聴・嗅・味覚器 平成16年度概説試験

平成16年5月6日実施(120分)
教授の出題がA4で4枚。他の4人の先生(梅崎、倉富、中川、熊本)が各1枚で計8枚。
問題用紙に直接記述する方式。
問題用紙に直接記述する方式。余分にとった問題をデータ化。

101人受験、9人不合格。

<小宗教授出題>
1.中耳伝音理論について正しいのはどれか。
(1)耳小骨連鎖のてこ比が音増幅に最も大きな役割をもつ。
(2)鼓膜・耳小骨がすべてなくなると30dBの伝音難聴となる。
(3)鼓膜小穿孔で耳小骨が正常な場合に予測される難聴は12.5dBである。
(4)鼓室形成術V型はcancel効果を利用した術式である。
(5)慢性中耳炎で耳漏が増えるときに聞こえがよくなることがある。
答え a(1)(2)  b(3)(5)  c(3)(4)(5)  d(2)(3)(4)(5)  eすべて正しい
(解答)e

2.聴神経腫瘍について正しいものはどれか。
(1)一側性である。
(2)進行性の感音難聴がある。
(3)初期にブルンスの眼振を認めることがある。
(4)発生部位は蝸牛神経が多い。
(5)ある程度大きくなるとめまい症状が強くなる。
答え a(1)(2)  b(1)(3)  c(1)(2)(3)   d(1)(2)(3)(5)  eすべて正しい
(解答)a
(解説)
(3)× Bruns眼振の出現は進行例。
(4)× 圧倒的に前庭神経が多い。

3.側頭骨骨折について正しいものはどれか。
(1)縦骨折と横骨折がある。
(2)頭蓋底骨折は伴わない。
(3)難聴、めまい、顔面神経麻痺などが主な症状である。
(4)難聴は伝音難聴である。
(5)髄膜炎を併発することもある。
答え a(1)(2)  b(3)(4)  c(1)(3)(5)   d(2)(3)(5)  eすべて正しい
(解答)c
(解説)
(2)× 錐体長軸に対して平行に折れると縦(多い)、長軸を横断すると横(少ない)。
(4)× 縦→伝音(混合)、横→感音。

4.内耳性難聴をきたすものはどれか。
(1)アスピリン
(2)ペニシリン
(3)アミノ配糖体抗生物質
(4)ループ利尿剤
(5)シスプラチンなどの抗癌剤
答え a(3)(4)  b(1)(3)(4)  c(3)(4)(5) d(1)(3)(4)(5)  eすべて正しい
(解答)d
(解説)
アミノ配糖体、ループ利尿剤、サリチル酸塩、抗癌剤、インターフェロン

5.他覚的聴力検査として利用できるのはどれか。
(1)純音聴力検査
(2)聴性脳幹反応
(3)アブミ骨筋反射
(4)Bekesyの自記オージオメトリー
(5)SISIテスト
答え a(2)(3)  b(2)(4)  c(2)(3)(4) d(2)(3)(4)(5)  eすべて正しい
(解答)a
(解説)
(1)× 患者さんに聞こえたら合図してもらい記録。
(4)× 患者さん自身が調節して気導聴力閾値を測定。

6.突発難聴について正しいものはどれか。
(1)ほとんど一側性
(2)聾に至るものがある。
(3)早期治療が重要
(4)聴神経腫瘍の初発症状として出現することがある。
(5)めまいを伴うことがある。
答え a(1)(2)  b(4)(5)  c(1)(3)(4)   d(1)(3)(4)(5)  eすべて正しい
(解答)e

7.職業性、騒音性難聴について正しいものは
(1)C5 dipをきたす。
(2)ステロイドが有効である。
(3)耳栓は無効である。
(4)蝸牛血管条の障害である。
(5)中音域から障害されるのが特徴である。
答え a(1)(3)  b(1)(4)  c(2)(3)(4) d(2)(3)(4)(5)  eすべて間違い
(解答)a
(解説)
(2)× 職業性は治癒不能。
(4)× 有毛細胞障害。

