院内感染 平成16年度本試験

平成17年1月11日実施(110分)
問題はA4の1枚とA3の3枚、計4枚で問題用紙と解答用紙は同じ。以下は余分にもらった問題をデータ化。
101人受験、1人不合格。

<1枚目 担当:林純>
以下の問いに解答群より選び答えなさい。
A.1)2)が正しい  B.1)2)3)が正しい  C.すべて正しい
D.4)のみ正しい  E.全て誤っている

1.針刺し事故の対策として正しい組合せはどれか。
1)血液などを暴露した場合には、上司に報告する必要がある。
2)採血後などの注射針にはリキャップはしない。
3)誤って血液が、創のある皮膚に触れた後は直ちにアルコール綿で拭き取る。
4)採血時の手袋着用は院内感染防止に対する効果はない。
(A)
1)○ 12/14プリントP3 直ちに所属の管理者に報告
2)○ 針刺し事故防止には、リキャップ禁止+廃棄ボックスの設置+セーフティ製品の導入
3)× アルコールではウイルスの除去ができないと思われ、石鹸と大量の流水で流すことが必要
4)× 効果はあります

2.術創からMRSAが検出された患者に接する時の対応として正しい組合せはどれか。
1)必ずしもマスクは必要でない。
2)医療従事者が入室する時は、ガウンを着用する必要がある。
3)聴診器や血圧計は患者専用とする。
4)手袋を着用して処置など行い、手袋脱着後は手洗いの必要はない。
(B)
1)○ 12/14プリントP3、MRSAは接触感染なので(マスク)
2)○ 濃密に接するときは絶対に必要です。
3)○ 12/7プリントP5
4)× 必要があります

3.空気予防策として正しい組合せはどれか。
1)医療従事者が入室するときは、タイプN95微粒子用マスクを着用する。
2)空気感染とは微生物を含む直径5ミクロン以下の飛沫物が飛散することによって伝播される感染様式をいう。
3)対象となる病原体は結核、麻疹などである。
4)聴診器や血圧計は患者専用としなくてよい。
(C)
1)○ 飛沫核レベルの微粒子を遮断するのはこのマスク12/20
2)○ 飛沫核=5ミクロン以下
3)○ 空気感染は麻疹、水痘、結核
4)○ そのとおり12/7プリントP5

4.接触予防策としで正しい組合せばどれか。
1)手掌の常在菌は院内感染源とならない。
2)手洗いの際には石けんを手に塗った後、水洗いする。
3)処置前の手洗いは必要であるが、処置後は必要ない。
4)手掌の常在菌は20分で2倍に増える。
(D or E)
1)× ならないことはないかと
2)× 選択肢上×かと、消毒薬を使うのかも
3)× 12/14プリントP2より処置後も必要です
4)よくわかりません

5.ウイルス対策として正しい組合せはどれか。
1)B型肝炎は飛沫予防策を適用する。
2)標準予防策とはB型肝炎、C型肝炎、HIV感染のみに適用する。
3)水痘に対しては接触予防策を適用する。
4)A型肝炎の初期では空気予防策を適用する。
(E)
1)× B型肝炎は血液
2)× のみというところが×、あと選択肢的にも
3)× 麻疹、水痘、結核は空気感染
4) × 12/14プリントP3よりHAVは接触予防

<2枚目 外科的立場から>
1.Standard Precautions(広義のUniversal Precautions)の@概念を述べよ。A目的を二つ述べよ。
@既知の感染症または、感染を疑う症状の有無に関係なく、全ての患者の血液、体液、排泄物、病的な皮膚(手術創、潰瘍、熱傷など)、および粘膜を潜在的感染媒体とみなし、これらを適切な手段で隔離して(手袋などの防御用具の使用)感染防止をはかる方策。
A・患者を交叉感染から守る
 ・医療従事者の職務感染を防ぐ

2.Standard Precautions(広義のUniversal Precautions)の具体的実践で重要なことを二つ述べよ。
・患者処置の前後で手洗いをする。手洗い後はペーパータオルを使って乾かす。
・血液、体液に触れる可能性のあるときは手袋を使用し、もし手に触れたら直ちに流水と石鹸による手洗い、場合によっては消毒する。
・血液、体液が飛び散る可能性のある場合は、プラスチックエプロン、マスク、ゴーグルなどの防御用具を使用する。
・感染性廃棄物の分別・保管・運搬・処理を適切に行う。(注射針のリキャップをしない。鋭利器具は使用後直ちに耐貫通性容器に廃棄する。)
・手袋をはずした後も手洗いをする。
以上のうちの2つ

