臨床遺伝学・遺伝子治療 平成16年度本試験

平成16年11月11日実施 120分
問題用紙は解答用紙と一緒で、以下の問題は復元したもの。

102人受験、11人不合格。

【1】正しいものに○、間違っているものに×をつけよ(10点)
(1)1950年代に遺伝子のエクソン・イントロン構造が発見された。
(2)ヒトゲノムの塩基が全て1センチメートル間隔で並んでいるとすれば、地球(赤道)を1周半する長さである。
(3)ヒトゲノムには約3万2千個の蛋白をコードする遺伝子がほぼ等間隔で存在する。
(4)遺伝学の目的の一つはゲノムの多様性を利用して統計学的に疾患の原因遺伝子を探索することである。
(5)一塩基の変異率はマイクロサテライトリピートの変異率より低い。
(6)連鎖とはメンデルの独立法則の例外と表現できる。
(7)ある遺伝子座に対立遺伝子が2つ存在(Aとa)していて、ハーディーワインベルグの法則が成り立つ集団においてAの頻度が0.4、aの頻度が0.6のとき、遺伝子型Aaを持つ個体の頻度は約0.24となる。
(8)2型糖尿病の原因遺伝子を同定する目的で罹患同胞対法を実施した。
(9)パラメトリック連鎖解析は単一遺伝病の解析に用い、LOD値を算出して、原因遺伝子が存在する染色体領域(疾患と連鎖する遺伝マーカーが存在する場所)を同定する。
(10)相関解析においては集団の構造化に注意が必要であり、得られた結果が構造化による差異であることを否定するために、同じ集団を何回も繰り返し解析する。
<解答・解説>9月1日、臨床遺伝学総論(山本先生)の講義スライド参照。
(1)×:1977年。50年代といえば53年、ワトソンとクリックの二重らせん構造。
(2)○:ヒトゲノムの塩基は60億個(30億対)。60億cm=6万km。地球1周=4万km。
(3)×:遺伝子の数は今のところ○。実はもっと少ない、という説も。等間隔ではない。
(4)○
(5)○:一塩基多型の変異率10^-8〜10^-9、マイクロサテライト多型は10^-3〜10^-5。
(6)○
(7)×:AAが0.16、aaが0.36、Aaは0.48
(8)○?:罹患同胞対法はノンパラメトリック連鎖解析の代表で、多因子疾患の研究に用いる。
(9)○?:LOD=logarithm of odds
(10)?:構造化が問題になりやすいことは事実のようですが…。

【2】正しいものを5個選べ。(10点)
1.常染色体劣性遺伝病では発端者の同胞が羅患する確率は50%である。
2.X連鎖劣性遺伝病の男性患者からは羅患児は生まれないが、男性患者を親に持つ女児は保因者になる。
3.優性阻害変異を持つアレルからは通常遺伝子のコードするたんぱく質が産生されない。
4.サラセミアはヘム合成異常に基づく遺伝性貧血症である。
5.サラセミアは地中海、中東、インド、中国、東南アジアなどに高頻度に見られるがこれはマラリアに対する抵抗性に関係がある。
6.βサラセミアの症状は小球性低色素性貧血であり、重症例では肝脾腫を伴う。
7.βサラセミアではHbA及びHbA2の低下が見られる。
8.HbH症はβサラセミアの一つである。
9.βサラセミアで最も重篤な病型は胎児水腫であり胎児は死亡する。
10.αサラセミアを合併したβサラセミアはβサラセミアだけに比べ軽症にとどまる。
11.αサラセミアの多くは点変異により起きる。
12.βサラセミアの多くは欠失により起きる。
13.プロモーター領域の点変異で起きるサラセミアは重症である。
14.イントロン内の点変異によりスプライシングの異常を来たすサラセミアは軽症である。
15.イントロン内の点変異でナンセンス変異を来たすこともある。
16.フレームシフト変異は3の倍数以外の数の塩基の挿入のみで起きる。
17.3'非翻訳領域の点変異によりpoly(A)の付加に異常を来たすことがある。
18.βサラセミアの治療は主に輸血やキレート剤の投与であり遺伝子治療が行われることもある。
<解答>5、6、10、14、18?
<解説>9月6日、単一遺伝子病(服巻先生)の講義プリント・15年度(5)参照。
1.×:25%。
2.×:男性患者の妻が保因者・患者であれば罹患児が生まれる。
3.×:優性陰性効果としてステップ内科1の308頁に掲載。異常タンパク産生に問題があります。
4.×:グロビン鎖の合成異常。
5.○
6.○:おそらく。
7.×:HbAが減少し、HbA2やHbFが上昇する。
8.×:αサラセミアのひとつ。
9.×:αサラセミアの重症型。
10.○:合成比が正常に近づくことで症状が軽快する。
11.×:欠失により起こる。
12.×:点変異により起こる。
13.×?
14.○?
15.×:ナンセンス変異は終止コドンができることによる。イントロン内の点変異では起こらない。
16.×:当然欠失でも起こります。
17.?:わかりません。
18.○:軽症なら特に治療は必要ない。骨髄移植が行われることもある。