8.人工内耳について正しいものは
(1)小児の先天聾には有効性が低い。
(2)小児では出生後なるべく早期に手術を行ったほうが効果が高い。
(3)手術後リハビリテーションが必要である。
(4)電話での会話は不可能である。
(5)言葉の聞き取りには個人差が大きい。
答え a(1)(2)(3)  b(3)(5)  c(2)(3)(5) d(1)(3)(4)(5)  eすべて正しい
(解答)c
(解説)
(1)× ろう児の早期聴覚確立を目指す。
(2)○ 早ければ早いほどよい。遅くとも4歳。
(4)× 授業で可能だと。

9.リクルートメント現象について正しいのはどれか。
(1)内耳障害と後内耳(迷路)疾患を鑑別診断するのに有効
(2)入力音の変化に対して感覚レベルがそれ以上になる現象を言う
(3)他覚的検査でのみ証明される。
(4)老人性難聴ではほとんど陽性となる。
(5)男女差が著しい。
答え a(1)(3)  b(3)(5)  c(1)(2)(4)   d(1)(3)(4)(5)  eすべて正しい
(解答)c
(解説)
(3)× 自記オージオメトリなども用いる。
(4)○?選択肢から。陰性例も多いらしい。後迷路性の変化も加わるため。

10.遺伝性難聴について正しいのはどれか。
(1)両側高度難聴(60dB以上)は1000人に1人出生する。
(2)人工内耳は聴覚獲得に有用
(3)非症候性遺伝が多い
(4)常染色体劣性遺伝が多い
(5)ミトコンドリア難聴は母系遺伝をする
答え  a(1)(2)  b(3)(5)  c(2)(3)(5) d(1)(3)(4)(5)  eすべて正しい
(解答)e
(解説)
(1)○ 60〜90dB、90dB以上それぞれ10万人に50人ずつ。
(3)○ 70%。
(4)○ 常劣38%、常優10%、伴性2%。

<梅崎先生出題>
1.球麻痺型と偽性球麻痺型の嚥下障害の鑑別点について述べよ。

球麻痺型 偽球麻痺型
停滞型障害 惹起遅延型障害
咽頭下降期型 咽頭挙上期型
左右差があることが多い 左右差なし
固形物の嚥下困難 水様物のむせ
咽頭クリアランス正常 咽頭クリアランス低下

2.次の記述のうち正しいものを選択せよ。(複数可)
(a)ポリープ様声帯(ラインケ浮腫)の原因として音声の酷使が最も多い。
(b)声帯結節は通常一側性である。
(c)声帯ポリープの原因はパピローマウィルスである。
(d)声帯ポリープの好発部位は声帯膜様部中央である。
(e)声帯白斑症は女性に多い。
(解答)(a)(d)
(解説)
(b)× 両側。
(c)× 咽頭乳頭腫。

<倉富先生出題>
1.32歳男性が鼻汁、鼻閉を主訴に来院した。
1)問診の要点を述べよ。
問診にて症状を聞くことが診断上最も大切なことである。早期癌は問診ではわからないが、その他の疾患では問診で診断がつくことも多い。鼻閉はほとんど全ての鼻疾患に見られる症状であり、一側性か両側性かあるいは左右交互にあるか、一時的か持続的か、などを知る必要がある。特に「鼻閉、鼻汁、くしゃみ」を3主徴とよび、これらが同時に見られる場合、風邪やアレルギー性鼻炎が疑われ、さらにアレルギーの既往、家族暦、ペットの有無、季節性などを問診する必要がある。しかし、鼻閉のみしか見られない場合、他に腫瘍なども疑われる。腫瘍であれば腫瘍のある側に一側性に鼻閉があるはず(両側に同時に腫瘍ができることは考えにくい)であり、問診のポイントとなる。

2)前鼻孔からの観察で鼻粘膜は浮腫状、蒼白で水様性鼻汁を認めた。最も考えられる病名を一つ挙げ、診断のための検査について簡潔に述べよ。
病名:アレルギー性鼻炎
検査:血清中総IgEや鼻汁好酸球検査にてアレルギー性の検査を行う。また、抗原特定の検査として、皮内テスト、鼻粘膜誘発テスト、血清特異的IgE定量の測定を行う。

