腎・高血圧 平成15年度概説試験

平成16年1月14日実施 120分
103人中1人不合格。

病理
平成14年度概説試験と全く同じ。


小児
問1. 下記の文章より正しいものを2つ選べ。
1) 胎児期の両腎の無形成や極度の低形成、異形成、嚢胞腎、尿路の閉塞等による羊水過少は肺低形成の原因となり、Potter症候群と呼ばれている。
2) 幼児の血清クレアチニン値1.0mg/dLは正常値である。
3) 年齢が低い程体内総水分量の割合は大きいが、細胞外液量は比較的一定である。
4) 脱水症の初期治療において初期急速輸液にはカリウムを多く含む細胞外型輸液製剤を用いることが一般的である。
5) 小児は成長期にあるので腎疾患の存在で栄養障害、発育障害をきたしうる。
解答 1,5
解説 2)× 幼児の血清クレアチニン値は0.3〜0.6 mg/dLが正常。
   3)× 比較的一定なのは細胞内液量。細胞外液量は外界の影響を受けやすい。
   4)× カリウムを含まない輸液を、循環血液量の回復を目的として行う。

問2. 急性糸球体腎炎について下記の文章より正しいものを2つ選べ。
1) あらゆる年齢に発症するが、好発年齢は3〜10歳である。
2) 蛋白尿、高血圧、浮腫が三大主徴である。
3) 肉眼的血尿はほぼ必須の所見である。
4) 通常では溶連菌による咽頭感染の1〜2週間後に発症する。
5) C3、CH50などの低補体血症が認められ、遷延化することが多い。
解答 1,4
解説 2)× 蛋白尿→血尿
   3)× 顕微鏡的血尿を含めるとほぼ全例に血尿があるが、肉眼的には半数以下。
   5)× 低補体血症は認められるが、通常3〜4ヶ月以内に臨床的治癒。95%が完治する。

問3. 小児のネフローゼ症候群について下記の文章より正しいものを2つ選べ。
1) 小児のネフローゼ症候群はまず腎生検を行い、組織型を確認して治療方針を決定する。
2) 小児のネフローゼ症候群の約9割が原発性腎疾患で、そのうち微小変化型ネフローゼ症候群が約50%を占める。
3) 微小変化型ネフローゼ症候群の好発年齢は3〜6歳で、男女比は約2:1で男児に多い。
4) 重大な合併症である血栓症は腎動脈に多い。
5) 微小変化型ネフローゼ症候群の9割以上はステロイド剤に反応し完全寛解するが、その7割は再発し、2〜4割程度がステロイド依存性、頻回再発する。
解答 3,5
解説 1)× ステロイドに対する反応性により、病理学的診断を推測。腎生検の適応・治療方針決定。
   2)× 50%→85%
   4)× 合併症は腎「静脈」血栓症、ショック、急性腎不全

問4. Henoch-Scholein紫斑病について下記の文章より正しいものを2つ選べ。
1) 三大症状とは、皮膚症状、腹部症状、腎炎症状である。
2) 全身性の血管炎がその病態と考えられ、細静脈を主病変とする。
3) 出血時間、凝固時間の延長と共に、凝固第]V因子活性の低下がみられることがある。
4) 腎炎の合併は約10%である。
5) 腎炎合併例では糸球体のメサンギウム領域にIgA腎症と同様のIgAの沈着がみられる。
解答 2,5
解説 1)× 腎炎症状→関節症状
   3)× 凝固第]V因子活性の低下がみられることはあるが、出血時間、凝固時間は正常。
   4)× 3分の1

問5. 下記の文章より正しいものを2つ選べ。
1) 溶血性尿毒症症候群(HUS)の三徴は、下痢症、溶血性貧血、腎障害である。
2) HUSは腸管出血性大腸菌感染症(VTEC)感染症者の約80%に発症する。
3) 眼脳腎症候群(Lowe症候群)では眼症状、神経症状と共に、近位尿細管性アシドーシスを呈する。
4) 先天性腎尿崩症U型では集合尿細管の管腔側の水チャネル(aquaporin 2:AQP2)の遺伝子異常が指摘されており、常染色体劣性遺伝形式をとる。
5) Bartter症候群はヘンレループにおけるナトリウムの再吸収障害により低カリウム血症、代謝性アシドーシスをきたす。
解答 3,4
解説 1)× 下痢症→血小板減少
   2)× 約10%。HUSの8割程度はVTECが原因
   5)× ヘンレループにおけるNaClの再吸収障害→低カリウム血症、代謝性アルカローシス。