【3】以下の遺伝子治療に関連した問いについて答えなさい。(4点)
1. 間違っている文章を2つ挙げよ。
a)臨床研究の第1相研究とは、安全性を検討する研究である。
b)臨床研究を行う際に遵守すべきはアテネ宣言である。
c)遺伝子治療はまだ臨床研究の段階であり、実際の薬剤にはなっていない。
d)遺伝子治療用のベクターの安全性はまだ明らかになっていない。
e)遺伝子治療の臨床研究の対象患者は癌患者だけである。
<解答>b、e
<解説>9月8日、遺伝子治療(谷先生)の講義ノート参照。
a)○:少数の健常男性に対して行う。
b)×:ヘルシンキ宣言。
e)×:他にもSCID−X1のような先天性免疫疾患など。

2. 正しい文章の組み合わせはどれか。
1) レトロウイルスベクターは分裂細胞で安定した発現が得られる。
2) レトロウイルスベクターによる発癌性は問題にならない。
3) リポフェクション法で造血幹細胞に効率よく遺伝子導入ができる。
4) 遺伝子治療法には、in vivo法とex vivo法がある。
5) 樹状細胞は強力な専門的抗原提示細胞であり、現在免疫療法の分野で注目されている。
a.1)2)5)  b.1)3)5)  c.1)4)5)  d.2)4)5)  e.3)4)5)
<解答>c
<解説>9月14日、造血幹細胞(楠原先生)の講義プリント参照。
2)×:遺伝子に組み込まれるが、その部位が選べないため、発癌の恐れがある。

【4】以下の遺伝性神経疾患について正しい組み合わせを選べ。(10点)
1.疾患の原因遺伝子を特定する上で正しいものはどれか。
a.原因となる蛋白や酵素、または異常に沈着する蛋白が解明されると次に連鎖解析が必要となる。
b.連鎖解析で臨床的に均一な遺伝性の疾患家系を探す必要がある。
c.連鎖が発見されるとゲノム上でその遺伝子座の周辺に大きな遺伝子の挿入や欠失がないか調べる。
d.その遺伝子座の周辺で発現している既知の遺伝子の発現を患者で調べる。
e.孤発例患者で遺伝子異常を解析することは無意味である。
1:abc  2:abe  3:ade  4:bcd  5:cde
<解答>4
<解説>10月15日、遺伝性神経疾患(谷脇先生)の講義ノート参照。
a.×:解明されないときに必要となる。

2.家族性アミロイドポリニューロパチーについて正しいものはどれか。
a.常染色体優性遺伝形式である。
b.運動障害主体の末梢神経障害を起こす。
c.30番目のVal→Met変異を有するtransthyretinがアミロイド蛋白や血液中に存在する。
d.サザンブロットで診断が可能である。
e.治療法として肝移植が有用である。
1:abc  2:abe  3:ade  4:bcd  5:cde
<解答>3か5
<解説>10月15日、遺伝性神経疾患(谷脇先生)の講義ノート参照。
b.×:初期に温痛覚が障害される。
e.○:異常タンパクの90%は肝臓で合成されるため。
b以外は正しいように思います。aの問題文は「常染色体」ではなく「X染色体」だったような気もするんですが…。(そうすると答えは5になります。)

3.遺伝性アルツハイマー病を起こしうるものはどれか。
a.アミロイド前駆蛋白  b.Presenilin  c.Apolipoprotein E  d.tau蛋白  e.α−synuclein
1:abc  2:abe  3:ade  4:bcd  5:cde
<解答>1
<解説>10月15日、遺伝性神経疾患(谷脇先生)の講義ノート参照。
アポリポタンパクEの対立遺伝子の一つで、ε4とよばれるものを持つ人は発症の危険が高いとされる。また、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子として始めに見つかったのがアミロイド前駆タンパク遺伝子の変異である。さらに、若年発症の家族性アルツハイマー病の研究でプレセニリンをコードする遺伝子が発見された。(朝倉p1990〜)