3.針刺し事故を起こした場合、直ちに行うべき対応を二つ述べよ。
・刺した皮膚部分の血液を絞り出す。口腔粘膜からの吸収を防止するため、口ですってはいけない。
・石鹸と大量の流水でよく洗う。
・目に入った場合には、大量の水ですすぐ。
・直ちに所属の管理者に報告し、記録する。 
以上のうち2つ

4.以下の定義をそれぞれ述べよ。
滅菌とは::(P4)
  全ての微生物を殺滅させるか、完全に除去すること。
消毒とは::(P4)
  人体に有害な微生物の感染性をなくすか、数を少なくすること。

5.滅菌法を三つあげ、それぞれの特徴を三つずつあげよ。12/14のプリントP4
@高圧蒸気滅菌
特徴: 時間が短い(滅菌10分、全工程50分)、温度が高温(134℃)、毒性・環境汚染はなし、処理量は大、適用は金属製手術機械、リネン類、ガーゼ、綿球、ガラス製品、気動式手術器械 以上のうち3つ
Aエチレンオキサイドガス滅菌
特徴: 時間が長い(滅菌2時間+エアレーション12時間)、温度が低温(40−60℃) 、毒性・環境汚染有り、処理量は中、適用はプラスチック製品、内視鏡、コード、縫合糸、人工血管、電動手術機械 以上のうち3つ
Bプラズマ滅菌
特徴: 時間が短い(75分)、低温(45℃)、毒性・環境汚染はなし、処理量は小、適用は過酸素水素を吸着する繊維製品や液体などを除いて広い適用 のうち3つ

6.消毒薬に関する以下の記述に対し、それぞれ正しいものにはO、間違っているものには×をつけよ。
1)高水準の消毒薬に分類されるグルタラール(サイデックス(R)など)は芽胞やウイルスにも有効で、材質を傷めにくい特徴のため、内視鏡消毒の第一選択薬であるが、毒性が高いため扱いには注意が必要である。
2)次亜塩素酸ナトリウム(ハイター(R)など)はウイルスを含む広範囲の微生物に有効で、低残留性であるので、床などの環境消毒の他、食器の消毒にも用いられる。
3)ポビドンヨード(イソジン(R)など)は芽胞を除く全ての微生物に有効であるので、手術野の皮膚や粘膜の消毒の他、手術器具の消毒にも用いられる。
4)消毒用エタノールは芽胞を除く広範囲な抗微生物スペクトルを示し、速効性であるので広く皮膚及び器具の消毒に使用される。ウイルス一般にも有効であるが、B型肝炎ウイルスには無効とされている。
5)クロルヘキシジン(ヒビテン(R)など)は芽胞、結核菌、ウイルスには効果がないが、皮膚親和性がよく殺菌効果が持続するため広く皮膚消毒に使用されるほか、粘膜にも使用される。
回答 1・・○  2・・○  3・・X  4・・○  5・・X
解説 1・・グルタラールが気化したガスは有害
   2・・次亜塩素酸ナトリウムは金属や、皮膚・粘膜には使用されない。
   3・・ポビドンヨードは腐食性のため、金属、非金属の消毒には用いない。HBVに有効?
   4・・その通り。http://www.kawamoto-sangyo.co.jp/infomation/infosub02.html
   5・・クロルへキシジンは粘膜には用いられない。

7.手術時手洗いの目的を述べよ。
手指の皮膚に付着する一過性細菌を極力除去し、常在細菌をも減少させることを目的として行う。手術中に手袋が破損した場合に皮膚に存在する細菌によって術野が汚染されるのを防ぐ。

8.CDCの手術部位感染防止ガイドラインに関する以下の記述に対し、それぞれ正しいものには○、間違っているものには×をつけよ。
1)手術部位感染は、手術後7日以内に発症した手術創、体腔・臓器の感染である。
2)手術部位感染は、外科手術の患者では、最も多い院内感染である。
3)遠隔部位の感染は手術部位感染の原因となるため、その感染症が治癒するまで予定手術を延期する。
4)体毛は消毒の邪魔になり感染の原因となるため、剃刀を使ってできるだけ除去しておく。
5)糖尿病患者は血糖値を適切に管理し、周術期を通して高血糖は特に回避する。
6)喫煙は手術部位感染の明確な危険因子であるので、予定手術前の少なくとも30日間は禁煙を指導する。
7)予防的抗菌薬投与は切開直後に開始し、一定時間毎に少なくとも手術翌日まで投与する。
回答 1・・X  2・・○  3・・○  4・・X  5・・○ 6・・○ 7・・X
解説 1・・術後30日以内(インプラント留置の場合は1年以内)の手術創、体腔・臓器の感染(12/14のプリントP6)
   2・・38%を占め最多(12/14のプリントP6)
   3・・カテゴリーTA。可能な限り予定手術の前には手術部位から離れた部位の感染症を特定、治療し、遠隔部位感染症を有する患者はその感染症が治癒するまで予定手術を延期する。(12/14のプリントP7)
   4・・カテゴリーTA。手術部位、あるいは周辺の体毛が手術の支障とならない限り、術前の除毛は行わない。除毛する場合は手術直前に除毛する。バリカンを用いることが望ましい。(12/14のプリントP7)
5・・カテゴリーTB。全ての糖尿病患者で血糖値を適切に管理し、周術期を通じて高血糖は特に回避する。(12/14のプリントP7)
   6・・カテゴリーTB。(12/14のプリントP7)
7・・カテゴリーTB。(12/14のプリントP7)投与は経静脈的に行い、初回投与は切開時に血中および組織中で薬剤が有効濃度に達するタイミングで行う。そして手術中を通して、血中および組織中の有効濃度を保ち、最大で手術室で切開創が閉鎖されて数時間後まで維持する。

