本年度が始めてとなる医学部・歯学部・薬学部の学生を対象としたインフォームド・コンセントの講義(以下IC)の概要を、後輩のみなさんの参考にと思い、私見を交えて書いてみることにしました。来年、再来年も続いていくと思われるこのプログラムが一体どんなものか、この拙文でイメージを持ってもらえれば幸いです。

講義は2004年8月18日から8月20日という、医学部生にとってはまさに夏休み真っ只中に行われました。実施の連絡が早い時点で学生に十分にいきわたっていなかったのは問題でしたが(詳細については本HP「インフォームド・コンセント」の項参照)、三つの学部から多くの学生が参加しました。

プログラムの内容は、大きく分けて百年講堂での講義と、あらかじめ分けられた各学部混成の小グループでのSGD(small group discussion)の二つから成っていました。初日のオリエンテーションの後、さまざまな分野からの講師(今回は九大関係者のみで外来講師はなし)がICの理念、医療倫理、ICの法的側面といった、ちょうど臨床科目群の講義の最初にある総論のような内容の講義を行っていきます。三日間を通して講義は実例の少ない、概念的な内容が多かったせいか、眠っている人が多く見受けられました。

二日目は午前中同じく講義が行われたあと、午後からは小グループに分かれて場所を移動し、それぞれ割り当てられたテーマについてディスカッションを行うというものでした。テーマは本プログラムに参加している六年生が提起したもので、各グループはそのうちの一つをあらかじめ指定されています。
このディスカッション、構想自体はきっと昨今盛んに取り入れられているoutput重視の教育に倣って企画されたものだったのでしょうが、すべてのプロセスにおいて、唐突、という印象を拭えませんでした。グループわけされて間もない、まだほとんどお互い名前も覚えていない状態で、しかもお互いにバックグラウンドの知識も異なる人たちにいきなりテーマを与え、短い時間で結論を書記がまとめて提出せよ、ではいくらなんでも無理があります。
たとえば薬学部の人たちは、医・歯学部に比べてICを行う機会はとても少ないので、僕達ほど講義で日常的にICのことを聴かされていません。ですから僕のグループの薬学部生も具体的なICのイメージをうまくつかみきれていませんでした、しかしそれは専門が違うのだから無理も無いことです。専門の違う人たちが集まって議論をすることは、医学部生だけで集まるよりも本来はるかに有意義なはずです。問題なのは、お互いの背景知識について僕らは十分にしらないのだ、ということを主催者が考慮せずに、ただ議論をせよ、とカタチのみの企画を推し進めてしまったところにあるのではないか、と思いました。


三日目は午前中同じく講義ののち、再び同じグループでのディスカッションです。今度はテーマを与えられず、自分達でICについて一つのテーマを決めて最後に臨床大講堂で各班発表、というもの。これはさらに無理な話で、第一ディスカッションの時間が短すぎました。テーマから決めさせるのに、二日目と大して変わらない時間でできるわけがありません。これも企画が先行してしまっているのでは、という感じでした。

発表を以って、いよいよIC講義の終わりです。すべてのグループの発表を見たわけではありませんが、短時間にしてはまとまった発表が多かった気がします。しかし振り返ってみると、これがもし十分な時間を費やして、資料や統計を参照しながらまとまった形でなされたならば、もっと裏づけのしっかり取れた、中身の濃いプレゼンになっただろうな、と思える発表もいくつもありました。返す返すも講義とディスカッションを無理やり抱き合わせにして三日間に押し込めてしまった進行上の窮屈さには終始問題を感じていました。

薬・歯の詳細なカリキュラムは知りませんが、医学部にかんしていえば、一方的にスライドを流すだけ、といった講義が今までの臨床科目のカリキュラムのほとんどを占めてきた中にあっては、四年生という時期に、学生に自発的な発言の機会と、自分たちの専門領域について他学部の学生と意見を交換する機会とを提供してくれたという意味で、この企画自体は有意義に「なりうる」ものだったと思います。それだけに、主催者側の準備不足や、講師間に統一性のないバラバラなプログラム進行には落胆を感じずにはいられませんでした。
どんな企画でも「一回目」にはさまざまな問題点が付きまとうものです。来年以降のIC講義が、今年の学生の意見を反映した、より実戦に即した形となって後輩のみなさんに提供されることを願っています。

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