4.プリオン病について正しいものを選べ。
a.日本の孤発例では進行性の痴呆、ミオクローヌス、脳波(PSD)が特徴的である。
b.日本の孤発例では基底核や視床の病巣が主体である。
c.イギリスのnew variantは大脳皮質全体に病巣が及んでいる。
d.イギリスのnew variantは失調、痴呆、ミオクローヌスが特徴的である。
e.イギリスのnew variantは発症年齢が低い。
1:abc  2:abe  3:ade  4:bcd  5:cde
<解答>3
<解説>10月15日、遺伝性神経疾患(谷脇先生)の講義ノート、感染症・中毒「プリオン病(岩城先生)」講義プリント参照。
a.○:PSD=periodic synchronous discharge=周期性同期性放電
b.×:大脳皮質と小脳。MRI上は基底核と大脳皮質に変化を認める。
c.×:基底核、視床に強い。
d.○:他に抑うつ、しびれ、行動異常、性格変化など。
e.○:精神症状、感覚障害で発症。緩徐に進行。

5.triplet repeat diseaseの病名と繰り返し配列の位置について正しいものを選べ。
a.ハンチントン病 − 翻訳領域内
b.Friedrich失調症 − イントロン内
c.DRPLA − 5'非翻訳領域内
d.SCA−1 − 3'非翻訳領域内 
e.Myotonic dystrophy − 3'非翻訳領域内
1:abc  2:abe  3:ade  4:bcd  5:cde
<解答>2
<解説>10月15日、遺伝性神経疾患(谷脇先生)の講義ノート参照。
c.×:翻訳領域内
d.×:翻訳領域内

【5】以下の問いに対して答えなさい。(10点)
(A)Down症候群について正しいのはどれか。a−eから選択せよ。
1)高年出産で発生頻度が増加する。
2)転座型のときは、同胞発症の危険がある。
3)筋緊張が低下する。
4)目じりが下がっている。
5)腎奇形の合併が多い。
a.123  b.125  c.145  d.234  e.345
<解答>a
<解説>10月29日、染色体異常(原、井原先生)講義プリント参照、平成11年度W−Q3と同じ
2)○:21番染色体同士の転座がある場合、生まれてくる子供は全てダウン症になる。
4)×:目尻は上がりがち。
5)×:心奇形の合併が多い。

(B)性染色体の数の異常について次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。a−eから選択せよ。
1)ターナー症候群の代表的な核型は45,Xである。
2)ターナー症候群の症状のひとつは低身長である。
3)クラインフェルター症候群の代表的な核型は47,XXYである。
4)クラインフェルター症候群は男性不妊の主要な原因のひとつである。
a:134のみ  b:12のみ  c:23のみ  d:4のみ  e:1〜4のすべて
<解答>e
<解説>10月29日、染色体異常(原、井原先生)講義プリント参照
2)○:均整のとれた低身長。

(C)正しいものに○、誤っているものに×をつけなさい。
1.罹患患者がすべて女性の場合で、男子の流死産が多い場合はX連鎖優性遺伝病を考える。
2.X連鎖劣性遺伝病では、男−男伝達はない。
3.ミトコンドリア病ではすべて母系遺伝を示す。
4.伴性劣勢遺伝病である血友病は、女性に発症することはない。
5.ゲノムインプリンティングの異常による疾患には、Prader-Willi症候群、Angelman症候群がある。
<解答・解説>10月29日、染色体異常(原、井原先生)講義プリント参照
1.○:X染色体が1本の男児には症状が強く出て流死産になる。
2.○:父親から息子へは必ずY染色体が伝わるため。
3.×:これはミトコンドリア遺伝子に異常がある「ミトコンドリア遺伝病」の話。ミトコンドリアに異常がある遺伝性疾患でもミトコンドリア遺伝子が原因とは限らない。
4.×:保因女性と患者男性からは生まれることがある。ただし男性が多い。
5.○:ある遺伝子において、父親もしくは母親由来の対立遺伝子が不活化され、一方のみが活性化される。