問6. 下記の文章より正しいものを2つ選べ。
 1)微小変化型ネフローゼ症候群では電顕所見として上皮細胞下に特徴的なhumpが見られる。
 2)ネフリン(nephrin)は糸球体上皮細胞足突起間のスリット膜部に存在する蛋白で、先天性ネフローゼ症候群のフィンランド型(Finnish type)はこの異常により発症する。
 3)学校検尿で発見された蛋白尿単独陽性例のうち体位性蛋白尿は立位あるいは前弯負荷にて蛋白尿が陰性化する。
 4)小児慢性腎不全の原因として腎尿路奇形の頻度は低い。
 5)小児の慢性腎不全において維持透析としては腹膜透析(CAPD)が第一選択である。
解答 2,5
解説 1)× humpは急性糸球体腎炎で特徴的に見られる所見。
   3)× 陰性化→出現
   4)× 44.4%。


移植
問1. 腎臓の解剖について正しいものを選べ。
1) 尿管は骨盤内で総腸骨静脈と交差する。
2) 右性腺静脈は通常、右腎静脈に環流する。
3) 左腎静脈は通常、大動脈の背面を走行する。
4) 腎門部で、尿管は最も背側に位置する。
 A(1のみ)  B(1,4)  C(2,3)  D(1,2,4)  E(1−4全て)
解答 
解説 2)× 下大静脈に環流する。左は左の腎静脈に環流する。
   3)× 左腎静脈は大動脈の腹側を乗り越えるように走行する。
   4)○ 腹側から腎静脈、腎動脈、尿管。

問2. 臓器移植について正しいものを選べ。
1) 日本では、心停止下の腎臓摘出にはドナーカードは不要である。
2) 法的脳死判定は、6時間の間隔をあけて、2度行うことが定められている。
3) 日本では15歳以下の脳死下の臓器摘出は認められていない。
4) 適合試験としてのクロスマッチ試験は、HLAに対する抗体の有無を見るための試験である。
 A(1のみ)  B(1,4)  C(2,3)  D(1,2,4)  E(1−4全て)
解答 E

問3. 腎移植について正しいものを選べ。
1) 腎移植では一般にレシピエントの自己腎を摘出する。
2) ドナー腎動脈が複数の場合でも、腎移植は可能である。
3) 24時間冷保存後の腎臓は移植可能である。
4) 腎移植後も腎性貧血は改善しない。
 A(1のみ)  B(1,4)  C(2,3)  D(1,2,4)  E(1−4全て)
解答 C
解説 1)異所性の移植なのでレシピエントの腎臓はそのまま。
   4)移植腎がエリスロポエチンを産生するようになるので改善する。

問4. 拒絶反応、免疫抑制について正しいものを選べ。
1) 細胞性免疫反応はB cellが主体の拒絶反応である。
2) 血液型不適合ドナーからの腎移植にはレシピエントの脾臓摘出術と術前からの血漿交換療法が必要となる。
3) 慢性拒絶反応は、移植腎血管の慢性線維性狭窄を伴う不可逆性の変化である。
4) サイトメガロウイルスは、移植後に肝炎を起こすことが多い。
 A(1のみ)  B(1,4)  C(2,3)  D(1,2,4)  E(1−4全て)
解答 C
解説 1)× T cellが主体


泌尿器
問1. 正しい組み合わせを選べ。
1) 膀胱尿管逆流現象(以下VUR)は、高齢女性に多い。
2) VURは膀胱内の尿管の長さが重要な因子となる。
3) gradeの低い小児のVURは自然に消失(治癒)することがある。
4) VUR患者の約半数が末期腎不全へ進展する。
 A(1,2)  B(2,3)  C(3,4)  D(1,4)  E(1,3)
解答 B
解説 1)小児に多い。
   4)末期腎不全に進展するのは1%程度。

問2. 正しい組み合わせを選べ。
1) VURの診断には(排尿時)膀胱造影が有用である。
2) VUR患者の腎機能温存には尿路感染をいかに予防するかが重要である。
3) VURに伴う腎障害の評価として腎シンチグラフィーは有用でない。
4) VUR患者の約80%以上が腎瘢痕を形成する。
 A(1,2)  B(2,3)  C(3,4)  D(1,4)  E(1,3)
解答 A
解説 4)30%〜60%。

問3. 正しい組み合わせを選べ。
1) VUR患者では尿管口の位置や形態の異常を伴うことがある。
2) 逆流性腎症のほとんどは逆流消失後も進展し、腎機能の廃絶を認める。
3) VURが認められた場合には早急に逆流防止術を実施することが望ましい。
4) VURに伴う腎瘢痕形成、蛋白尿、高血圧、腎機能障害を総称して逆流性腎症と呼ぶ。
 A(1,2)  B(2,3)  C(3,4)  D(1,4)  E(1,3)
解答 D
解説 2)逆流が消失すれば元通りに回復する。
   3)VURのみでは無症状。また、小児では自然消失の可能性あり。


高血圧
平成14年度概説試験と全く同じ。
問9の5)冒頭に「本邦の高血圧ガイドラインでは」という語句の挿入あり。


腎臓
平成14年度概説試験と全く同じ。

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