老年病学 平成14年度本試験

下の問題では11/4、11/9、11/30の内容がありません。11/4の老化学説2つとそれぞれの根拠は重要です。11/30はスライドのみでしたので、問題の最後にノートを付け足してあります。他は授業プリントを参照してください。

【2】(整形外科:岩本教授) → 整形外科 岩本先生  12/14 プリント
(1)変形性関節症の病態について正しいものを2つ選べ。
 1.変性により軟骨のプロテオグリカン合成が上昇する
 2.関節液内のヒアルロン酸の濃度が増加する
 3.軟骨のコラーゲン分解が減少する
 4.骨嚢胞形成は、軟骨の線維化の後に発生する
 5.軟骨下骨の象牙質化が発生する

解説 1× 上昇→低下。  2× 増加→減少。  3× 分解→合成。  4○  5○ 
解答 4,5

(2)変形性膝関節症について正しいものを2つ選べ。
 1.X線所見では、脱臼を伴う高度の骨破壊を認める
 2.膝蓋骨跳動で関節水腫の存在を知る事ができる
 3.夜間痛が初発症状である
 4.膝関節の歩行時動揺性の頻度は、lateral thrustがmedial thrustより多い
 5.膝の外反変形を伴う症例が多い

解説  1× p11右下。関節裂隙の狭小化が見られる。他に軟骨下骨の硬化像、骨棘形成、関節内遊離体など。
    2○ p11左下。膝蓋上嚢の腫脹がみられ、検者の手で膝蓋上部を圧迫して下方に液体を押しやると膝蓋骨は浮き上がった状態になる。
    3× p11右中。初発症状は、歩いた時(特に歩きはじめ)の痛み。安静時痛は進行したものでみられる。
    4○ lateral thrustとは歩行時に踵接地直後に膝が急激に外側へ動揺する現象で、内反変形に見られる。medial thrustはその逆(内側へ動揺する)で、外反変形に見られる。つまり、変形性膝関節症では内反変形が多い。(標準整形外科学p552,531)
    5× 内反変形が多い。
解答 2,4

(3)骨粗鬆症の薬物療法について、正しいものを3つ選べ
 1.尿中デオキシピリジノリンは、ビスフォスフォネートの効果判定に有用である
 2.活性化ビタミンD3製剤は、骨粗鬆症による骨折の頻度を減少させる
 3.骨塩量値がYAMの82%であれば、薬物療法の適応である
 4.カルシトニンには、腰背部痛の改善効果がある
 5.ビスフォスフォネートは乳癌の発生率を増加させる。

解説 授業ではここまで詳しくやらなかったと思いますが・・・
   1○ 治療薬の選定や効果判定に骨代謝マーカーが用いられる。ビスフォスフォネートの効果判定には、尿中デオキシピリジノリン(DPD)の他、尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)、血清中骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)も用いられる。
   2○ p4左下。エストロゲン、活性化ビタミンD3、ビスフォスフォネートの3つは骨折予防の効果が証明済み。
   3× p2右中。薬物治療は骨粗鬆症の診断が下されてから適用されるので、YAM70%未満かと。しかし、あくまで運動療法、食事療法が予防や治療の原則です。
   4○ 骨吸収を抑えるカルシトニンは鎮痛作用も有し、腰背部痛を軽減する。
   5× エストロゲンが乳癌の発生率を増加させる。ビスフォスフォネートは乳癌の骨転移に対して治療薬として使用される。
解答 1,2,4

(4)骨粗鬆症関連骨折である大腿骨頸部骨折について正しいものを3つ選べ
 1.大腿骨頸部骨折の原因は、立った高さからの転倒が最も多い
 2.大腿骨頸部骨折の最好発年齢は80〜90歳である
 3.大腿骨頸部骨折は屋内での発生が意外に多く、全体の1/3である
 4.ヒッププロテクターは、大腿骨頸部骨折の発生を防止する
 5.78歳女性の大腿骨頸部骨折の手術では、compression hip screwを用いる

解説 1○ p5左中。立った高さからの転倒が69.56%でおよそ7割。
   2○ p5右上。(印刷が見えませんが)80歳代女性に好発する。
   3× p5左中。転倒場所は屋内が64.1%でおよそ全体の2/3。 
   4○ p3右下。臀部プロテクターで予防可能。
   5△ p5右中左下。大腿骨頸部の外側骨折にCompression hip screwによる骨接合術、内側骨折に人工骨頭置換術を用いる。外側骨折は、大腿骨頸部を走る血管の損傷がないため、固定するだけで治癒するが、内側骨折は血管も損傷されるため、置換術が必要。
解答 1,2,4

