

【解答】c 14概説10(4)
(2)×…伝音性or感音性の区別。

3.54歳の男性。子供のころから時々右耳漏があり、難聴に気付いていたが放置していた。5年前から難聴が進行し、音が割れて聞こえるようになり、耳鳴も出現するようになった。最近、外耳道に指を入れるとめまいが起こるようになり来院した。左耳に異常はない。予想される所見はどれか。
(1)鼓膜は正常である。
(2)垂直性自発眼振がみられる。
(3)難聴の種類は混合性である。
(4)瘻孔症状は陽性である。
(5)内耳道の拡大がある。
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5)

【解答】d 14概説10(5)、S62〜
本症例は真珠腫性中耳炎と考えられる。真珠腫性中耳炎に見られる特徴としては以下の通り。
・耳小骨の破壊…伝音性難聴、悪臭を伴う耳漏
・骨迷路の破壊…蝸牛を侵すと感音性難聴(上記の伝音性と相まって混合難聴となる)、前庭・半規管を侵せば末梢性前庭性めまい(めまいは以下の2通り)
瘻孔現象…外耳道を加圧もしくは減圧した時にめまいが起こる現象
Tulio現象…強大音を聴かせるとめまいが起こる現象
・顔面神経管の破壊…顔面神経麻痺をきたす
・側頭骨の破壊…急性乳様突起炎、錐体尖炎
・耳性頭蓋内合併症

3. 良性発作性頭位めまい症について間違っているのはどれか。
a 中枢性である。
b 耳石器の石が半規管内に浮遊しているものが大部分である。
c 眼振に潜時、疲労現象がある。
d 後半規管性と外側半規管性がある。
e Epley法などの理学療法が有効である。

【解答】a 4/9中川先生プリントP6〜7、S80〜、YNJ34
良性発作性頭位めまい症=BPPV
a×…中枢性でなく内耳性。
b○…後半規管内に迷入した耳石片による。
c○…めまい頭位において眼振が数秒の潜時をおいて出現し、次第に増強し、次いで減弱ないし消失する。
d○…後半規管性(PC-BPPV)と外側半規管性(HC-BPPV)とを区別する。
e○…約80%の有効率が報告されている。

4. めまいに耳鳴と難聴を随伴する疾患はどれか。
(1)中毒性内耳障害
(2)Ramsay-Hunt症候群
(3)前庭神経炎
(4)良性発作性頭位眩量症
(5)内耳梅毒
a(1),(2),(3) b(1),(2),(5) c(1),(4),(5) d(2),(3),(4) e(3),(4),(5)

【解答】b 14概説10(10)、YNJ18&34
内耳疾患のうち、半規管と蝸牛とを同時に障害するものを選ぶ。また、発作時に耳鳴り、難聴を伴わない内耳性めまいとして良性発作性頭位眩量症と前庭神経炎を覚えておきましょう。

5. Meniere病につき正しいのはどれか。
(1)発症は発作性で反復性である。
(2)発作の激しい時は意識障害を伴う。
(3)進行すると温度眼振検査で半規管麻痺(CP)を生じる。
(4)初期は低音域障害型の難聴が多い。
(5)めまいのため、物が二重にみえる。
a(1),(2),(3) b(1),(2),(4) c(1),(3),(4) d(2),(3),(4) e(3),(4),(5)

【解答】c 14概説10(12)
(3)○…温度眼振検査=カロリックテスト

6. Bell麻痺の予後判定に役立つのはどれか。
(1)ウィルス抗体価
(2)ティンパノグラム
(3)神経興奮性検査(NET)
(4)電気誘発筋電図(ENoG)
(5)聴力検査
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5)