【6】以下の遺伝子治療(造血幹細胞)に関する問いに対して答えなさい。(10点)
1.造血幹細胞を標的とした遺伝子治療に用いられる(オンコ)レトロウイルスベクターについて正しいものを二つ選べ。
 1)amphotropic virus vectorは齧歯類のみにしか感染しないので、ヒトの遺伝子治療には用いられない。
 2)導入した遺伝子は染色体DNAに組み込まれ、細胞分裂により失われることなく長期間安定に保たれる。
 3)遺伝子導入できる細胞は分裂細胞に限られている。
 4)ベクター粒子内のゲノムはDNAである。
 5)ベクター粒子内のゲノムは(オンコ)レトロウイルスのエンベロープをコードする遺伝子を含んでいる。
<解答>2、3
<解説>9月14日、造血幹細胞(楠原先生)講義プリント参照
1)×:ecotropicは齧歯類のみ。amphotropicは人を含む様々な種の細胞に感染。
4)×:RNAウイルス。
5)×:エンベロープをコードする遺伝子を除かないとウイルスが増殖するため。

2.造血幹細胞を標的とした遺伝子治療について誤っているものを二つ選べ。
 1)Graft versus host disease(GVHD)のリスクがない。
 2)体内で増殖する能力をもつウイルスベクターが用いられる。
 3)遺伝子導入はex vivo法で行われる。
 4)ヒトの多能性造血幹細胞の大部分は細胞周期上G0期にある。
 5)多能性造血幹細胞への遺伝子導入効率が高いことが不可欠である。
<解答>2、5
<解説>9月14日、造血幹細胞(楠原先生)講義プリント参照
2)×:増殖力はなくしてベクターとする。
4)○:そのため稀にしか増殖しない。
5)×:導入効率が低いのが課題。

3.SCID-X1に対する遺伝子治療に関する記載で正しいものを二つ挙げよ。
 1)原因となる遺伝子がコードするタンパク(γc)は血球系の細胞に広く発現している。
 2)γcの過剰発現を制御する方法が開発されている。
 3)正常γcを導入された細胞はin vivoで選択的増殖優位性を示す。
 4)正常γcを導入された細胞に対する免疫応答を抑えるため遺伝子導入細胞を移注する前に骨髄前処置が行われる。
 5)レトロウイルスベクターが宿主DNAに組み込まれる部位を予測することができるので白血病などの腫瘍化のリスクを避けることができる。
<解答>1、3
<解説>9月14日、造血幹細胞(楠原先生)講義プリント参照
2)×:過剰発現による明らかな危険性はない。
5)×:予測できない。

4.ADA欠損症の遺伝子治療に関する記載で正しいものを二つ選べ。
 1)末梢血T細胞は標的細胞としては用いられない。
 2)PEG−ADAを併用することにより、正常遺伝子導入細胞に選択的増殖優位性を賦与することができる。
 3)遺伝子治療に先立って、強力な骨髄前処置が必要である。
 4)ADA欠損症に伴う全身的な代謝障害も改善される。
 5)わが国で最初に行われた遺伝子治療の対象疾患である。
<解答>4、5?
<解説>9月14日、造血幹細胞(楠原先生)講義プリント参照
1)×:一定の臨床効果はある。
2)×?
4)○:肝臓の機能などが回復するとされる。
5)○?

5.下記の疾患の中で、これまでに造血幹細胞を標的としたヒトへの遺伝子治療が行われた疾患を二つ挙げよ。
 1)慢性肉芽腫症
 2)Bruton型無ガンマグロブリン血症
 3)高IgM症候群
 4)Nieman-Pick病
 5)白血球接着異常症
<解答>1、5
<解説>9月14日、造血幹細胞(楠原先生)講義プリント参照
ADA欠損症に対するものが多い。他にもSCID−X1など。

【7】以下の問いに関して答えなさい。(10点)
(1) 妊娠初期の出生前診断(染色体異常、DNA診断)に用いる検査法について正しいものをひとつ選べ。
a.羊水検査  b.胎児血検査  c.分割卵検査  d.絨毛検査  e.脱落膜検査
<解答>d
<解説>10月13日、周産期の遺伝子診療(月森先生)講義プリント参照、15年度(6)、11年度[と類似。
絨毛検査は10週頃、羊水検査は14〜18週(妊娠中期)、臍帯血は20週頃に行われる。