【3】正しいものには〇、間違っているものには×をつけよ
 1.加齢に伴い、相対的臓器重量の減少がもっとも顕著なのは胸腺である。
 2.負の選択は胸腺皮質で、正の選択は胸腺髄質で起こる。
 3.高齢者においてTリンパ球の数は若年者と比較して減少している。
 4.マイトジェンに対する活性を指標とした場合、高齢者において、T細胞の反応低下がB
細胞のそれと比較して顕著である。
 5.高齢者(60歳以上)においては、若年者より血清IgG値が低下する傾向にある。
 6.高齢者T細胞においてT細胞受容体刺激後のZAP70のチロシンリン酸化が亢進している。
 7.ワクチン接種後、一般に高齢者は若年者に比べて接種抗原に対して低抗体価を示す。
 8.高齢者において抗核抗体の頻度は若年者に比べて有意に高い。
 9.高齢者は易感染性を示すため、虫垂炎の頻度が若年者に比べて多い。
 10.抗生剤の普及した現代において、肺炎は高齢者の死因としてもはや憂慮すべき疾患ではない。

解説・解説 H16年度の講義で、免疫についてのものはありませんでした。11/4プリント2枚目Qで少し触れてあります。
   1.○ 
   2.× 正の選択が皮質で起こり、負の選択は髄質で起こります。
   3.○ T細胞数は低下しますが、B細胞数はあまり変化しません。ヘルパーT細胞については、Th1(細胞性免疫)↓でTh2(液性免疫)優位となります。 
   4.○ マイトジェンは、休止期にあるリンパ球を抗原非特異的に刺激して芽球化させ,分裂増殖を促す物質の総称です。高齢者では T細胞機能の低下が著しく、マイトジェンによる増殖反応も低下します。B細胞はあまり変化しません。
   5.× IgG↑、IgM不変、IgA不変、外来抗原に対する抗体産生↓、自己抗体産生↑です。(医系免疫学 p505)
   6.× ZAP70によるチロシンリン酸化が低下するため、細胞の活性化に必要な反応が低下し、分裂誘導物質による増殖反応が低下するのです。(医系免疫学p504-506)
   7.○ 抗原に特異的なB細胞の減少、ヘルパーT細胞の不全のため、ワクチン接種への抗体応答も低下します。(医系免疫学p506)
   8.○ 抗核抗体・抗サイログロブリン抗体・リウマトイド因子などの自己抗体の出現頻度は、年齢とともに高くなります。(医系免疫学p506)
   9.× 急性虫垂炎の好発は粘膜下リンパ濾胞の増生が盛んな10〜20歳代である。高齢者の虫垂炎については、高齢者は全体的に鈍くなっているので、訴えが曖昧で放置されやすいことが問題。そのため重篤になってから気づかれること多い。
   10.× 肺炎は高齢者の死因のNO.1です。(11/4 授業ノートより)

【5】(循環器内科:下川宏明) → 循環器内科 下川先生 11/24 プリント
1.老年者の心疾患の一般的特徴について正しい組み合わせのものを次から選べ。
 1)心不全を生じやすい。
 2)症状が非典型的である。
 3)薬物の副作用が生じやすい。
 4)多数の他の疾患を合併していることが多い。
(a)1,3,4 (b)1,2 (c)4のみ (d)すべて

解説 1枚目右半分  1)○ 2)○ 3)○ 4)○
解答 d

2.無症候性心筋虚血を生じやすい病態の組み合わせで正しいものを次から選べ。
 1)加齢
 2)高脂血症
 3)糖尿病
 4)心筋梗塞後
(a)1,3,4 (b)1,2 (c)4のみ (d)すべて

解説 2枚目右中ほど 1)○ 2)× 3)○ 4)○   糖尿病・心筋梗塞後・加齢・冠動脈バイパス術後  の4つです。
解答 a

3.老年者心不全の悪化因子の組み合わせで正しいものを次から選べ。
 1)感染症
 2)不整脈
 3)低血糖
 4)多血症
(a)1,3,4 (b)1,2 (c)4のみ (d)すべて

解説 3枚目右下 1)○ 2)○ 3)× 4)×  悪化因子としては、感染症(殊に呼吸器感染症)・心筋虚血発作・不整脈(心房細動・頻拍、除脈性不整脈)・貧血・医原性誘因の輸液過剰や薬剤性(βブロッカー、ジギタリス中毒など)・治療不従順(intolerance)などです。
解答 b