【解答】d 14概説10(13)、4/16中川先生プリントP1〜2
ベル麻痺=原因不明の末梢性顔面神経麻痺

9. 純音聴力図を示す。考えられるのはどれか。

a耳小骨離断
b耳硬化症
c突発性難聴
d加齢性難聴
e慢性騒音性難聴

【解答】c S16〜、4/23小宗先生プリント
純音聴力図は気導聴力と骨導聴力とをそれぞれ左右について記録する。記録法には決まりがあり、気導聴力は右側を○、左側を×で示し、それぞれを線で結ぶ。骨導聴力は右側を[、左側を]で示し、こちらは線で結ばない。気導聴力は約100dB、骨導聴力は約60dBが限界とされ、例えば右側の骨導聴力において、60dBでも反応しなければ、60dBのところに[を記して、さらに下向きの矢印を書き加える(上図参照)。
次に伝音難聴と感音難聴の見分け方ですが、気導聴力のみが低下し、骨導聴力が正常な場合は伝音難聴で、このパターンをABギャップと呼ぶ。Aはair、Bはboneの頭文字で気導聴力と骨導聴力とのあいだにギャップがあることを示す。感音難聴の場合は気導聴力、骨導聴力がともに低下する。
この問題では右側の気導聴力、骨導聴力が共に低下しており、右側のみの感音難聴であると読み取れる。選択肢の中の耳小骨離断、耳硬化症は伝音難聴であり、加齢性難聴、慢性騒音性難聴は両側性の感音難聴なので、突発性難聴が答えとなる。

10. 7歳の男児。学校の健康診断で右耳の難聴を指摘され、精密検査目的で来院した。自覚的に耳痛なく、局所所見で鼓膜の穿孔や耳漏もない。ティンパノメトリーでAd型であった。純音聴力検査を示す。最も考えられるのはどれか。

a急性中耳炎
b慢性中耳炎
c耳小骨形態異常
d突発性難聴
e機能性難聴

【解答】c S16〜、S30〜、4/23小宗先生プリント
ティンパノメトリー=インピーダンスオージオメトリー。鼓膜にかかる圧力を加減して鼓膜のコンプライアンス(=インピーダンス〔鼓膜に圧を加えた際に受ける反発力〕の逆数)の変化を調べる。そして、縦軸にコンプライアンス、横軸に外耳道圧をとって描いたグラフをティンパノグラムという。正常では、外耳道に何も圧を加えない状態(大気圧のとき)でコンプライアンスが最大となる。このときのティンパノグラムをA型という。次に、滲出性中耳炎で鼓室内に大量の液体が貯留している時は、外耳道圧を変化させてもコンプライアンスにはほとんど影響がなく、この場合のティンパノグラムをB型と呼ぶ。一般に鼓室の半分以上を液体が占めるとB型となる。耳管狭窄で鼓膜が内陥している時は外耳道に陰圧を加えた時にコンプライアンスが最大となる。このときのティンパノグラムをC型と呼ぶ。また、鼓室内の液体が少量の時もC型を示す。A型の中で、耳小骨連鎖離断によって耳小骨に繋ぎとめられなくなった鼓膜が異常に大きく動く場合に見られるティンパノグラムをAd型、耳硬化症によってアブミ骨底が固着し、鼓膜が動きにくくなった場合に見られるティンパノグラムをAs型と呼ぶ。
この問題では、ティンパノメトリーがAd型といっているので、この時点で耳小骨形態異常による耳小骨連鎖離断だと思われますが、念のために他の選択肢も検討してみると、急性中耳炎では痛み、慢性中耳炎では耳漏がそれぞれ見られるはずであり、不適当。次に純音聴力図を見ると、右側のABギャップが見られ、右のみの伝音難聴だと読み取れる。突発性難聴は内耳性疾患なので感音難聴であり不適当。機能性難聴にはヒステリーの転換症状である心因性難聴と、「聴こえない」という振りをする詐聴とがあるが、この問題では機能性難聴だと判断する材料もないので不適当。ここまで考えると、純音聴力図におけるABギャップも耳小骨形態異常による耳小骨連鎖離断による伝音障害と考えるのが自然だと思います。

もどる

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送