<3枚目 「結核」問題>
1.結核菌の排菌患者を収容する際の予防策として正しいものを選べ
a)室内換気
b)ガウン着用
c)手洗い励行
d)寝具の熱湯消毒
e)食器の個別洗浄
(a)
12/20のプリントP2 結核院内感染の対策の基本的な5要素
@菌の除去:早期発見、隔離、治療
A菌密度の低下:換気、紫外線照射、患者のマスク
B吸入菌数の減少:職員のマスク(N95)
C発病の予防:BCG接種、化学予防
D早期発見:定期健診、有症状時の受診と検査

2.結核の主たる感染様式はどれか
a)飛沫感染
b)接触感染
c)空気感染
d)潜伏感染
e)血行感染
(c)
結核は空気感染(飛沫核感染)

3.活動性肺結核患者の診療をする際に着用すべきマスクはどれか
a)防塵マスク
b)防毒マスク
c)N95マスク
d)サージカルマスク
e)ガーゼマスク
(c)
12/20のプリントP2

4.結核の感染リスクが必ずしも高くないのはどのような場合か
a)ガフキー号数が高い
b)至近距離での接触
c)室内換気の不良
d)粟粒結核
e)咳の頻発
(d)
隔離が必要;肺結核(肺結核、気管支結核、(結核性胸膜炎))
不必要;肺外結核(粟粒結核、粟粒結核、結核性髄膜炎、腎・腸・皮膚結核、脊椎カリエス、結核性副睾丸炎)

5.結核感染のハイリスク集団として当てはまらないものはどれか
a)既感染者
b)有所見者
c)糖尿病合併例
d)中年男性
e)医療従事者
(d)
ハイリスク集団には結核感染曝露者(患者接触者、自然陽転者)、結核既往者(有所見者、既往患者)、免疫抑制宿主(糖尿病、ステロイド、癌、塵肺(肺の局所免疫低下))健康管理過疎集団(生活困窮者、中小零細企業労働者、アルコール依存、精神障害者、検診連続未受診者)、職業的危険集団(医療従事者)がある。

6.ツベルクリン反応で正しいものはどれか
a)結核菌に対する感染の有無を示す
b)感染後約1週間で成立する
c)非結核性(非定型)抗酸菌との交差耐性はない
d)反応の程度は結核の重症度と比例する
e)結核が治癒しても陰転しない
(e)
PPDの臨床的意味 12/20プリントP3
・結核菌に対する免疫反応の存在を示し、感染後2〜8週間で成立する、結核が治癒していても陽性
・発病の有無は問わない(強陽性だからといって発病とはいえない)
・BCGによる誘導や非結核性坑酸菌との交差反応あり
・BCGによる免疫誘導不十分や感染初期では陰性になる
・陰転する場合には高齢、免疫機能低下、T細胞の病巣動因などがある

7.我が国の結核の疫学で正しいものを選べ
a)老人の結核は減少傾向にある
b)罹患率低下傾向に拍車がかかった
c)若者の自然感染率が増加している
d)発見の遅れが目立つ
e)集団感染発生件数は減少傾向にある
(d)
12/20プリントP1 日本における結核流行の様相−先進国の中で日本は結核が多い
1)患者発生の医学的、社会的弱者への偏在化
2)罹患率低下傾向の鈍化
3)若者の感染・発病の相対増加(医療従事者と介護者)
4)集団発生の頻発
5)重症発病例の増加
6)対応の不手際(発見の遅れ、治療・管理の失敗)

