救急医療 授業ノート 「中枢神経系救急疾患」(10月27日、宮園先生)

意識障害、昏睡の診断手順
 意識障害患者(状況の把握、意識障害程度の判定)
 →バイタルサインのチェック(静脈・気道確保、採血、薬剤投与)
 →全身的診察、神経学的診察
 →補助診断検査(画像診断、腰椎穿刺、脳波、心電図)
 →診断、治療(家族への説明)

意識障害の救急処置
 1.バイタルサインのチェック
 2.救命処置:ABCD survey
  Airway
  Breathing
  Circulation
  Differential diagnosis
  ※循環器系の場合はDifibrillation
 3.尿カテーテル留置
  意識障害患者=尿閉による膀胱充満=脳圧亢進

状況の把握、病歴聴取
 Differential diagnosis
  発症状況、発見時の状況
  全身疾患の有無(糖尿病、心肺疾患、悪性腫蕩など)
  脳血管障害、てんかんの既往、精神科疾患の有無
  常用薬の有無と種類

意識障害を生じる主な原因

代謝性疾患および脳全般性疾患…60% 頭蓋内病変…40%
薬物、毒物
アシドーシス,アルカローシス
脳炎、髄膜炎
高血糖、低血糖
ビタミンBl欠乏
副腎不全
高血圧脳症
副腎皮質機能亢進
肝性脳症
低体温、高体温
尿毒症
てんかん発作
電解質異常
くも膜下出血
低酸素脳症
脳虚血
高炭酸血症
頭蓋内圧亢進
低炭酸血症
閉鎖性頭部外傷
DIC
脳内出血
硬膜下・硬膜外出血
脳梗塞
脳腫瘍
脳膿瘍
水頭症
静脈洞閉塞
下垂体卒中
心因性…<1%
うつ病
緊張病
詐病
ヒステリー

意識琿害を生じる代表的な中枢神経系疾患
 脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)
 頭部外傷(急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷)
 その他
  急性水頭症
  てんかん
  脳炎・髄膜炎

神経学的診察
 1)意識障害のレベルの判定
 2)呼吸状態
 3)瞳孔、眼位・眼球運動
 4)眼底
 5)脳幹反射(対光、角膜、咽頭反射)
 6)姿位(除皮質硬直、除脳硬直)
 7)四肢の動き
 8)筋トーヌス
 9)腱反射の異常、病的反射の有無
 10)髄膜刺激症状

Japan Coma Scale(JCS)
 意識清明:0
 T:刺激しないでも覚醒している状態
   1.意識清明とは言えない、今ひとつはっきりしない。
   2.見当識障害がある、時・人・場所が判らない。
   3.自分の名前,生年月日が言えない。
 U:刺激すると覚醒する状態
   10.普通の呼びかけで容易に開眼する。
   20.大きな声または体を揺さぶることにより開眼する。
   30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する。
 V:刺激しても覚醒しない状態
   100.痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする。
   200.痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる。
   300.痛み刺激に全く反応しない。

Glasgow Coma Scale(GCS)
 1. 開眼(eye opening,E)
  自発的に可:4
  呼びかけに応じて:3
  痛み刺激に応じて:2
  なし:1
 2. 発語(verbal response,V)
  オリエンテーションよし:5
  混乱:4
  不適当な発語:3
  発音のみ:2
  なし:1
 3. 最良の運動機能(motor response,M)
  命令に応じて可:6
  局所的にある:5
  逃避反応として:4
  異常な屈曲運動:3
  伸展反射:2
  なし:1
 ※意識清明なら、E4 V5 M6 となる。

脳ヘルニアの病態
 高度の頭蓋内圧亢進の出現によって脳組織が偏位、移動し、脳組織を区画している隔壁の間隙から押し出される現象。中枢神経系救急疾患で最悪の病態で、1)2)は致死的である。
  1)テント切痕ヘルニア(鉱ヘルニア)
  2)大後頭孔ヘルニア(小脳扁桃ヘルニア)
  3)帯状回ヘルニア
   脳ヘルニアをきたすほどの頭蓋内圧亢進状態→血圧上昇、徐脈(Cushing現象)
   ※瞳孔不同などをチェックして早期発見が必要

脳血管障害/脳卒中とは?
 脳卒中とは
脳の血管が詰まったり(梗塞)、あるいは破れたり(出血)して脳の機能が障害され、急に手足が痺れたり、喋れなくなったり、意識がなくなったり、あるいはめまいがしたり、激しい頭痛がする発作の総称。脳が急に(卒然と)、悪い風に当たる(中る)ためにおこる病気と解釈してこのような名前が付いた。
cf.中風

脳血管障害/脳卒中とは?
 脳血管障害とは
  脳の血行障害あるいは血流異常が原因でおこる疾病、病態。無症候性も含まれる。
 脳卒中
  突然に発症し、症状を有する脳血管障害。すなわち急性期の血管障害。
  Apoplexy(ギリシャ語=打ち倒される)、Stroke、Brain attack