(2) 染色体異常について正しいものをひとつ選べ。
a.母体年齢が30歳における全染色体異常の発症率は約1%である。
b.卵子の成熟分裂異常によるものが多い。
c.ダウン症候群の染色体核型は46XOである。
d.口唇口蓋裂は常染色体劣性遺伝である。
e.母体年齢が30歳以上は染色体異常のスクリーニングの対象である。
<解答>b
<解説>10月13日、周産期の遺伝子診療(月森先生)講義プリント参照、15年度(6)、11年度[と類似。
a.×:1/385=約0.3%。
c.×:47,21trisomy
d.×:多因子遺伝病

【8】以下の遺伝カウンセリングに関する問いに関して答えなさい。(10点)
1.一般的に、遺伝相談で取り上げられる項目を選べ。
 1)遺伝病の診断・治療・予後
 2)家系内に遺伝病がある場合の、子どもにおける再発危険率
 3)出生前診断についての知識
 4)血族結婚に際しての遺伝病の罹患危険率
 5)家族歴のない先天奇形や染色体異常の同胞への再発危険率
a:1345  b:1235  c:2345  d:1234  e:1〜5すべて
<解答>e
<解説>11月4日、遺伝カウンセリング(斉藤先生)講義プリント参照

2.わが国で遺伝相談が十分に普及していない原因と考えられるものはどれか。
 1)日本では戸籍制度が完備していて親子関係などにこれまで問題が少なかったため、一般市民の遺伝への関心が低かった。
 2)医学教育において、遺伝学が重視されていなかったので、遺伝相談を担当できる医師が少ない。
 3)遺伝病の存在によって家系がけがれたといった先入観のために、医学的な対応を求めるよりも、隠す傾向が強かった。
 4)遺伝相談には健康保険での診療が適用されない。
 5)日本は単一民族のため、他の国に比べて遺伝病患者の数がはるかに少なく、遺伝相談の必要性も低かった。
a:123  b:125  c:245  d:234  e:345
<解答>d
<解説>11月4日、遺伝カウンセリング(斉藤先生)講義プリント参照

3.遺伝相談の時カウンセラーの取る態度としてふさわしくないものを選びなさい。
 1)得られた危険率に関する情報は全て正しく説明する。
 2)遺伝病の再発を防ぐために、特定の方法を指示する。
 3)原因不明の先天異常症は経験的再発危険率に基づいて説明する。
 4)再発危険率のみでなく、疾患の症状、予後、治療法などについても説明する。
 5)どのような場合でも、近親婚は避けるように強く説明する。
a:12  b:13  c:45  d:25  e:35
<解答>d
<解説>11月4日、遺伝カウンセリング(斉藤先生)講義プリント参照

4.次の遺伝カウンセリングに関する記述のうち、正しいものはどれか。
 1)遺伝カウンセリングとは、単なる情報提示ではなく、心理感情的な面に注意しながら最終的に個人や家族が自ら意志決定できるように支援するコミュニケーション過程である。
 2)遺伝子検査の結果を伝えるときは、クライエントのショックを避けるために、極力短時間で話すのが原則である。
 3)遺伝カウンセリングは遺伝病を減少させるための予防医学の一つであり、国を挙げての取り組みが必要である。
 4)遺伝カウンセリングは先天異常を中心として小児科領域および産科領域で行われている医療行為である。
 5)わが国においてはクライエント自身が一人で決定を下すのは困難なので、出来るだけどうしたらよいか具体的に誘導すべきである。
a:1  b:2  c:3  d:4  e:5
<解答>a
<解説>11月4日、遺伝カウンセリング(斉藤先生)講義プリント参照

5.次の遺伝カウンセリングのうち、不適切なものを選びなさい。
 1)いとこ同士のカップルが遺伝カウンセリングのために来院した。近親婚では、常染色体劣性遺伝病の頻度が高くなるので、結婚しないよう助言した。
 2)クライエントは男性。今度結婚するフィアンセは健康だが、彼女の弟がHurler病に罹患している。結婚した場合、同じ病気の子が生まれる可能性がどの程度あるか知りたくて来院した。再発危険度はそれほど高くないことを説明し、安心してもらった。
 3)父親が子どもを連れて来院。親子鑑定を希望したのでDNA fingerprinting法を用いて検査した。
 4)ある疾患の間接的DNA診断の過程で、父と子に矛盾が生じ、子の父は本当の父でないことが判明したが、この結果を子の父に伝えなかった。
 5)46,XY,add(4)(p16)の核型を有する児の両親の染色体を調べた結果、父は正常であったが、母の核型は46,XX,t(4;9)(p16;p22)であった。父と母どちらに異常があったのか知らせないで欲しいという要望があったので知らせなかった。
a:123  b:125  c:245  d:234  e:345
<解答>a
<解説>11月4日、遺伝カウンセリング(斉藤先生)講義プリント参照、11年度W−Q6