8.結核の進展について正しいものはどれか
a)初期感染は肺尖部に好発する
b)初期変化群には肺門リンパ節結核が含まれる
c)血行性の進展をシューブと呼ぶ
d)胸腔内に菌が散布されると気胸が生じる
e)1次性結核は2次性(慢性)結核より高頻度である
(b)12/20プリントP3
a)初期結核は肺門部が多い。二次結核に肺尖部(S1,S2,S6)に多い
c)シュープとは経気道性散布のこと
d)胸腔内散布では結核性胸膜炎になる
e)よくわかりません

9.結核の自然史について正しいものはどれか
a)発病しても無治療の場合、大半の症例は死亡する
b)発病しても無治療の場合、大半の症例は自然治癒する
c)発病しても無治療の場合、1/2の患者は慢性排菌患者になる
d)発病しても不十分な治療を受けた場合、1/2の患者は死亡する
e)発病しても不十分な治療を受けた場合、1/4の患者は慢性排菌患者になる
(e)12/20プリントP1
無治療の50%が5年以内に死亡し、25%が慢性排菌患者になる。
不適切治療を受けた人の10%が5年以内に死亡し、25%が慢性排菌患者になる。

10.抗結核薬のファーストライン(第一選択)の薬剤でないものを選べ
a)リファンピシン
b)ピラジナマイド
c)ヒドラジド
d)エサンブトール
e)カナマイシン
(e)
ファーストラインはINH(ヒドラジド)、RFP(リファンピシン)、EB(エサンブトール)、SM(ストレプトマイシン)、PZA(ピラジナマイド)である
セカンドラインはPAS(パス)、CS(サイクロセリン)、KM(カナマイシン)である

<4枚目 内科領域 担当:下野信行>
問題1)病院感染を考える上で、病原体、感染経路、宿主から考えてその特徴を述べなさい。(9)
i)病原体について
市中感染と比べて宿主に易感染性の人間がいるので起因菌は弱〜強毒菌まで幅広く、伝染力も弱〜強までさまざまである。また薬剤耐性菌も問題となる

A)感染経路について
@ 空気感染 感染病原体を含む飛沫核が空中を浮遊して感染する
A 飛沫感染 くしゃみ、咳、吸引時の飛沫が鼻粘膜や結膜、口腔粘膜に付着して感染する
B 接触感染 菌が直接接種されて感染、または汚染器具などを介する感染
C 一般媒介物感染 汚染された食物、水、薬剤、器具などによって伝播する感染
D 昆虫媒介感染 蚊、ハエ、ねずみなどが媒介する感染

B)宿主について
易感染性の宿主が市中感染と比べて多い

問題2)58歳女性。肝臓癌の治療のために入院した。全身状態不良のために入院2日後に、中心静脈カテーテルを挿入して、中心静脈栄養を開始した。腹水も大量に貯留していた。尿量も少なくなってきたために尿量の把握のために入院3日後に尿道留置カテーテルを挿入した。微熱が続いていたために、抗生物質の点滴を施行した。入院10日後に39度の高熱をきたし、感染症が疑われた。
i)高熱の原因が感染症とするとどのような感染症を考えますか?3つ挙げなさい。(3)
・中心静脈のカテーテルからの感染
・尿道留置カテーテルからの感染
・免疫不全から常在菌による日和見感染

A)またその際の起炎菌として、どのようなものを考えますか?(3)
MRSA、VRE、カンジダ、

間題3)以下の記述のうちで正しいものにはO、誤っているものには×を記せ。(5)
( )院内肺炎の起炎菌として、最も重要なものは肺炎球菌、インフルエンザ菌である。
( )院内感染の頻度を減らすには、環境の整備が重要であり、特に床やベッドの手すりなどは中等度の消毒薬で拭き取って消毒することが重要である。
( )メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、医療従事者に常在していると患者に感染させる機会が高くなるので、鼻腔にバクトロバン軟膏を塗布するなどして除菌することが重要である。
( )院内感染の感染経路としてもっとも頻度の高いものは、飛沫感染である。マスクの着用、手洗い、うがいが重要である。
( )多剤耐性緑膿菌はカルバペネム系、アミノグリコシド系およびペニシリン系に耐性を示す緑膿菌をいい、治療薬剤がない点ではMRSAよりも治療に難渋することが多い。
順に X?、X、X?、X、X?
1・・肺炎球菌やインフルエンザ菌は市中肺炎では?
2・・15年度本試より 環境対策として、床は特別に汚染されない限り、日常的な消毒は不要である。
3・・よくわかりませんがXではないかと・・・
4・・頻度が一番多いのは、接触感染
5・・15年度本試解説より
カルバペネム(IPM=イミペネム)、アミノグリコシド(AMK=アミカシン)、キノロン(CPFX=シプロフロキサシン)の3系統全てに耐性なものが多剤耐性菌

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