脳血管障害の分類
 1)無症候性(本人の症状なし)
 2)限局性脳障害
  (1)一過性脳虚血発作
  (2)脳卒中(Stroke)
   a)くも膜下出血(最重要!!)
   b)脳出血
   c)動静脈奇形からの頭蓋内出血
   d)脳梗塞
 3)血管性痴呆
 4)高血圧性脳症

脳卒中の病型分類・脳卒中の病型性別比

脳卒中の症状
 意識障害…清明から昏睡まで様々
 運動障害…片麻痺、半身不随、脱力
 感覚障害…手足、顔面のしびれ、ジンジン感
 言語障害
   失語症(失語症の種類は重要!!)
    言葉が出てこない(運動性失語症)
    他人の言うことが理解できない(感覚性失語症〕
    両方障害(全失語症)
   構音障害
    口や舌の麻痺によって発音がしにくくなる
 視野の障害…見え難い部分がある、視野欠損
 記憶障害
 感情の瞳害
 思考能力の障害
 その他…めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、ふらつき、歩行障害

脳卒中の病型別神経症状

脳卒中一般の危険因子
・ 高血圧症(出血性、虚血性脳卒中)
・ 糖尿病(虚血性脳卒中)
・ 高脂血症(虚血性脳卒中)
・ 不整脈、心房細動(虚血性脳卒中)
・ 喫煙(出血性虚血性脳卒中)
・ 飲酒(出血性、虚血性脳卒中)

脳卒中・脳血管障害の頻度
・ 死亡率は年々減少傾向にある(悪性新生物、心疾患についで3位)
・ 脳出血による死亡率が特に減少している
・ 死亡率は減少したが、患者数は増えている

外科治療の対象となる脳卒中と治療方針
・ 脳動脈瘤−動脈瘤クリッピングorコイリング
・ 脳動静脈奇形−摘出術、塞栓術、ガンマナイフ
・ 脳内出血−血腫除去術
・ 脳血栓−頭蓋内外血管吻合術(STA−MCA bypass)
・ 頚部頸動脈狭窄−内膜剥離術(CEA)
・ モヤモヤ病−頭蓋内外血管吻合術or間接複合バイパス術

くも膜下出血
 発生頻度:年間人口10万人に対して11〜19人
 原因
  脳動脈瘤破裂(80%)
  脳動静脈奇形(15%)
  原因不明
 経過
  発症すれば15%が病院受診前に死亡
  30%が破裂後48時間以内に死亡

くも膜下出血の性別年齢分布(より高齢な方にピークがあるのが女性)

くも膜下出血
 脳動脈瘤好発部位
 Willis動脈輪前半部(90%)
  前大脳動脈領域:40%
  内頚動脈領域:30%
  中大脳動脈領域:20%
 椎骨−脳底動脈領域(10%)

脳動脈瘤症例の重症度分類
 Grade0:非破裂例
 GradeT:無症状かごく軽度の頭痛、項部硬直
 GradeU:中等度から高度の頭痛、項部硬直はあるが脳神経麻痺以外の神経学的脱落症状のないもの
 GradeV:傾眠状態、錯乱状態、または軽度の局所神経症状
 GradeW:意識昏迷、中等度から高度の片麻痺。早期の除脳硬直や自律神経障害を認めることがある
 GradeX:深昏睡で除脳硬直を示し、瀕死の様相を示す

CT検査、脳血管撮影検査などについて写真がありますが、不鮮明ですので教科書を参照してください。

脳動脈瘤コイリング術
・ 高齢者
・ 全身状態が不良の症例
・ クリッピング手術の危険を増大させる合併症を持つ症例
・ クリッピング手術の困難な部位の動脈瘤

脳内出血

高血圧性脳内出血
・ 50〜60歳代が約半数を占める
・ 高血圧、動脈硬化が危険因子
・ アルコール常飲者で、肝機能障害のある、男性
・ 死亡率は約20%(1960年代は約60%)
・ 治療選択の判断が難しい
内科治療か、外科的治療か?(開頭血腫除去か、定位的血腫除去か?)
・ 早期離床、早期リハビリテーションが重要

脳内出血の血腫部位

閉塞性脳血管障害

脳梗塞の臨床型分類
ラクナ梗塞
多くは穿通枝という細い細動脈が閉塞することで起きる。限局した範囲に脳梗塞が起き、麻痺は残ることがあっても命に関わる脳梗塞に発展することは通常無い。
アテローム血栓性梗塞
脳血管にアテローム性の動脈硬化が起きて進行し、これが原因で脳血管が閉塞して発症する。急に症状が完成してしまう場合もあるが、発症後徐々に症状が進行し、数日かけて完成する場合もある。ラクナ梗塞より重症。
心原性梗塞
心臓などから血栓が塞栓子として流れてきて、脳血管を突然閉塞する。早い経過で重症になることが多く、広範囲な脳梗窪が起きて、しばしば死亡する。

脳梗塞の臨床型分類

脳梗塞発症の時間帯分布

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