4.老年者の心疾患の治療について正しい組み合わせにものを次から選べ。
 1)圧受容体や血管反応性が低下しているため、ニトログリセリンの舌下は座位で行う。
 2)肝機能や腎機能の予備能が低下しているので、薬物治療は少量から開始する。
 3)冠動脈インターベンション後の再狭窄率は、年齢による影響はない。
 4)老年者の無症候性の洞徐脈は、一般的に良性で治療は必要ない。
(a)1,3,4 (b)1,2 (c)4のみ (d)すべて

解説 2枚目右下 1)○ 2)○ 3)○ 冠動脈インターベンションPCI (Percutaneous Coronary Intervention)=経皮冠動脈形成術
    4枚目 4)○
解答 d

【6】(神経内科:八木先生) → 神経内科 大八木先生 12/2 プリント
1.アルツハイマー病で障害されやすい記憶はどれか?
 1)長期記憶
 2)記銘力
 3)短期記憶
 4)エピソード記憶
 5)手続き記憶

解説 プリント左上。ADでは、長期記憶よりも短期記憶が障害されやすい。「いつ」「どこで」「何があったか」といった過去の体験を説明できるエピソード記憶が障害され、また記銘力障害(=物忘れ)もおこる。
解答 2,3,4

2.65歳以上人口の痴呆患者の頻度はどれか?
 1)0,5%
 2)1%
 3)5%
 4)10%
 5)25%

解説 プリント左中ほど。65歳以上人口の4-6%(100万人)
解答 3

3.老年者の痴呆の原因で最も頻度が多いものは?
 1)ピック病
 2)アルツハイマー病
 3)ハンチントン病
 4)進行性核上性麻痺
 5)梅毒

解説 プリント左中ほど。痴呆の原因のうち、脳血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆が90%を占める。(某サイトによると、「以前本邦では脳血管性痴呆が多いと指摘されていましたが、脳卒中等の予防が進んで来て、現在では、アルツハイマー型老年痴呆と脳血管性痴呆と同程度の頻度とされています。」だそうです。)
解答 2

4.アルツハイマー病と脳血管性痴呆の鑑別に役立つものは?
 1)頭部  (「脳波」の間違いでしょうか・・・?)
 2)頭部MRI
 3)SPECT
 4)血液生化学
 5)脳髄液検査

解説 「CTやMRIのような画像診断装置や脳血流機能を評価するPETやSPECTを用いると容易に両者を鑑別することが出来ることもあります。」
     http://tokorozawa.tmg.gr.jp/hokensinpou/chiouwomegutte.htmlより。
解答 2,3

5.アルツハイマー病の脳で見られる病理所見はどれか?(3つ)
 1)アミロイド沈着
 2)ballooned neuron
 3)Lewy小体
 4)神経細胞脱落
 5)神経原線維変化

解説 アルツハイマー病でみられる病理所見としては、老人斑(主にアミロイドβ蛋白の沈着)、神経原線維変化が重要。Meynert基底核の神経細胞変性・脱落もある。他にびまん性の大脳萎縮、顆粒空胞変性、平野小体など。(病態生理できった内科学 Part5 神経疾患p201  以下病態神経)
    1)○  2)× プリント右中ほど。ballooned neuronは皮質基底核変性症でみられる所見。  
    3)× プリント右中ほど。Lewy小体はその名の通りLewy小体型痴呆で見られる所見。    
    4)○  5)○
解答 1,4,5 

6.アルツハイマー病の治療薬はどれか?
 a.L-ドーパ  b.MAO阻害薬  c.選択的セロトニン再取り込み阻害薬
 d.抗コリン薬  e.AChE阻害薬

解説 プリント左下。アルツハイマー病では、アセチルコリン作動性神経を出すMeynert基底核が変性、脱落します。これによるAch低下を改善するためにAchE阻害剤を用いるのです。
解答 e

7.血管性痴呆に当てはまるものはどれか?
 1)高血圧が多い
 2)階段状症状変化
 3)腱反射亢進
 4)多幸的
 5)失行・失語・失認がしばしばみられる

解説  1)○ プリント右上。高血圧、心疾患、高脂血症、糖尿病、喫煙などが危険因子です。
    2)○ プリント右上。
    3)○ プリント右上。腱反射亢進・病的反射陽性、初期から巣症状、仮性球麻痺、早期から尿失禁、などは血管性です。
    4)× プリント右上。多幸的なのはアルツハイマー。
    5)× プリント右上。健忘→失語・失行・失認となるのがアルツハイマー。
解答 1,2,3

