プライマリ・ケア 平成16年度本試験

平成16年12月7日実施(120分)
問題用紙は解答用紙と共通でA3サイズ、3枚。以下は余分に取ったものをデータ化。
102人受験、全員合格。

「総論:プライマリ・ケアと疫学的研究」  担当:林純(総合診療部)
1プライマリ・ケアとは何か。
<解答方針>
 何を書いてもいいような気がします。自分なりの考えをまとめて準備しておけばよいかと。
 「初期医療」と訳され、臓器別の(臓器ばかりに注目した)医療ではなく、全人的な(身体、心理、社会のいずれの面にも配慮した)医療である。患者がまず初めに受ける医療であり、適切な診察、検査を受けると共に治療できるものは治療し、その場で治療できないものに関しては適切な医療機関に紹介する、という方針に立って行われる地域性の強いものである。
 というようなことを軸にすればどうでしょうか。保険制度やかかりつけ医、専門医認定制度などに話を広げてみてもいいと思います。

2.
1)発熱疾患を4つの群にわけ、それぞれの群の疾患名を3つ挙げよ。
<解答例>
稽留熱、弛張熱、間欠熱、回帰熱の4つに分ける、という考えもあると思いますが、回帰熱を起こす疾患を3つと言われても…。ということで、やはり感染症、悪性腫瘍、膠原病、その他に分けるのが妥当かと。
感染症:かぜ症候群、肺炎、結核、心内膜炎、ウイルス性疾患、輸入感染症、局所性感染症(肝膿瘍、静脈炎…)など
悪性腫瘍、膠原病はなんでも思いつくままに…
その他:肉芽腫形性疾患、炎症性腸炎、肺塞栓、詐病熱、薬物など

2)発熱疾患の診断に際して重要な点を3つ挙げよ。
<解答例>
何を答えさせたいのかよくわかりませんが…。
・ 注意深い問診
・ 身体所見(全身の視診、触診、聴診)
・ 検査(血液、胸写、検尿、CRPは必須、他にもエコーなど)


「プライマリ・ケアの全人的医療」  担当:久保千春(心療内科)
1.( )の中に適当な語句を入れよ。
全人的医療とは、患者を「病を持った人間」としてとらえ、(a)・(b)・(c)な面から統合的に理解し治療する。
<解答>
身体的、心理的、実存的

2.心身相関の把握のための心理的因子について3つあげよ。
<解答>
・ 誘発因子:症状の発症と心理社会的因子との関係
・ 持続増悪因子:不安の対処行動や家族関係
・ 準備因子:対人関係様式(過剰適応、自我の強さ)

3.次の問に答えよ。
1)患者との会話で間違っているものを選べ。
a.ユーモアや冗談は禁忌である。
b.上手に話をきりあげる。
c.相手にあわせる。
d.判りやすい言葉を使う。

2)抗不安薬について間違っているものをあげよ。
a.副作用としてめまい、ふらつきなどがみられる。
b.長期連用しても特に依存性は心配しなくてよい。
c.心理療法と併用する。
d.不安緊張と身体症状の悪循環を断つために用いる。

3)睡眠薬について間違っているものをあげよ。
a.早朝覚醒には睡眠薬に抗うつ薬を併用することが多い。
b.入眠障害には中時間作用型がよく用いられる。
c.睡眠薬を連用しても、痴呆にはならない。
d.睡眠薬は短時間・中時間・長時間作用型にわけられる。

4)抗うつ薬について間違っているものをあげよ。
a.三環系抗うつ薬は、他の抗うつ薬と比べ副作用が多い。
b.抗うつ薬の効果発現には3日間ぐらいかかる。
c.スルピリドは食欲不振を伴っているうつ病に使用されることが多い。
d.日本では最近SSRI、SNRIがよく使われる。

<解答>
1)a  2)b  3)c?(bかも)  4)b?(もう少し長いのでは…)


「EBMに基づいた生活習慣病」  担当:古庄憲浩(総合診療部)
下記の文章が正しければ○を、誤っていれば×をつけなさい。
1.医学レビューやエディトリアルは、バイアスがかかっておらず科学的である。
2.Evidence based medicine(EBM)とは、目の前の患者に始まり、目の前の患者に終わる臨床のプロセスである。
3.EBMの実践は、系統的な研究や臨床疫学研究などより、適切に利用できる外部の臨床的根拠とひとりひとりの臨床的専門技量を統合することを意味する。
4.EBMのステップとして、患者の問題の定式化、問題についての情報収集、情報の批判的吟味、情報の患者への適用、これらのプロセスの評価である。
5.糖尿病患者に対する降圧療法では、ACE阻害剤、利尿剤、α拮抗薬は、いずれも同等に血管イベントを予防する。
6.糖尿病患者に対する降圧療法では、拡張期血圧を80mmHg未満にすると約2倍の血管イベントの予防が期待できる。
7.糖尿病患者に対する脂質低下治療において、スタチン系薬は、急性心筋梗塞の発症・再発予防の点でフィブラート系薬に比べ有効である。
8.糖尿病患者において、急性心筋梗塞後のインスリンによる厳格な血糖コントロールはその再発予防が高い。
9.糖尿病患者において、心血管イベント予防目的のアスピリンは、そのアレルギー歴例や出血傾向例にも積極的に投与するべきである。
10.頸動脈超音波検査での血管内膜中膜肥厚体(IMT)の異常肥厚は、禁煙することで退縮する。