2.鼻出血についての以下の問いに解答せよ。
1)キーゼルバッハ部位からの小出血の止血法について要点を述べよ。
仰臥位にはせず座位にて、尾翼を圧迫し冷却、また圧迫タンポンガーゼを挿入する。

2)下鼻道深部からの大量出血の止血法について要点を述べよ。
血管塞栓術や顎動脈・外頚動脈結さつ術を行うが、止血バルーンで後鼻腔を閉鎖する。ここでは尿道カテーテルを代用してもよい。また、バイタルサインのチェックを怠ってはならない。

3.上顎癌の下記の進展方向に伴う症状について説明せよ。
1)下方進展:上顎歯痛、歯が浮いた感じ
2)内側進展:鼻閉、血性鼻汁、鼻出血
3)前方進展:頬部の腫脹、しびれ、疼痛、眼球突出
4)後外側進展:開口障害、顔面知覚異常

<中川先生出題>
1.空間識はどのような入力系で形成されるか。入力系をみっつ挙げよ。


2.良性発作性頭位めまい症について述べよ。
内耳疾患の一つであり、特定の頭位(後方、一側に傾けたとき)で回転性めまい(30秒以内)が生じる。Frenzel眼鏡で頭位変換眼振検査を行うと、活発な純回旋眼振を認める。症状は蝸牛症状、つまり耳鳴りや難聴で、意識障害はない。理学療法により症状の改善を図るが、治療の必要のないことも多い。

3.カッコ内を埋めよ。
(  )性中耳炎は、上気道感染に伴い、鼻咽頭腔から耳管への伝播によって生じる。これに連続して、中耳炎の換気不全を本態とする(  )性中耳炎が続発する。換気不全は、中耳炎の遷延状態で耳漏をともなうことのある(  )性中耳炎や、骨破壊を生じ、重篤な合併症をひきおこす(  )性中耳炎のback groundである。
(解答)
順に、急、滲出、慢、真珠腫

4.鼓室形成術の目的を簡潔に説明せよ。
鼓室形成術には主に2つの目的がある。ひとつは伝音の再建であり、耳小骨の連鎖を再建することで伝音は再建される。ふたつめが穿孔の閉鎖であり、これは含気化鼓室を形成することで遮蔽効果が高められる。

5.顔面神経麻痺の予後判定について述べよ。
神経興奮性試験(NET)やEnoG記録(evoked electromyography)が用いられる。前者は顔面神経を電気刺激しげ観察可能な末梢筋のれん縮を起こすのに必要な最小刺激量を測定し、左右比較する。後者は茎乳突孔からでた顔面神経幹を電気刺激して末梢筋の誘発筋電図を測定し、最大振幅を左右比較する。5%以下が手術適応となる。これらの検査は神経変性の程度を診断できるため、予後判定に有用である。

<熊本先生出題(形成外科分)>
1.次の文の[  ]内に適切な言葉を記せ。
(1)皮膚のlineにはwrinkle lineとcontour line,[  ]lineがある。
(2)組織移植法として主軸血管型皮弁の代表的なものにDP皮弁(筋膜皮弁)、[  ]などが挙げられる。こういった血管形態の解明により、有茎皮弁だけでなく、最近は微小血管(血管神経)吻合技術を利用した血管柄付[  ]も利用されている。
(3)口唇裂は形態の異常だけでなく、[  ]の異常を伴っている。
(4)口蓋裂は口蓋帆挙筋の走行異常ばかりでなく、[  ]筋の機能にも影響を与えて、耳管機能の低下を招いている。
(解答)
(1)relaxation(2)筋皮弁、遊離組織移植(3)口輪筋の走行(4)口蓋帆張筋

2.顔面軟部組織損傷の場合に気をつけなくてはならない点を簡潔に記せ。
解剖学的に正しい位置に組織を戻す、ということが目的となる。その際、natural skin lineを考慮することが大切である。また、単純縫合でなく真皮縫合を行う。これにより真皮にかかる緊張が減り、瘢痕が目立たなくなるほか肥厚性瘢痕やケロイドの予防となる。また、縫合では傷を目立たなくするための視覚的効果をもたらすZ plastyやW plastyを用いる。

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