8.感染体による痴呆疾患を二つ選べ。
 1)進行麻痺
 2)進行性核上性麻痺
 3)正常圧水頭症
 4)アルツハイマー病
 5)クロイツフェルト・ヤコブ病

解説 プリント左の表。
    1)感染症 神経梅毒の病型は無症候型、髄膜血管型、実質型に分けられ、実質型はさらに脊髄癆、進行麻痺、ゴム腫に分けられる。
    2)変性疾患  3)その他  4)変性疾患  5)感染症 
解答 1,5

9.初期よりパーキンソン症状を呈するものはどれか?二つ選べ。
 1)進行麻痺
 2)進行性核上性麻痺
 3)Lewy小体型痴呆
 4)皮質基底核変性症
 5)クロイツフェルト・ヤコブ病

解説 1)× 主要症状は痴呆であるが,神経衰弱様,躁うつ病様,緊張病状態,幻覚,妄想,意識障害など多彩な精神症状をみる。
   2)× 垂直注視麻痺,項部ジストニー,仮性球麻痺,錐体外路徴候,痴呆を主徴とする。男性にやや多く,40〜60歳代に,不安定な歩行,言語障害,性格変化などで徐々に発症する。
   3)○ プリント右中ほど。
   4)○ 同上。
   5)× 亜急性の経過をとる痴呆,錐体路・錐体外路症状,ミオクローヌスが主な徴候であり,時に視覚失認,小脳症状,筋萎縮を呈する。中年以上に好発し,100万人に1人の発症率で家族発症も知られている。脳波の周期性同期性発作波periodic synchronous discharge(PSD)が特徴的。

10.せん妄に当てはまるものはどれか?(3つ)
 1)発症は緩徐
 2)持続、固定性
 3)錯覚、幻覚が見られる
 4)夜間精神運動興奮
 5)環境の変化でも生じる

解説 プリント右下。

  せん妄 痴呆
1)発症 急性or亜急性 緩徐
2)経過 一過性、動揺性 持続性・固定性
3)知覚障害 錯覚・幻覚 目立たない
4)精神運動興奮 しばしば夜間 ない

5)せん妄の発生要因としては、身体因(全身状態の悪化、不眠、疼痛)、心因(環境の変化、不安、家族の心配)などがある。
解答 3,4,5

【7】(産婦人科:野崎先生)正しいものに〇、間違っているものに×をつけよ。  → 産婦人科 野崎先生 12/21 ノート
 1.初経年齢の若年齢化に伴い閉経年齢も年々若年齢化している。
 2.閉経後数年間を更年期という。
 3.更年期以降エストロゲンが減少し、FSHが上昇する。
 4.更年期以降エストラジオールは低下する。
 5.hot flushは更年期の血管運動神経症状である。
 6.エストロゲンはLDL受容体を増加させる。
 7.エストロゲンはNOを減少させる。
 8.閉経後骨粗鬆症は加齢による骨量減少が主因である。
 9.HRTにおけるプロゲステロン剤の併用は乳癌予防が目的である。
 10.SERMは乳癌を増加させる。

解答・解説 似たような問題が出ると思われます。
   1.× 閉経年齢は50歳で変化していません。人種差、地域差もなく、片側卵巣婦人もとにかく50歳です。
   2.× 閉経をはさんだ前後数年間を更年期といいます。
   3.○ エストロゲンが減少し、FSH、LHが上昇しているの確認して閉経と診断します。
   4.○ エストラジオール(E2)、エストロン(E1)ともに低下します。 (エストロゲンは、E1,E2,E3の総称です。)
   5.○ いわゆる'ほてり'や'のぼせ'のことです。
   6.○ LDL受容体を増加させ、肝臓へのLDL取り込みが促進される結果、血中LDLコレステロールは低下します。
   7.× NO↑、血管緊張↓、血管内膜保護、PGI2↑、TXA2↓、PAI↓、フィブリノゲン↓、HDLコレステロール↑、LDLコレステロール↓
   8.× エストロゲンによる骨形成促進、骨吸収抑制、腸管からのCa吸収促進などの効果がなくなるためです。加齢による骨量減少は老人性骨粗鬆症。
   9.× HRT(ホルモン補充療法)におけるプロゲステロン剤の併用は、エストロゲン単独使用で起こる子宮内膜増殖症を予防するためです。
   10.× SERM(選択的エストロゲン受容体作動薬、サーム)は、乳癌などには抑制的に働きます。エストロゲンの望ましい効果のみをもつ薬と考えていいと思います。