【9】遺伝子多型Polymorphismとは何か、そしてその生体における意義は何かについて述べよ。(10点)  ※この大問で解答用紙1枚。
<解答例>9月4日、多因子遺伝病の考え方(出原先生)の講義プリント参照
 遺伝的多型とは、同じ生物種内においてそのゲノム上に2種以上の対立遺伝子が存在する場合をいい、通常、少ない方の対立遺伝子の頻度が1%以上の場合をいう。
 具体的には、塩基配列中のある1つの塩基が他の塩基に変わる一塩基多型(SNP、single nucleotide polymorphism)や、数個の塩基の繰り返しで、人によってその繰り返し数が変化する可変数直列配列(VNTR、variable number of tandem repeat)などがある。
遺伝的多型は病気のなりやすさや、薬剤に対する感受性に影響を与えることがあるほか、重要な遺伝マーカーであり、血液型判定、個人識別、親子鑑定、遺伝病の診断、病因遺伝子の同定、家系分析、人類遺伝学、集団遺伝学など幅広い分野で活用されている。
 特に薬剤感受性との関係についての研究が現在盛んに行われており、将来的には遺伝子多型をあらかじめ調べ、感受性に応じて投与量を増減したり、副作用が予想される場合は他の薬剤を使用したりするなど、個人によって治療を変える「テーラーメード医療」につながると期待されている。

【10】次の設問につき知るところを記せ。(10点)  ※この大問で解答用紙1枚。
a.関節リウマチの発症に遺伝的因子が関連すると考えられる根拠は何か?
<解答例>9月14日、免疫遺伝学(大塚先生)の講義プリント参照
 双生児における発症一致率比較。遺伝情報が全く同じ一卵性双生児において、関節リウマチを一方が発症した場合にもう一方も関節リウマチを発症する割合は12〜15%とされるのに対し、二卵性双生児では3%程度と、有意な差が認められるため、関節リウマチの発症には遺伝的因子が関連していると考えられている。

b.シクロオキシゲナーゼ(COX)には2種類あるが、各酵素の遺伝子の特徴は何か?
<解答例>9月14日、免疫遺伝学(大塚先生)の講義プリント参照
 COX−1は血小板、血管内皮細胞、胃粘膜、腎臓をはじめ、ほとんどの組織に構成的に発現している。つまり、何らかの刺激物質によって産生が促されるわけではなく、変動の範囲も2〜4倍にとどまる。役割ははっきりわかっていないが、臓器血流の維持など、生理的機能を担っていると考えられている。
 一方、COX−2はマクロファージ、繊維芽細胞、滑膜細胞、前立腺、卵胞などに誘導的に発現する。誘導を促すのはサイトカインなどの物質で、変動範囲は10〜80倍にも達する。グルココルチコイドによって発現が抑制されるのも特徴で、炎症惹起、細胞増殖、排卵などの作用を持つとされる。

【11】遺伝子治療に対して期待するところを、現在の医療的背景とともに述べよ。(6点)  ※この大問で解答用紙1枚。
<解答例>9月18日、遺伝子治療(谷先生)の講義ノート参照
 細胞への効率的な遺伝子導入法が開発されてきた昨今の状況を背景として、既存の治療法に限界があり、疾患原因の遺伝子が明らかにされた疾患に対して、遺伝子治療が検討されるようになってきた。現在遺伝子治療の研究対象として考えられている疾患は、AIDSなどの感染症、筋ジストロフィーなどの単一遺伝性疾患、冠動脈疾患のような慢性疾患、そして悪性腫瘍と非常に多岐にわたる。遺伝子治療には染色体に遺伝子が組み込まれることにより、持続的な効果が期待できる、などの点で患者からも大きな期待が寄せられている。
 ただし、現在の遺伝子治療に主に用いられているウイルス由来のベクターは、その安全性が完全に確立されておらず、X−SCIDに対する遺伝子治療で白血病が発症した、といった報告もある。標的細胞の分裂が盛んでないと導入しにくいなどの問題と併せ、これから解決すべき課題も多い。
(解答欄が1枚まるごとだったことを考えるとこれでは不足かもしれません。それぞれの疾患に対して遺伝子治療がどんな効果を発揮することが期待されるか、などを記述すれば記述量は増えますが…。)

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