<解答・解説>
1.×:高度に良質の系統的レビューがなされていない場合はバイアスがかかっており科学的でない。
2〜6.○:その通り。
7.×:どちらも同等。
8.○
9.×:禁忌。その他の糖尿病患者に対しても、アスピリンを積極的に投与すべきだ、と明言できるだけの十分なEvidenceはない。
10.○


「EBMに基づいた感染症」  担当:鍋島茂樹(総合診療部)
1)次の病原体(または疾患)はどのような感染様式あるいは発症様式をとるか(成人の場合)。数字を選べ。複数回答可。
肺炎球菌性肺炎、肺結核症、緑膿菌、帯状庖疹、インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルス
1.初感染  2.再感染  3.再燃  4.急性感染
5.慢性感染  6.潜伏感染  7.日和見感染

<解答>あまり自信ありません…
肺炎球菌性肺炎:6、7
肺結核症:1、3、5
緑膿菌:6
帯状疱疹:1、3、4
インフルエンザウイルス:2、4
C型肝炎ウイルス:1、5

2)括弧内をうめよ。
病原性細菌は( )寄生細菌と、( )寄生細菌に分けられる。前者の臨床的・細菌学的特長として次のことがあげられる。血液検査で白血球が増加し、( )からの貪食を避けるため、菌体の最外層に( )を形成する菌がみられる。
<解答>
(順に)細胞外、細胞内、好中球、バイオフィルム(莢膜や細胞壁でも可?)

3)感染症が疑われる不明熱の問診で特に重要な点に3つ○をつけよ。
食事の嗜好・ペット歴・家庭内の流行・薬剤の服用歴・ホモセクシャルかどうか・高血圧の有無・結核の既往・ストレスの有無
<解答>
ペット歴・家庭内の流行・薬剤の服用歴(抗生物質を服用していると培養がうまくいかない、性感染症を疑うならホモセクシャルかどうか、かも)


「外来診療におけるプライマリ・ケア(1)、(2)」  担当:野村秀幸(新小倉病院)
1)患者の権利(インフォームドコンセント)について述べよ。(7点)
<解答>
患者は以下の説明を受ける権利を持つ。
1. 医師がすすめる治療または処置に関する概要の説明
2. すすめる治療・処置の、リスクと便益の説明、とくに死亡や重大な身体障害のリスクについての説明。
3. 別の治療法や処置を含め、すすめる治療・処置以外にどんな選択があるかの説明、およびそれらについてのリスクと便益の説明。
4. 治療を行わない場合に想定される結果。
5. 成功する確率、および何を持って成功と考えているのか。
6. 回復期に予想される主要な問題点と、患者が正常な日常生活を再開できるようになるまでの期間。
7. 信頼にたる医師たちが同じ状況の場合に通常提供している、上記以外の情報。

2)新患患者の日常外来診療行為を5つ述べよ。(4点)
<解答>
病歴聴取、身体所見、検査、診断、治療

3)病歴のポイントは?4つ述べよ。(4点)
<解答>
・ どの臓器が関係しているのか
・ 問題点の原因として可能性が一番高いのは何か?
・ どのような危険因子が問題点に寄与しているのか?
・ 問題点によるどんな合併症が考えられるのか?

4)身体診察で気をつけることを5つ述べよ。(5点)
<解答>
・ 包括的な身体診察はしないこと
・ 患者の症状を基にした焦点を当てた身体診察を行うこと
・ 適切に診察手技を行うこと
・ 痛みを誘発する診察手技は繰り返さないこと
・ 患者の不快感に十分配慮すること


「高齢者の医療におけるプライマリ・ケア医の役割」  担当:池松季之(原土井病院)
1.高齢者の死亡原因の上位4つを挙げよ
<解答>
悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎(おそらくこの順で1〜4位)

2.高齢者が寝たきりになる原因の上位3つを挙げよ
<解答>
脳血管疾患:36.7%
高齢による衰弱:13.6%
骨折・転倒:11.7%
痴呆:8.9%
リウマチ・関節炎:5.4%
とのことなので、上から3つを書きましょう。

3.「かかりつけ医」の役割と機能について5つポイントを挙げよ。
<解答>
・ (距離的に)近いこと
・ 説明が十分で丁寧であること(Evidenceに基づく)
・ どんな病気にでも対応できること
・ いつでも診てくれること
・ 適切な専門家に紹介できること(振り分け機能)

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