以下の内容で10問中8問はとけるらしいです。
・エストロゲンは更年期以降急激に減少する。
・更年期障害:せまい意味ではhot flushのこと。広い意味では以下の更年期に発症する障害・疾患も指す。
・高脂血症→動脈硬化→心血管系疾患
・骨量減少→骨粗鬆症
・短期記憶障害、アルツハイマー痴呆
・皮膚の衰え(コラーゲン↓、ツルゴール=緊張度↓)
・老人性膣炎、性交障害、尿失禁

Q. E1・E2ともに減少していれば閉経と診断できる。 → × FSH、LHの上昇も確認しなければなりません。
Q. 原因のない無月経が3年以上続けば閉経と診断できる。 → × 1年です。

【8】(呼吸器科:原教授)  →  呼吸器 中西先生  12/15 プリント
(1)高齢者の肺の解剖学的特徴を3つ、機能的特徴を4つ挙げよ。

解説 1ページ中右
解答 解剖学的特徴:肺弾性の低下、胸壁の高度増加、末梢気道の拡張
    機能的特徴:咳嗽反射の低下、肺拡散能の低下、肺活量や一秒率の低下、残気量の増加  他に気道の線毛運動の低下、肺毛細血管床の減少など。
 
(2)次のうちから正しいものを3つ選べ。
 @高齢者肺炎は炎症所見が強い。 
 A肺気腫の発生ピークは70歳〜80歳である。
 B高齢者肺炎が治り難いのは抗生剤に対する反応が悪いためである。
 C高齢者喘息は肺気腫や慢性気管支炎を合併することが多い。
 D高齢者肺炎の治療の第一選択は放射線治療である。
 E高齢者市中肺炎の原因菌としては肺炎球菌、クラミジア菌が多い。
 F嚥下性肺炎は嫌気性菌が重要である。
 G高齢者肺癌は喫煙と関係の強い小細胞癌が多い。

解説 @× 3ページ右上。症状に乏しく、1/3は発熱(−)。
   A○
   B× 3ページ右上。不定型な症状で、顕性化した時にはすでに重症であることが多いためです。
   C○
   D× 3ページ右中。治療は抗生物質。
   E× 市中肺炎は肺炎球菌、肺炎桿菌、インフルエンザ菌など。院内感染は肺炎桿菌、緑膿菌、ブドウ球菌など。
   F○ 3ページ左中。嫌気性菌、口腔内連鎖球菌(Streptococcus milleri groupなど)グラム陰性桿菌の複合感染が多い。
   G× 腺癌や扁平上皮癌が多いです。
解答 A,C,F

【9】高齢者の特徴について正しいものには○、間違っているものには×   → 臨床薬学 大谷先生 12/13 プリント
 @加齢とともに臓器の細胞数は徐々に増加、臓器重量は増加する。 
 A若年にくらべて臓器の代謝機能は落ちている。
 B体内の相対脂肪量は増えるため、脂溶性薬剤の半減期は減少する。
 C体内のホメオスタシス機構は保たれている。
 D血清蛋白が低いため、遊離薬剤濃度が上がり、副作用が出やすくなる。
 E口渇中枢機能、Na保持能力、尿濃縮能などが低下しており、電解質異常をきたしやすい。
 F薬剤クリアランスや感受性が変化しており、医原性副作用を起こしやすい。
 G薬剤服用のコンプライアンスは比較的保たれている。
 H代謝機能が低下しているので軽度の甲状腺機能亢進症でも心不全をきたしやすい。
 I治療窓(therapeutic window)が狭い。例えば治療域のジゴキシン濃度でも中毒症状が起こりうる。

解答・解説
   @× 加齢により体重減少が起こりますが、これは組織での細胞数の減少による組織重量の減少が原因です。
   A○ 
   B× プリントp75。体脂肪率の上昇がみられるため、脂溶性薬剤は体内に留まりやすく、半減期は延長します。
   C× ホメオスタシスの維持が困難となる過程が老化です。
   D×? プリントp75右。ヒトにおける重要な血漿中の薬物結合蛋白質としてアルブミンとα酸性糖蛋白がある。アルブミン濃度は加齢に伴い低下するが、これによって薬剤の非結合型分率が上昇しても、必ずしも薬効は増強しない。これは、非結合型分率の上昇とともに、薬物のクリアランスも上昇し、血中濃度が低下するためである。加齢に伴うアルブミンの低下は、薬物の体内動態にそれほど重要な影響は与えないと考えられる。一方α酸性糖蛋白はむしろ加齢により上昇傾向を示すことが多い。(この記述からは×のように思えますが・・・。一般的には正しいと言われてるようです。http://www.hal.kagoshima-u.ac.jp/dental/Yakuri/page005.html他)
   E○ 高齢者は脱水や低カリウム血症などの電解質異常をきたしやすい。
   F○ 高齢者では腎機能の低下に伴う薬物の投与調節が重要。
   G× 薬剤服用のコンプライアンスとは「処方された薬剤を指示に従って服用すること」です。
   H○ 甲状腺機能亢進症による心不全は、若年者での発現はまれであり、多くは高齢者や基礎心疾患のある方に起こります。(http://ns.gik.gr.jp/~skj/thyroid/thyroid.php3
   I○? プリントp81。高齢者がジギタリス中毒をおこしやすいのは確かです。「高齢者の治療域は狭い」と一概に言えるのかどうかわかりませんでした。

【10】(病態機能内科学:井林雪郎)  → 病態機能内科学 井林先生 11/29 プリント
1.一般に老年者でもそれほど低下しないものはどれか
 1.最大吸気量
 2.最大酸素摂取
 3.腎血流量
 4.空腹時血糖値
 5.神経伝導速度
(a)1,2 (b)1,5 (c)2,3 (d)3,4 (e)4,5

解説 プリント1面左下グラフ参照。空腹時血糖値、末梢神経最大伝導速度、細胞内酵素量がそれほど低下しないようです。
解答 e

2.老年者の病気の特徴はどれか
 1.単一疾患が少ない
 2.症候が典型的
 3.妄想・錯乱がでにくい
 4.検査上、個人差が少ない
 5.電解質異常を出しやすい
(a)1,2 (b)1,5 (c)2,3 (d)3,4 (e)4,5

解説 プリント1面左。
   1)○ ひとりで多くの疾患をもっている。
   2)× 症候が非定型的であったり少なかったりするため、正確な臨床診断がきわめて困難な場合が少なくない。
   3)× 多くの重症患者が精神・神経症候をもって発症したり、途中からそれが加わりやすい。
   4)× 各種の検査成績について個人差が大きい。
   5)○ 水・電解質など重要な物質の異常を起こしやすい。
解答 b

3.老年者の最近の疫学について間違っているものを選べ
 1.男性の平均寿命は78歳
 2.女性の平均寿命は85歳
 3.脳卒中死亡内訳では、脳梗塞が多い
 4.寝たきりの原因のトップは骨折
 5.老年期痴呆の有病率は減少傾向
(a)1,2 (b)1,5 (c)2,3 (d)3,4 (e)4,5

解説 プリント1面中上。
    1)○  2)○  3)○  4)× 寝たきり原因のトップは脳卒中  5)×
解答 e

4.老年者の脳血管障害について、正しいものはどれか
 1.加齢とともに脳卒中の発症率は高くなる
 2.アミロイドアンギオミオパチーによる脳出血が増える
 3.脳梗塞に占める脳塞栓の比率は低くなる
 4.クモ膜下出血は女性に比し、男性に多くなる
 5.早期リハビリの効果や改善度は若年者と変わらない
(a)1,2 (b)1,5 (c)2,3 (d)3,4 (e)4,5

解説 1)○ プリント1面右下。脳梗塞、脳出血ともに加齢とともに発症率が上昇しています。
   2)○ アミロイドアンギオパシーとは、老人斑と同一のアミロイドが血管壁に沈着したもので、脳内出血の原因となる加齢性変化です。
   3)× 心原性塞栓症などが加齢による心疾患の増加で増えてくると思います。
   4)× くも膜下出血死亡者は、40代、50代では男性の方が多く、60代、70代で女性の方が多い。つまり全般的に女性の方がくも膜下出血のリスクは高いけれども、女性ホルモンはくも膜下出血の罹患を抑える働きをしている可能性があるため、閉経前では女性の死亡率が男性より低く、閉経後では女性の死亡率が高くなることが推測されている。http://www.ganekigaku.com/jacc0405/reports/yamada_kumomakuka/
   5)× 早期リハビリが有効であることは間違いないですが、20歳と80歳で効果や改善度が同じとは思えません・・・。
解答 a

5.脳梗塞について間違っているものを選べ
 1.最近では男性よりも女性に多い
 2.超急性期では、MRI拡散画像が有用
 3.脳塞栓症では皮質の病変が多い
 4.夜間に発症することが圧倒的に多い
 5.前大脳動脈梗塞では上肢の麻痺が強い
(a)1,2 (b)1,5 (c)2,3 (d)3,4 (e)4,5

解説 1)○? 脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)の患者数は男性67万1,000人、女性70万3,000人。(H14年調査)脳梗塞、脳出血それぞれについては確認できませんでした。
   2)○ 急性期にはCTでは病変がはっきりしないことも多いが、MRI、特にdiffusion MRI、MRAが梗塞巣の早期検出、閉塞血管の特定に有用。
   3)○ 選択肢より
   4)×? 発症時間で最も多いのが夜間から早朝にかけてである。これは、就寝中には水分をとらないために脱水傾向になることと関わっている。年間を通じては夏と冬に多い。夏は脱水、冬は体を動かさなくなることが発症と関わっている。('圧倒的に'多いかは疑問です・・・)
   5)× プリント2面。前大脳動脈の障害では、上肢よりも下肢に強い麻痺が出る。
解答 e

6.脳梗塞について間違っているものを1つ選べ
 a.脳血管障害は死因の第3位で、その6割が脳梗塞である
 b.わが国で最も多いのはラクナ梗塞である
 c.アテローム硬化性病変は血管分岐部に多い
 d.心原性脳梗塞は数十分で完成する
 e.一過性発作性脳梗塞には抗血小板薬を用いる

解説 a.○ 日本人の死因の第3位は脳血管疾患(13.0%)。このうち脳梗塞が 8.0%で、6割を占める。
   b.○ 脳梗塞のうち、ラクナ梗塞60%、アテローム血栓性脳梗塞10%、脳塞栓症30%。(病態神経p170)
   c.○ プリント2面。アテローム硬化は血管の分岐部に起こりやすく、好発部位がある。(図参照)
   d.× プリント2面。神経症候は日常活動時に「分」の単位で完成する。
   e.○ プリント2面。アテローム血栓性脳梗塞の前駆症状と言われており、抗血小板薬の適応となります。
解答 d

7.アテローム血栓性脳梗塞について間違っているもの1つを選べ
 a.発症機序は3通りある
 b.フィブリン血栓が主体である
 c.日本では最近増えつつある
 d.数日かけて進行する
 e.抗血小板薬を用いる

解説 プリント2面左下。
   a.○ 血栓性、塞栓性、血行力学性の3通り。
   b.× 血小板血栓が重要な因子となる。フィブリン血栓とは、血小板血栓が凝固反応によって成長したもので区別されます。
   c.○ 従来は欧米人に多く,日本人にはまれといわれていましたが、食生活の欧米化に伴い、日本人にも増加してきています。
   d.○ 初期は軽い神経症候にすぎず、徐々にしかも段階的に「数日かけて」進行することもあります。(2日間かけて完成するとも言われています。)
   e.○ プリント2面。血栓性や塞栓性は抗血小板療法の適応。
解答 b

8.心原性脳梗塞について間違っているもの1つを選べ
 a.原因心疾患として心房細動が多い
 b.高齢者の心房細動では非弁膜症が重要
 c.抗凝固薬を用いる
 d.比較的重症例が多い
 e.自然再開通はまずみられない

解説 プリント2面左下。
   a.○ 弁膜症(特に僧帽弁狭窄症)が原因で心房細動となる場合に、心耳内の壁材血栓がはがれて飛ぶものが最も多いです。ほか心筋梗塞、感染性心内膜炎、弁置換術後など。(病態神経 p173)
   b.○ 基礎疾患として非弁膜症性心房細動(NVAF)が大変重要視されています。
   c.○ 一般にワーファリンなどの抗凝固療法が優先されます。
   d.○ 脳塞栓症は動脈閉塞がきわめて急激で、それまで正常に血液が流れていた領域が、突然虚血状態に陥るため、大部分の症例では側副血行路が十分にできていない。→予後の悪い例が多くみられます。
   e.× 早期再開通(自然再開通)する症例が15%程度みられます。
解答 e

9.ラクナ梗塞について間違っているものを1つ選べ
 a.比較的軽症例が多い
 b.高血圧が最重要危険因子
 c.長径1.5cm未満の梗塞をいう
 d.無症候性脳梗塞の原因になる
 e.多発しても痴呆になりにくい

解説 プリント2面下。
   a.○ ふつう無症状ですが、場所が悪かったり多数のラクナができると種々の症状(仮性球麻痺、知能低下、情動失禁:強制笑、強制泣)などを認めます。予後がよいもの特徴です。(病態神経p173)
   b.○ 持続的な高血圧による細動脈(穿通枝)の病変(硬化)による小さな梗塞です。
   c.○ 長径15mm未満の小梗塞をさし、よく見られるのは3〜7mm程度のものです。10mm以上のものをGiant lacuneといいます。
   d.○ ラクナ梗塞の小さいものは、無症候性脳梗塞の原因になります。
   e.× 高血圧の老人などで、びまん性にラクナを生ずると多発梗塞性痴呆(multi infarct dementia)となります。(病態神経p173)
解答 e

10.一過性発作性脳梗塞について正しいものを3つ選べ
 1.アテローム血栓性脳梗塞の前駆症状である
 2.症状の持続は30分前後が多い
 3.頸動脈病変が重要
 4.穿通動脈病変が重要
 5.再発予防には抗血小板薬を用いる

解説 プリント2面右下。おそらく一過性脳虚血発作(TIA)のことだと思います。
   a.○ その通り。
   b.× 症状の持続は24時間以内とし、これ以上症状が持続した場合はTIAとは診断されません。持続時間は2〜15分が多く、発症は急激で多くは2分(遅くとも5分)以内に症状が完成します。
   c.○ 頭蓋外脳血管(主に頸部)に起因する血小板血栓が遊離し、脳血管の分岐部を一時的に閉塞することによって起こります。
   d.× 穿通動脈病変が重要なのはラクナ梗塞です。
   e.○ その通り。
解答 a,c,e

☆以下 11/30 加齢と動脈硬化 居石先生(病理病態学) ノート
スライドのみの授業でしたので、ノートを取れた範囲で載せておきます。
ポイントは以下の3点らしいです。

●動脈硬化の傷害反応説(Response-to-Injury Hypothesis)
動脈硬化の病因論には脂肪浸潤説、血栓原説、平滑筋細胞のモノクローナル増生説など諸説あるが、最近ではRossによる傷害反応説が有力である。

  動脈内皮細胞の機能異常
  ( 酸化LDL、喫煙(酸化ストレス)、高血圧、糖尿病、ホモシスティン、動脈寄生体、遺伝因子、加齢などによる )
  ↓
  内膜での炎症
  ( マクロファージ,Tリンパ球浸潤・増生、平滑筋細胞浸潤・増生(サイトカイン・増殖因子ネットワーク) )
  ↓
  血管リモデリング  ⇒ 動脈硬化の発生、進展

●粥状硬化と粥腫破綻
粥状硬化とは
・細胞内外の脂質沈着と平滑筋増生による内膜の肥厚。
・種々の要因に惹起された血管壁障害に対する慢性反応(修復過程)。
・内皮細胞、Mφ、Tリンパ球などの動的反応 である。

( 詳しい機序は
1.内皮細胞が傷害される
2.LDLが内皮細胞をとおって血管内に侵入すると酸化されて変性する
3.この過程において、酸化されたLDLがさらに血管内膜を損傷する。変性LDLを追って単球が内皮細胞に侵入する
4.ここで単球がマクロファージに変換し、変性LDLを貪食する。貪食によってマクロファージは泡沫細胞 lipophage となり、そこで死滅して脂肪滴を血管壁に残す。
5.この現象が初期の段階では脂肪線条 fatty streak として現れる。血管平滑筋細胞が内膜側に移動して増殖を始める。
6.増殖した平滑筋細胞がカルシウムを摂取することで石灰化を生じる。 )

粥腫破綻について
粥腫性プラークの内容物は、脂肪に富んだ平滑筋細胞、Mφ、膠原線維、弾性線維、細胞内外の脂肪などである。物理的な力(血流、体動など)や潰瘍形成で粥腫が破綻し、内容物が血流に入ると微小塞栓を引き起こす。また、プラークの割れ目や潰瘍部に血栓が発生し、血管内腔の閉塞を起こして末梢臓器の虚血を起こす。

●動脈硬化のプラーク内血管新生
・動脈硬化病変における血管新生は動脈硬化進展の病理形態学的指標の一つとして重要である。動脈硬化を含めた病的血管リモデリングの誘導因子として、VEGF・受容体系を中心としたサイトカイン網が重要で、動脈硬化の進展を修飾していると考えられる。
・急性下肢虚血動物モデルにおいて、センダイウイルスベクターを用いてVEGF、FGF-2遺伝子を虚血筋組織に導入すると、FGF-2遺伝子導入で内因性VEGF, HGF発現が亢進し、新生血管の増加と側副血行路形成がおこり、明らかな下肢虚血の改善が誘導された。VEGF遺伝子導入では明らかな下肢虚血の改善は認めない。
・FGF-2遺伝子導入による血管新生治療法は臨床試験を行う予定で、閉塞性動脈硬化症(ASO)などへの適用が見込まれている。
・血管新生因子(VEGF、HGF、FGF-2) は相互に階層性をもって複合的に作用して血管新生を促進していること、とくに in vivoにおける最終作用因子はVEGFであるが、 血流増加にはFGF-2など他の血管新生因子の協調作用が不可欠である。

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